台湾の漢方、薬草にかかる専利の出願および特許査定の案件量は、年々増加しており、知的財産局は2008年1月より正式に新規の｢漢方薬専利審査基準｣を施行し、漢方薬分野の発明の革新や保護を奨励している。過去の漢方薬専利は、西洋薬剤の専利審査基準を参照し、動物実験、臨床実験、もしくは試験管実験などのデータ報告を提出する必要があった。しかし、これらの西洋医学の｢臨床実験｣を強調する審査基準は、東洋医学が｢弁証論治｣の精神を重視する｢望診、聞診、問診、切診｣の方法による精神とは異なる。そこで、新規の｢漢方薬草専利審査基準｣が通過してからは、漢方薬専利の発明者らは、別の｢臨床観察｣の方式で、公正な第三組織を介して、漢方薬服用前、服用後の差異と効果を証明する報告を提出し、専利査定を受けることができるようになった。漢方薬の専利出願人は、臨床観察の対象、段階、理論、過程を論述さえすれば、専利審査で査定される可能性があるのである。
漢方薬の専利で最も困難なのは、資料庫の設立である。中国では、｢中国漢方薬専利データ庫｣およびその検索システムが完成し、2001年8月には、WIPOの伝統知識工作チームの検査試験に合格、2002年4月には、成果検査試験に合格し、中国で初の自主知的財産権および分析、帰納及び整理された標識を有する専利資料庫となった。その中で、1985年から現在まで収録、公開されている中国漢方薬の発明専利の総数は、2004年11月までに専利案件数はすでに27,000件余り、漢方薬処方箋は6万件近くとなっている。また、専利公報も同時に増加し、2004年8月には、該資料庫は北京当方靈頓科技（株）が英語版に翻訳し、中国語版の検索功能と完全に一致している。
このデータ庫のシステムは、漢方薬専利目録資料庫、漢方薬専利処方箋資料庫、および漢方薬材料語彙辞典資料庫の三つの部分構成に分かれている。そのうち前二つは、該検索システムの核心部分であり、漢方薬専利の情報および漢方処方箋情報の検索と開示を提供している。情報検索においては、この二つの資料庫は分別検索ができるが、その情報はまとめて開示される。漢方薬材料語彙辞典資料庫は、補助的検索ツールに属し、多種の名称により漢方薬材料の検索ができ、漢方薬材料語彙辞典資料庫から漢方薬専利目録資料庫および漢方薬専利処方箋資料庫に移動する検索功能を提供している。この補助検索システムの設立により、専利データの検索率と精確率を大幅に向上させ、漢方薬名称の不一致による検索の困難を解消した。
台湾は、2002年末に｢漢方薬資料庫｣を完成し、これと、同時期に探網科技(株)に委託して構築した｢バイオテクノ技術専利資料庫および医薬化学専利資料庫｣を統合して｢バイオテクノ、医薬化学、漢方薬資料庫｣とした。その後、年々資料を更新しシステム功能を新設してきた。
｢漢方薬資料庫｣には、国内外各種の古書、辞典、手引き、専門書、定期刊行物などに記載の常用薬用植物および漢方薬の名称、および国内外で公開、公告された漢方薬関係の専利資料、並びに語彙整理、対照、分析および帰納（科名、学名、発音に基づく漢語名称、主要な中国語名、その他の中国語名、薬性用途、産地など）を収集する。また、国外関係の資料庫を導入し、その検索欄を相互に関連させる設計によって、薬物選択、薬物標的、取得の出所、東西医薬理論、専利情況などが、同一関連システムで全て完成できるようになり、完全で豊富かつ多様、また迅速便利な資料庫の構築を進め、専利関連の出願および審査に大きな利益をもたらす。
2008年台湾で新規の漢方薬の専利審査基準が通過してから、適用性の高い特定規範を提供できるようになり、漢方薬専利審査を本土化したことで、更に専利出願に有利になった。新規の審査基準の使用対象を拡大するため、現在、知的財産局は、国際的に流通できるよう翻訳した英文版を即急に作成している。また、漢方薬資料庫の設立は容易でないため、できれば中国のやり方を参照し、該資料庫をできる限り英文版に翻訳することで、欧米人の検索利用に便利となり、国外専利機構との関係資料庫の共同作業や交換を進めていく。こうしてその付加価値を高めることになるであろう。