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裁判官が技術審査官について、審判の品質向上に寄与と評価

 台湾では20087月に知的財産裁判所が設置され、技術審査官審判参与制度が採用された。この制度に対し各界からは賛否両論、様々な意見が出ている。賛成意見として、技術審査官は、裁判官が難解な技術を理解するのに有効であり、案件審査の品質と効率向上に寄与するものであるという意見があり、反対意見としては、技術審査官は多くが知的財産局からの出向であり、知的財産局は知的財産権事件の行政訴訟においては被告身分であるため、一方で役人同士のかばい合いが生じたり、また一方で裁判官が「形だけの裁判官」に成り果てたり、又は技術審査官の「保証人」となってしまう虞があるという意見がある。
 技術審査官の審判参与制度が実施されて既に5年になることを鑑みて、最近知的財産裁判所はデータを提出し、この制度の実施効果について検討を行った。知的財産裁判所設置の2年前(2006.072008.06)には、台北高等裁判所が知的財産権と関連のある行政訴訟事件を審理する場合、一件の審決に284日掛かり、判決に対する不上訴率(つまり一定期間内に裁判の結果が出た後上訴又は抗告できる事件のうち、当事者が上訴抗告をしなかったり、上訴を取消したりした件数の、全ての上訴抗告可能な件数において占める割合)は、僅か47%であった。しかしここ2年(2011.082013.07)の知的財産裁判所が審理した行政訴訟事件は、142日で結審し、不上訴率は61%に達している。このことから、技術審査官が審判をサポートすることで、裁判の品質向上に寄与していることが窺える。
 知的裁判所のスポークスマンである李得灶法廷長は次のように述べた。「知的財産裁判所設置前、台北高等裁判所に8年勤務していたが、当時の知的財産事件で、行政機関の原処分に対し裁判官が取消の判決を下した割合は約10%に過ぎなかった。現在ではこの種の事件の取消判決は約2割となっており、技術審査官が知的財産局出身であるとしても、知的財産に係る行政訴訟事件の裁判の公正性に影響があるわけではないということが分かる。」
 李得灶法廷長はさらに補足として、「技術審査官は、裁判官の裁判開始時の参考として、裁判官が審理する知的財産事件に対する初歩的な技術報告書を提出するが、原告、被告の双方が裁判で攻防を繰り広げるなかで、疑問点がある場合、裁判官は技術審査官に更に技術報告を提出するよう求めることができる。ときには、知的財産事件1件審理するのに、技術審査官が裁判官の指示を受けて提出する報告は7、8回にもなることもあり、こういった過程のなかで技術審査官の意見は、既に裁判官の意見の中に溶け込んでいる。《知的財産案件審理細則》は技術審査官の書面意見は当事者に公開する必要はないと規定しており、公正性への影響について外部から懸念の声が上がっているが、実際、裁判官は、裁判において技術審査官の専門的意見に対し当事者に意見陳述させることができ、事件の判決における主導権は依然として裁判官にある。技術裁判官の意見は裁判官に参考資料を提供したに過ぎず、その地位は裁判官助手に類似している。」と述べた。
 技術審査官の審判参与制度は、実施結果から見ると確かにプラスの面があるが、外部のこの制度に対する懸念を払拭するために、裁判官に対し「心証の公開」を求め、当事者に技術審査官の専門的意見について十分に意見陳述できる機会を与えることが最も重要である。
 

 

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