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使用人の研究開発した専利は雇用者の提供する資源環境を使用したか否かによって職務上完成した発明[創作]であるか否かを判断の依拠とすべく、職務上の名称とは関係ないと知的財産裁判所102年度専訴字第112号判決で判示

一、事実

 原告が200929日に「ブラインド(Blind)の構造改良」を知的財産局へ実用新案を出願し、請求範囲が3項。被告官庁で出願第98201848号と列され、形式審査したあと、実用新案権を与えられ、第M358197号実用新案証書を発行された。その後、参加人(原告の雇用者)が2010119日に係争実用新案は許可時の専利法944項(注1)(進歩性欠如)及び10713号(注2)(実用新案出願権欠如)に該当するとしてこれに対し無効審判請求を提起した。知的財産局で審査されて「請求項1ないし請求項3に無効審判請求が成立、取り消さなければならない」と処分された。原告が不服で、訴願(不服申立て)を提起し、経済部で却下の決定を下したので、つい知的財産裁判所へ行政訴訟を提起した。

二、争点:係争実用新案は職務上の発明[創作]であるか否か。これに従って「実用新案権の出願権者」は誰であるかを認定する。

三、原告の主張:

 原告は曾つてに参加人(原告の雇用者)に在職期間中産品の研究開発と関係ない仕事(職務)を理由として当該実用新案は職務上完成したものでないことを証明する。このほか、原告は彼が参加者(原告の雇用者)との間に取り交わした書面によるコミュニケーションのプロセスを理由として参加人(原告の雇用者)は既にこの実用新案は職務上関係がないものであると知っていた。そして6ヶ月以内に異議申立をしなかったことによって参加人(原告の雇用者)は適格の無効審判請求人でないことを証明しようとする。

四、被告官庁(知的財産局)の答弁:

知的財産局は原告が確かに係争実用新案の出願期間に参加人(原告の雇用者)に在職しており、かつ、主要技術の工程図を提出し、原告が参加人(原告の雇用者)の会社資源及び職務上の仕事で接触した技術を利用して、雇傭関係存続中に創作を完成して実用新案出願をしたことを認め、若しその雇傭契約に実用新案出願権について約定がない場合、実用新案出願権は雇用する会社に帰属する。知的財産局は証拠を提出して当該創作は当該会社の主要技術と関係することを証明し、並びに参加人(原告の雇用者)の使用人が確かに原告に協力したことを証明することによって原告が参加人(原告の雇用者)の会社資源を利用して創作を完成したことを証明した。

五、参加人(原告の雇用者)の主張

 参加人は関連証拠(労働保険カード及び解雇通知名簿)を提供して実用新案出願期間中、原告は当該会社に在職しており、かつ、原告が当該会社の資源を利用して当該創作を完成したことを証明することによって係争実用新案の出願権及び実用新案権は参加人(原告の雇用者)に帰属することを主張する。

六、知的財産裁判所の判決:原告が敗訴。

理由:

1.いわゆる職務上完成した発明[創作]とは、必ずや雇用された仕事と関連があり、即ち、使用人と雇用者の間の約定により、雇用者の産品開発、生産研究開発と関係ある仕事に従事し又は執行することで、使用人が雇用者の設備、費用、資源環境等を使用して完成した発明、実用新案又は意匠で、使用人が雇用者の支払った給料およびその施設の利用若しくはチームの協力とは対価の関係がある故、専利法では使用人が職務上の発明、実用新案又は意匠について、その出願権および専利権は雇用者に帰属すると規定されている。その立法趣旨は雇用者と使用人の間の権利義務関係のバランスにある。その重点は、使用人の研究開発した専利は雇用者の提供する資源環境を使用したか否かにある。その実際の職務の名称と関係なく、甚だしきはその契約上約定する仕事の内容とも関係なく、その実際会社において参与した仕事およびその研究開発した専利は雇用者の提供する資源環境を使用しているか否かを判断する依拠としなければならない。(知的財産裁判所100年度民専上51号判決、101年度民専上40号判決は同じ趣旨)

2.しかし、200326日付改正公布の専利法8条(注3)の規定にいう「非職務上で完成した発明、実用新案又は意匠」とは、非職務上で完成した発明、実用新案又は意匠は必ずや自分自身が執り行う職務と直接又は間接的関係がないときに、初めて発明者[創作者]自分の知性、知力で努力した成果に帰属する。職務とは関係がない以上、雇用関係の対価範囲内にはないため、使用人によって専利出願権および専利権を取得すると規定される。

3.参加人(原告の雇用者)が提出した証拠によると、本件の原告は機械分野の専門を有し、かつ、参加人のブラインド(Blind)工場で仕事をし、係争実用新案の創作過程には参加人(原告の雇用者)の中多くの使用人の技術協力を得、また会社の資源を利用して係争実用新案を完成し、かつ、係争実用新案の創作は参加人(原告の雇用者)の生産したブラインド産品と関係があるので、完全に原告自己の知性、知力で努力した成果とは言いがたく、自ずと原告自身が執り行う職務は係争実用新案の創作とは直接又は間接的な関係がないと認定しがたい。故に係争実用新案は非職務上の創作に属さない。原告が参加人(原告の雇用者)との間には在職期間中に生まれた専利権の帰属について特別の約定がなかった。参加人(原告の雇用者)の提供した電子メールで原告がその本来言われたよく告知の義務を尽くしたのではなく、参加者の内容証明で原告がその本来言われた係争実用新案は非職務外の創作に属することに反対したので、200326日付専利法7条(注4)規定により、係争する実用新案の出願権は参加人(原告の雇用者)が提出した無効審判請求の証拠2ないし12は、既に係争実用新案は職務上完成した実用新案に属するし、かつ参加人(原告の雇用者)こそ係争する実用新案の出願権者であることを証明した。

注記

1200326日付改正公布の専利法944項(進歩性欠如)

 実用新案は、第1項に掲げる事情に該当しないが、それの属する技術分野における通常の知識を有する者が出願前にあった従来技術により極めて容易になし得るものであるときは、本法により実用新案登録を出願することができない。

2200326日付改正公布の専利法10713号(実用新案権欠如による無効審判請求)

 実用新案権者が実用新案登録出願者でないとき、特許主務官庁は無効審判請求によりその実用新案権を無効とし、且つ指定期間内に証書を返却されなければならず、返却されなかったときは、証書の抹消を公告しなければならない。

3200326日付改正公布の専利法8条(非職務発明の特許出願権、特許権の帰属)

 被雇用者が非職務上でなした発明、実用新案又は意匠については、その専利出願権及び専利権は被雇用者に帰属する。但し、その発明、実用新案又は意匠が雇用者の資源又は経験を利用したものであるときは、雇用者は合理的な報酬を支払うことで、その事業においてその発明、実用新案又は意匠を実施することができる。

2 被雇用者が非職務上で発明、実用新案又は意匠をなしたときは、直ちに雇用者に書面で通知しなければならず、必要があれば、その創作の過程を知らせなければならない。

3 雇用者は前項の書面による通知の到達後6ヶ月以内に、被雇用者に対して反対の意思表示をしないときは、その発明、実用新案又は意匠が職務上の発明、実用新案又は意匠であると主張することができない。

4200326日付改正公布の専利法7条(職務発明の特許出願権、特許権の帰属)

 被雇用者が職務上でなした発明、実用新案又は意匠については、その特許出願権及び特許権は雇用者に帰属し、雇用者は被雇用者に適当な報酬を支払わなければならない。但し、契約に別段の約定がある場合は、その契約に従うものとする。

2 前項にいう「職務上でなした発明、実用新案又は意匠」とは、被雇用者が雇用関係中の業務としてなした発明、実用新案又は意匠を指す。

3 一方が出資して他人を招聘し研究開発に従事させたときは、その特許出願権及び特許権の帰属は、双方の契約の約定によるものとし、契約の約定がないときは、それは発明者又は創作者に帰属する。

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