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専利強制ライセンス、9月に法修正草案を提出

経済部知的財産局は、200878日に、専利強制ライセンスに関する争議に関して、産業界、官僚、および学術会に、法修正諮問座談会を召集し、強制ライセンスの審査機関を、公平交易委員会または知的財産裁判所に改めるかどうか、および、「専利未実施」を強制ライセンスの要件に含むかどうかについて討論するよう要請した。

現行の専利法の規定では、知的財産局は国家の緊急情況において、公益を促進するための合理的協調を経ても、依然として協議授権できない、又は、不公平な競争を救済する等の情況下では、権利人に、専利を強制授権させることができるとする。しかし、学者は、いわゆる「合理的に協調しても依然として協議授権できない」ことを、強制的授権が可能とするのは、条件が緩すぎるとし、ドイツ、日本、韓国を参照、比較し、「専利未実施」を先決条件として列挙するべきであると考える。言い換えれば、もし強制授権を申請するなら、先ず「台湾では該専利を実際に使用していない」事を必須とし、そこで初めて「合理的商業条件」に適用することができるとすべきである。

これに対し、知的財産局王美花局長は、「外国企業の専利は、台湾での製造、輸入でないので、強制授権されることが可能であることは、台湾にとっては、ひとつの『武器』であるが、これによって、専利権利人に台湾に来て専利を申請するよう強制することはできない。」と述べた。政治大学楊光華副教授も、「専利は、当地での実施が不可能でも、貿易によって、当地に成果をもたらすことができるので、こうした規定は貿易上の紛糾を起こしやすいだろう」と、こうした意見に同意した。

次に、強制ライセンスの審査についてであるが、中研院研究員の劉孔中氏は、「知的財産局が『選手』と『審判』を兼任すべきではなく、運営を開始したばかりの知的財産裁判所は、公平な第三者であるべきで、行政機関は、利益衝突、役割矛盾の問題を多分に考慮すべきである。もし知的財産裁判所による審理に改め、将来、最高行政裁判所に直接上訴できるとなれば、比較的、迅速に結論が得られる。」とする。また、この座談会に参加した他の専門家も賛同し、「現行の行政機関による強制ライセンスの処分は、行政効率劣化を逃れない上、上級機関の圧力を避けられないため、司法裁判に改め、救済手順の効率を図るよう建議する。」と述べる。

しかし、司法院は、目下の台湾の司法体系は、行政訴訟の提起前に、先ず訴願を完成して、それから裁判所により処分後の裁判を進行するので、裁判所は、裁定を処分する責任を担う機関として不適当である、と述べる。

また、知的財産局が、専利法第76条第2項の不公平競争の事由に対し、将来、市場で不公平な競争が起こった場合を配慮し、公平会による処分をした後、「確定」処分を待つ必要はなく、直接、専利強制ライセンスを処分の手段とすることができ、知的財産局は再度処分しない。

しかし、公平会は、「強制ライセンスを、不公平競争を公正する方法として考えたこともなく、また強制ライセンスの審査も公平会の権利の範囲ではない。」と述べた。また、座談会に参加した外国企業も、「もし、行政訴訟確定の経過がなければ、強制ライセンスを、不公平競争救済の処分とすることは、直接専利権を剥奪するも同様となり、外国企業が、台湾での投資情勢が劣勢となる危険を招き、もし、更に進んで競争を制限するなら、結果はより深刻である。』と、これに反対する。

最後に、専利強制授権を実施するかどうかについて、知的財産局は、「産業競争に関わる全ての判断は、公平会により、実質的に処分するのがふさわしい。また、公平会が強制授権を改正処分とする権利があるとしても、その権利を使用する機会が少ない。」との意見を述べた。知的財産局は、強制授権について、迅速に意見を調整し、早ければ9月に条文の草案を決定し、別の日程を選んで公聴会を召集する。

知的財産局は、専利法第76条「専利特許実施」(強制ライセンス)の規定改正の準備中であり、将来、政府使用により強制授権する手順は、現行の専利権利人による3ヶ月間の答弁期の規定を取消し、且つ、特許実施の「緊急情況」を、各主管機関が認定を行うことに改正する計画により、手順の時間的節約となり、国家の緊急情況に素早く対応することになる。

将来、「政府使用による特許実施」の過程で、二つの重大な変動があるだろう。その一つとして、一般の特許実施適用の手順と異なる所は、専利権利人の3ヶ月の答弁期間の規定を取消し、国家が遭遇する緊急情況に、即座に対応することできる。二つめは、特許実施の必要性を認定する機関を、現行の知的財産局から、各主管機関による認定を基準とするよう改め、知的財産局は、今後、実質的審査を行わないこととし、時間的節約により効率を高める。

知的財産局は、「現行の法令は、特許実施の事由を区別しておらず、全て同じ申請手順を適用しているのは、妥当ではない。政府使用の情況では、緊急または公益等の重大な要求が主であり、即刻、該専利権を使用する必要があると、総統の緊急命令発布、或いは、各主管機関の職権により、緊急情況と認められた場合、適切な処分をする。従って、手順上、迅速に処理して実態が厳重になるのを避ける。また、将来、知的財産局も、この類の専利特許実施案件に対して、実質審査をせず、迅速に専利権利人に通知する責任を負う。」と述べた。

我が国の専利制度は、専利権利人に、一定期限内において、他人がその同意なしに、専利物品を製造、販売、販売契約、使用もしくは輸入する権利を排除して専有する権利を与えている。強制ライセンスは、専利の独占権および排他権の範囲が過大化するのを避けるためであり、各国においては相関規範を定め、国家の緊急時に、公益を促進し、合理的に協議しても依然として協議授権できず、不公平競争等を救済する状況下において、専利権の効力を制限することができる。

台湾の専利強制ライセンスの法改正の作業は、国際的に非常に注目されている。知的財産局は、専利法第76条により、フィリップスのCD-Rの専利およびロシュ社(ROCHE) のインフルエンザワクチン、タミフルに対し、各々、國碩社および衛生署が申請した二件の強制ライセンスを認めたことから、国内、外国の専利権利人および専利使用需要者から議論が起き、また、欧州連合、米国、日本が関心を持ち、中でも欧州連合は、台湾の強制ライセンス権について法修正の必要を提出するに至った。

知的財産局は、本日(200878日)「専利特許実施法修正の諮問」座談会を挙行し、専利法特許実施規範を全面的に検視し、特許実施を強制授権に修正し、関連する条文を改定するよう求めた。

 

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