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外国語書面で提出された明細書、専利請求の範囲又は図面の「補正」及び「訂正」における関連規定~台湾改正専利法の概要説明

一、「補正」について
2013年の11日に施行する予定の改正専利法第43条では下記の通りに定めている。

補正について、誤訳に対する訂正を除き、出願の時の明細書、専利請求の範囲又は図面に開示された範囲を超えることができない。

また、第44条第3項ではこのように規定している。

前項の中国語書面(注、第25条第3項により補正された中国語書面を指す)について、誤訳の訂正は出願の時の外国語書面に開示されている範囲を超えることができない

従って特許取得の段階において、改正専利法では「誤訳の訂正」という補正事由が追加された。なお、上記条文の改正理由においては「誤訳の有無は外国語書面を比較の対象とする」及び「誤訳の訂正は出願の時の外国語書面に開示されている範囲を超えることができない」と明記している。
二、「訂正」について
①改正専利法の関連規定について
改正専利法の第67条第1項では下記の通りに定めている。

特許権者は、次の各号のいずれかの事項に限り、特許明細書、専利請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。
請求項の削除
専利請求の範囲の減縮
誤記又は誤訳の訂正
明瞭でない記載の釈明

従って特許取得の段階において、改正専利法では「誤訳の訂正」という訂正事由が追加された。この条文の改正理由では「誤訳の有無は外国語書面を比較の対象とする」と明記している。
次に、改正専利法の第67条第2項、第3項及び第4項は下記のように定めている。

2 訂正は、誤訳の訂正を除き、出願の時に提出した明細書、専利請求の範囲又は図面で開示されている範囲を超えることができない。
3 25条第3項の規定により、明細書、専利請求の範囲及び図面が外国語書面で提出されたときには、その誤訳に対する訂正は、出願の時に外国語書面で開示されている範囲を超えることができない
4 訂正は、公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更することができない。

上記条文の改正理由によると、訂正が出願の時に提出した明細書、専利請求の範囲又は図面で開示されている範囲を超えるか否かを判断するときには、出願の時に提出した明細書、専利請求の範囲又は図面に基づいて判断すべきである。誤訳の訂正は出願の時に外国語書面で開示されている範囲を比較の対象とすべきである。また、訂正が公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更するか否かを判断する際には、公告時の専利請求の範囲を比較の対象とすべきであると明記されている。
この他、改正理由では誤訳により公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更するとき、既に公告された権利の範囲に影響を及ぼすことになり、訂正を許可すべきでなく、訂正が誤って許可されたとしても、無効審判を請求する事由になると明記している。
②「公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更することができない」という制限の原則的未緩和
前掲改正特許法第67条の規定から見れば、改正特許法は出願の時に提出した明細書、専利請求の範囲又は図面に対する訂正範囲を判断する際の要件を「誤訳の訂正は出願の時に外国語書面で開示されている範囲を比較の対象とすべき」まで拡大したが、「訂正は、公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更することができない」という原則に対しては緩和する様子はない。
③審査基準により新たに認められる態様
一方、最近改正したばかりの「第九章 訂正」の審査基準に記載されている「公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更する態様」の実例はかつて既に規定された17種の態様のほかに、公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更する態様と認定せずに、訂正を認めるべきとされる態様を新たに一種追加した。この追加態様は参考に値するものと思われるので、ここでは当該追加態様の日本語訳を下記の通りに提供する。

ただ若し公告時の専利請求の範囲では『…A樹脂はエチレンとプロパンの共重合体である』と記載され、特許権者が『その中のプロパン(propane)は出願の時の外国語書面のpropene(プロペン)の誤訳である』と主張し、その部分を『…A樹脂はエチレンとプロペンの共重合体である』に訂正するように請求する場合、訂正前と訂正後の実質内容が完全に異なっているが、プロパンはアルカンで、不飽和結合を持たず、共重合反応に参加することができないというのはこの技術分野の通常知識である。従って元の公告の『プロパン』は明らかな錯誤かつ無意味な部分で、訂正しても公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更することにはならない。故にその訂正を認める。

三、関連条文

25
1 特許出願は、特許を受ける権利を有する者が願書、明細書、専利請求の範囲、要約書及び必要な図面を専利主務官庁に提出して行う。
2 特許出願は、願書、明細書、専利請求の範囲及び必要な図面が全て揃った日を出願日とする。
3 明細書、専利請求の範囲及び必要な図面が出願の時に中国語書面でなく外国語書面が提出され、かつ、専利主務官庁が指定する期間内に中国語書面が補正されたときは、当該外国語書面が提出された日を出願日とする。
4 前項の指定された期間内に中国語書面を補正しなかったときは、出願を受理しない。ただし、処分前に補正されたときは、補正された日を出願日とし、外国語書面が提出されなかったものとみなす。

 

43
1 専利主務官庁は、特許を審査する時に、この法律に別段の定めがある場合を除き、請求により又は職権で、期間を指定して明細書、専利請求の範囲又は図面の補正をすべき旨を出願人に通知することができる。
2 補正について、誤訳に対する訂正を除き、出願の時の明細書、専利請求の範囲又は図面に開示された範囲を超えることができない。
3 専利主務官庁から第46条第2項の規定により通知された後、出願人は、通知された期間以内に限り補正をすることができる。
4 専利主務官庁は、前項の規定により通知した後、必要があると認めた時には、最終通知をすることができる。最終通知を受けたとき、出願人は通知された期間において、次の各号に限り、専利請求範囲の補正をすることができる。
請求項の削除
専利請求の範囲の縮減
誤記の訂正
明瞭でない記載に対する釈明
5 前二項の規定に違反するとき、専利主務官庁は、査定書にその事由を説明し、査定をすることができる。
6 もとの出願又は出願の分割に係る新たな出願について、次の各号のいずれかに該当するときは、専利主務官庁は、最終通知をすることができる。
もとの出願に対する通知が、出願の分割に係る新たな出願に対して既に通知された内容と同じである場合
出願の分割に係る新たな出願に対する通知が、もとの出願に対して既に通知された内容と同じである場合
出願の分割に係る新たな出願に対する通知が、出願の分割に係るその他の新たな出願に対して既に通知された内容と同じである場合

 

67
1 特許権者は、次の各号のいずれかの事項に限り、特許明細書、専利請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。
請求項の削除
専利請求の範囲の減縮
誤記又は誤訳の訂正
明瞭でない記載の釈明
2 訂正は、誤訳の訂正を除き、出願の時に提出した明細書、専利請求の範囲又は図面で開示されている範囲を超えることができない。 5
3 25条第3項の規定により、明細書、専利請求の範囲及び図面が外国語書面で提出されたときには、その誤訳に対する訂正は、出願の時に外国語書面で開示されている範囲を超えることができない。
4 訂正は、公告時の専利請求の範囲を実質上拡大又は変更することができない。

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