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立法院で専利法改正案が三読を通過

立法院で2011年11月29日に「専利法」改正案が三読(三読会)を通過した。今回は全面改正のため、改正条文は計159条(改正108条、追加36条、削除15条)にもなった。施行日は行政院が定めるが、新法は公布の1年後に施行される予定である。その他の関連下位法令や審査基準、出願書類及びシステム修正作業などの関連措置については、知的財産局は既に積極的に研究、修正を進めている。
この度の専利法改正の変更、改正要点は以下の通り:
 

一、 創作の定義を明確化

創作は発明、実用新案及び意匠の上位概念である。創作が「実用新案」又は「意匠」であるとの誤解を避け、また現行法が「創作」について範囲が定まらない状況を解決するため、発明、実用新案及び意匠を創作の類型とする。(改正条文第1条)
 

二、 意匠の名称を「新式様」専利から「設計」専利へ変更

産業界及び国際間の意匠保護の通常概念に合わせ、また、意匠保護の標的を明確に表すために、国際立法例を参考に、現行の「新式様」を「設計」(design)に改正する。(改正条文第2条)
保護範囲において、現行の専利法の規定によれば、「設計専利」が保護する創作は必ず完全な物品(部品、パーツを含む)の外観の形状、模様、色彩又はそれらの結合からならなければならず、もし「設計専利」が多くの新規的特徴を含み、他人がその一部分の特徴のみ模倣した場合、意匠の権利保護の範囲にあてはまらず、設計専利を完璧に保護出来なった。この度の専利法の改正(改正条文第121条)では、「設計専利」の特許権の保護を特に強化するため、日本の意匠法第2条、韓国の設計法第2条、欧州連合(EU)の設計法第3条などの部分デザイン(partial design)の立法例を参考に、部分デザインを「設計専利」保護の範囲に組み入れ、また、全部又は一部のデザインの何れも専利保護の範囲に属するとした。その他、改正条文第127条に派生設計専利制度を設け、同一人による近似の設計専利の出願と保護を明確に定めた。
 

三、 発明、実用新案及び設計の「実施」の定義を追加

「実施」は「製造、販売の申し出、販売、使用をしたり、又はこれらを目的として輸入する」などの行為を含むことから、「使用」の上位概念に属すはずである。現行法の「使用」と「実施」の用語の不一致による解釈上の混乱を解決するため、「実施」の定義を追加すると共に、関連条文の「実施」と「使用」の用語を改正する。(改正条文第22条、第58条、第87条、第122条及び第136条)
 

四、 優遇期間の適用範囲の改正、並びにその事由の追加

事実の発生から六ヶ月以内に出願した発明及び実用新案の優遇期間の適用範囲について、現行は新規性のみ及んでいるが、改正後は新規性及び進歩性(設計専利については創作性)を含むこととし、優遇期間の適用範囲を拡げた。優遇期間が主張できる事柄について、「出願人が既に自らの意思により刊行物に発表した場合」を追加した。(改正条文第22条及び第122条)
 

五、 特許請求の範囲及び要約書を明細書から独立

国際立法の情勢に合わせるため、現行の明細書に含まれていた「特許請求の範囲」及び「要約書」を、説明書から独立させるよう改正した。(改正条文第23条及び第25条)
 

六、 明細書、特許請求の範囲及び図の外国語文での提出に関する規定を追加

外国語で出願したものは、その外国語は補正できないことを明確に定めるとともに、それに対応する誤訳訂正の制度を導入する。外国語の種類の限定及びその記載すべき事項の規定に関する制定は主務官庁に授権する。(改正条文第25条、第44条、第67条、第106条、第125条、第133条、第139条、及び第145条)
 

七、 権利回復の規定を導入

革新を奨励し、研究開発成果の保護をするため、出願人又は特許権利人が故意でなく出願時に優先権を主張しなかった、主張しないと見なされた、又は期間内に特許年費を納付しなかったために、権利失効となった場合、その出願の回復を許可する機制を追加した。回復した特許権の効力は、元の特許権が消滅してから特許権の回復許可が公告される前の期間、善意に実施したもの、又はすでに必要な準備が完成しているものには及ばない。(改正条文第29条、第52条、第59条及び70条)
 

八、 分割出願時期の制限緩和

発明特許許可後の分割制度を採用し、出願人は初審特許査定書が送達されてから30日以内に分割出願することができる規定を追加した。(改正条文第34条)

九、 審査における補正制度を完備

「補充、修正」の用語を「修正」に変更し、出願人が自主的に提出する修正の期間制限を削除する。審査の遅延を防ぐため、「最後通知(最後の拒絶理由通知)」制度を追加し、出願人が特許主務官庁より最後通知がなされた場合に補正するときは、特定事項に限り行うことができる。違反した場合、特許主務官庁は直ちに査定することができる。(改正条文第43条)
 

十、 医薬品又は農薬の特許権期間延長関連規定の改正

医薬品又は農薬の特許権期間延長の規定を緩和し、現行の本法の、許可証を取得するのに発明が実施できない期間(この部分の意味は、販売許可書を取得するために、その時間(例えば申請、臨床試験などの時間)を待つ期間)が公告から2年以上が必要とする制限規定を削除した。特許権が期限満了の時にまだ査定されていないものは、その特許期間が既に延長されたものと見なす。発明特許権の期間が延長許可されるのは、許可証に記載の成分及び限定された用途の範囲に限られる。(改正条文第53条、第54条及び第56条)
 

十一、特許権の効力が及ばない事項の追加と改正

商業目的でない未公開行為や、特許権人が第70条第2項の規定により特許権が回復し、公告される前の善意による実施又は既に必要な準備を完成したものや、薬事法が定める薬物検査の登記許可の取得又は外国の薬物販売許可の取得を目的として、研究、試験及びその必要行為に従事したものは何れも特許権の効力が及ばない事項として追加した。権利消尽の原則については、国際消尽又は国内消尽の何れを選択するかは、立法政策に属し、裁判所では事実により認定することが出来ない。この度の改正で国際消尽の原則を採用することが明確となった。(改正条文第59条及び第60条)
 

十二、専用実施権の関連規定を明確に限定

実施許諾権は専用実施権又は非専用実施権とすることができるとし、専用実施権の定義と、専用実施権及び非専用実施権の再授権の規定を明確に定めた。(改正条文第62条及び第63条)
 

十三、無効審判関連規定の改正

職権による審査制度を廃止した。無効審判が提起できる事由を改正し、その無効審判事由は許可査定の時点に基づくとする規定を明記した。ただし出願時に開示した特許請求の範囲を超えた分割、変更出願又は更正、或いは公告時の特許請求の範囲を実質的に拡大した更正又は変更したものは、当該理由がいずれも本質的な事項に属するため、許可査定時に無効審判事由に規定されていなくても、依然無効審判を請求できる。その他手続きの規定部分については、一部の請求項に対して無効審判を請求することができ、無効審判の審査は職権で斟酌することができ、合併審査・合併査定及び無効審判決定の前に取下げることが出来るなどの規定を追加し、また、職権により更正を通知する規定を削除した。(改正条文第71条、第73条、第75条及び第78条から第82条)
 
十四、特許の強制実施権の規定を改正
強制実施権の名称を「特許実施」から「強制授権」に改正し、申請事由、要件、並びに強制実施権処分を下す時に、同時に補償金を定めるなどの関連規定を改正する。(改正条文第87条から第89条)
 

十五、公共衛生関連の規定を追加

世界貿易機関(WTO)による、開発途上国及び後発開発途上国が国内の公共衛生問題を解決するための必要な特許医薬を取得する支援に合わせ、強制実施権で必要な医薬品を生産できるようにするとともに、本機制を適用して強制実施権を申請する範囲を明確に定める。(改正条文第90条及び第91条)
 

十六、特許権利侵害関連規定の改正

権利人の民事救済請求権の性質に基づき、損害賠償請求権及び侵害排除防止請求権の規定を定めた。損害賠償の請求は権利侵害行為人が主観的に故意又は過失である必要がある。合理的な権利金を損害賠償の算定方式とすることができる規定を追加して、権利人の損害に法律上合理的な補償最低限度を設け、挙証責任の負担を免除した。その他、特許標示規定の意図をはっきりとさせるために、標示のないものは損害賠償を請求できないとする規定を削除した。(改正条文第96条から第98条)
 

十七、実用新案制度の改正

同一人が同日に同一の創作を、発明と実用新案にそれぞれ出願した場合、発明の特許査定通知の前にどちらか一つを選択する規定を増設した。発明を選択したものは、実用新案は初めから存在しないものとし、実用新案を選択したものは、発明特許が付与されない。実用新案の補正が明らかに出願時の範囲を超えたものは、特許を付与しない理由とする。実用新案権利人が権利行使する際の注意すべき義務を改正した。実用新案の更正は形式審査制を採用するが、ただし、無効審判案との合併審査の時は、実体審査を採用するとともに合併査定を行う。(改正条文第32条、第112条、第117条及び第118条)
 

十八、意匠制度の改正

意匠は部分意匠、アイコン及びグラフィカル・ユーザー・インターフェース(Icons&GUI)の意匠、組物の意匠の出願を許可した。派生意匠制度を新設し、連合意匠制度を廃止した。(改正条文第121条、第127条及び第129条)
 

十九、過渡条項の増設

優遇期間主張の事由の新設、発明特許の初審許可査定後に分割出願が可能、実用新案の単純な更正は形式審査を採用、無効審判、更正及び意匠関連規定などの事項の改正などを含む、この度の改正重点は何れも特許制度の重要な改革であり、従って新旧法律の過渡期間規定を増設し適用に役立てる。(改正条文第149条から第158条)
 

二十、本法の執行日は行政院が定めることを明確に規定

この度の改正は全面改正であるため、実務作業手続きも改正にあわせて調整する必要がある。また、多くの特許制度の項目で重要な改革事項が増設されたため、その準備と対応に十分な時間が必要であり、さらに各界に改正後の制度運用に対して十分に理解し適応してもらう必要があるため、本法の施行日は行政院がこれを定める。(改正条文第159条)
(資料元:経済部知的財産局)
 

 

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