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台湾 におけるフィンテック関連特許の趨勢

 

金融サービスとITの融合は「ファイナシャル・テクノロジー(financial technology)」又は「フィンテック(FinTech)」とも称され、通常、銀行、保険、投資、資金調達などの金融産業と科学技術とを融合させた一種の新興サービスの形態を指す。フィンテックは従来の金融分野に新たな競争をもたらし、且つ科学技術とインターネットをデジタル金融分野に融合させたことで、近年非常に注目され話題となっている。金融産業のイノベーションは台湾の産業構造の転換を加速させる可能性があることから、関連省庁もフィンテックに注目している。

フィンテックはビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、モバイルプラットフォーム、セキュリティー・メカニズム、クラウドシステムなどの広範な分野の様々なイノベーションに応用されている。現在、フィンテックに関する数多くの発明が生み出され、その発明者はそれに対する速やかな知的財産権保護を求めている。特許出願によりコンピューター関連のイノベーション商品を保護することは、この目的を達成するための重要なメカニズムである。このことについて、知的財産局は今年度セミナーを開催し、関連の特許出願データ、発明の特許性及びその他のフィンテック関連特許の今後の展望について説明をした。その一部内容について下記の通り整理した。


統計データ

 台湾のフィンテック関連の特許出願件数は安定した上昇傾向を呈している。統計データから分かる通り、過去5年間、特許出願に関しては、管理、支払アーキテクチャ、商取引、保険、税金などの分野のデータ処理方法を含む国際特許分類(IPC)カテゴリG06Qの出願件数は5244件で、そのうち、台湾人による出願件数は4216件(約80%)であった。特に、図1に示すように、2013年以降、年間出願件数は、G06Q 20支払スキーム、アーキテクチャ又はプロトコル)、G06Q 30(商取引)、G06Q 40(金融及び保険)の件数が毎年約400件以上を超えている。

 

 

 また、2011年から2015年までの上記3つのカテゴリの出願案及び特許付与状況について、図2及び図3に示す通り、支払アーキテクチャ及び商取引は、当該出願案の三分の一が最終的に特許権を取得しており、金融及び保険の特許付与率は、さらに高かった。

 

 

  

 

 
(出典:TIPOの統計データ)

 

 知的財産局の検索データベースに基づき、過去10年の代表的な上位11社のフィンテック発明の出願概況を下記の表の通りに整理した。出願概況から、各出願人が其々独自の注力分野を有しており、多かれ少なかれ出願人の事業の開発戦略を反映していることが分かる。この11社のうちの5社が、台湾法人である。

 

 

特許性の判断

台湾特許法第21条では、発明について「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定義しており、且つ発明は「技術的性質」を有していなければならない、つまり技術課題を解決するための手段は技術分野に係る技術手段でなければならない。若しフィンテック関連発明もそれに従うとすれば、台湾の特許審査基準に規定された通りに、コンピュータープログラムが実行する際に、プログラムとコンピューターとの間で正常な物理現象を超える技術的効果が生じれば、課題を解決する手段の全体が技術的性質を有すると認定される。この点からすれば、単に金融情報を提供した又はコンピューターを簡単に利用した発明の場合は、特許適格性がない。なぜかというと、その生じた効果は一般的なコンピューターのソフトウェアとハードウェアが元々有する機能だからである。逆に、全体を考慮し総合的に判断した結果、当該ソフトウェアとハードウェアが不可欠であり、特殊性を有し、困難を克服し、人間の代わりに精神的活動をすることができ、技術の改善又は新機能を作り出す等の方法によって技術課題を解決する場合、当該発明は特許適格性を有する。例えば、下記のビジネスモデルは特許適格性を有する。

カード製品のデータを販売端末である電子装置に入力するステップと、

消費者が指定購入金額を前記電子装置に入力するステップと、

当該電子装置を物流サーバーに接続するステップと、

物流サーバーが前記カード商品と前記指定購入金額を確認することにより…と、

前記電子装置に接続するプリンターでチャージパスワードを消費者用にプリントアウトするステップを含む、ゲーム用バリアブルポイントの購入方法。

上記請求項に記載された保護対象が特許適格性を有すると認められたのは、用いられるハードウェアが特殊で且つ代替不可能なものと判断されたからである。当該ゲームポイントカードを販売する点からすると、サプライヤーは一定ポイントのカードを製造し各販売先に保管していなければならないという問題が本発明により解決される。

なお、フィンテック発明も「進歩性」の要件を満たさなければ最終的に特許を取得することができない。ある発明が(1)他の技術分野への適用(2)周知の技術的特徴の付加若しくは均等手段による置換(3)人間が行っている業務方法のシステム化、又は(4)従来のハードウェア技術で行っている機能のソフトウェア化によって、予測できない効果を奏した又は長期間未解決であった課題を解決した場合を除き、同一の効果又は機能しか生じない場合は、該発明は進歩性を有していないと認定される。それに、技術的性質に寄与しない特徴を追加しても、進歩性を高めることにならない。以下はその事例である。

ウェブページ上に様々な商品を表示し、顧客にオンライン購入にさせるウェブサーバーと、

顧客からのオンライン注文を受け取り、オンライン決済が済んだ後、物流サーバーに出荷スケジュールを指示する取引サーバーと、を含むオンライン取引システムであって、

顧客は、購入した商品が希望に合わない場合、クーリング・オフ期間内であれば、返品又は交換を行うことができるオンライン取引システム。

「顧客がクーリング・オフ期間を有する」ことは該発明の技術的性質に何ら寄与せず、当該請求項は先行技術を超えるものではないため、進歩性を有していない。簡単に言えば、ソフトウェア関連発明が特許性のある対象であるか否かは、「技術的性質」の有無で決まる。簡単なコンピュータースキルを利用したビジネスモデルの手直しでは特許を取得することができない。ある特徴が技術的性質に寄与するか否かは進歩性を判断する際の補助要件とすることができるが、技術的性質に寄与しない特徴を付加えても徒労に終わることになる。

劣勢を優勢に転換

 近年、注目を集めているのは、フィンテックが台湾の金融及びIT分野にとって一つのチャンスとなると同時に一つのチャレンジともなる可能性がある点である。これまでのところ、銀行がフィンテックのイノベーション分野で特許戦略を策定している様子は見られない。また、ほとんどの国内銀行は、特許制度によってどれほど実質的な利益が得られるのかに関して、未だ充分に理解していない。IT分野については、法的規制、新技術への適応、消費者の購買習慣の改変、資金調達などが障壁となる可能性がある。

 肯定的にとらえれば、チャレンジするからチャンスがあるのである。台湾のフィンテックはまだ十分に発展していないため、銀行及びIT分野は様々な関連の金融商品及びサービスを開発できる可能性を秘めている。それに加えて、政府はファンテック企業を支援するための政策及び計画を徐々に打ち出しているため、各共同開発に関する援助及び資源の獲得が簡単になりつつある。フィンテック関連発明を保護するのに、特許は不可欠な手段である。台湾はソフトウェア関連の発明に対する法的対応において、多くの先進国に比べ特許性の基準が緩やかであることを考えると、市場における特許の主導的地位を築くために、フィンテック分野の企業は、積極的にチャンスを掴みにいく必要があるだろう。

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