IPニュース | 知的財産裁判所

商標権者が提出した登録商標の使用証拠は台湾国内で                               
実際に取引行為があるという条件を満たす必要あり

台湾の商標法の規定によると、商標が登録された後、商標権者は、商標権を維持するために、実際に当該登録商標を継続的且つ合法的に使用して、関連消費者に商標を商品又は役務と結び付けさせ、それが商標であると認識させなければならない。商標法第63条には、商標権者に登録商標を使用する義務があることが明確に規定されているほか、また、商標主務官庁が職権で又は請求により商標登録を取消す(中国語では廃止という)ことができる事由も規定されている。例えば、登録されてから正当な事由もなく3年間継続して使用していない場合や、商標を変更したり付記を加えて使用するなどの場合である。

商標権者の登録商標が他人から3年以上の不使用を理由として商標登録の取消を請求された場合でも、商標権者は過度に心配する必要はなく、同法第65条の規定に基づき、取消を請求される前の3年間において、合法的且つ継続的に商標を使用している証拠資料、例えば、商標を付している商品の実物、写真、宣伝ビラなどの物品或いは商業文書、又は商標が役務に係る関連商業文書などに表示されている物証を積極的に挙げて、定められた期間内に答弁書を提出すれば十分である。ただ、商標権者は、登録商標の使用証拠を提出する際に、当該登録商標の使用証拠に、登録商標、日付及び使用者の表示、或いはその他のそれが登録商標、日付及び使用者であると認識できる証左資料、又は使用証拠を互いに補完させ合うことによって、商標権者が当該登録商標を使用したと認定できるに足る客観的な事実が含まれていること、しかも登録商標の使用が真実であることを証明するには、その使用が商取引の一般的慣習に合致しなければならないことに注意が必要である。そうでなければ当該登録商標は取消される虞がある。

東急屋実業有限公司(訴訟参加人)が、商標権者である東急株式会社(日系企業、原告、上訴人)が所有する登録第01768451号「東急」商標(以下、係争商標という)に対して提起した商標登録取消事件に係る行政訴訟で、第一審の裁判所である知的財産裁判所は、「原告は台湾で百貨店を設立しておらず、係争商標を用いて台湾で宣伝広告を行っていたとしても、「百貨店」役務に係る実際の取引行為が台湾国内で一切行われていないため、原告の提出した商標の使用態様は商取引の一般的慣習に合致せず、係争商標を指定役務の「百貨店」において使用したと認定することはできない」として、原告の訴えを棄却する判決(109年度〔2020年〕行商訴字第104号行政判決)を下した。原告は、これを不服として最高行政裁判所に上訴を提起したが、最高行政裁判所は、当該事件を審理した後、上訴棄却の判決(110年度〔2021年〕上字第303号判決)を下した。

係争商標

登録第01768451

35類:広告;百貨店;スーパー;通信販売;     インターネットによる販売…。 

36類及び第43類。

この事件の争点は、「商標権を維持するための使用証拠は、実際の取引行為が台湾国内で行われたものに限られるか」にある。最高行政裁判所は、判決で、「商標法第5条に規定されている商標の使用とは、使用者が販売を目的として、客観的に国内で積極的に商標を指定商品・指定役務に使用する行為を指し、すなわち使用者が自身の提供する商品又は役務の出所を示すことである。同条規定にいう《販売》とは、商取引として市場に向けて販売を行うことを意味し、販売地域は、台湾国内の地域を指すと考えられる。商標の使用が、商品又は役務を販売する目的に基づくものでなく、商業の取引行為がないために、その使用に経済的意味がない場合、又はその使用行為が客観的に指定商品又は指定役務の出所を示すに足りない場合は、真実の使用であると認定されない。また、真実の使用であるかについては、その取引の期間、商品の種類、販売量、取引方法が取引の一般的慣習などに合致するかどうかなどから判断しなければならない。」と指摘した。また、最高行政裁判所は判決で、知的財産裁判所の判断を支持して「台湾で実際に百貨店を経営していない上訴人が旅行展で配布した買物割引券や宣伝ビラは、単なる宣伝・広告活動に過ぎない。台湾の消費者は、上訴人の日本にある百貨店に行かなければ、当該買物割引券を使ってその役務を購入することができない。したがって、役務の提供地や役務の購入の取引行為が全て日本で行われ、百貨店役務に係る経済活動は台湾で一切行われていないことから、商取引の一般的慣習に関する商標の真実の使用に合致していない。したがって、上訴人が台湾で法律に基づいて係争商標を指定役務の「百貨店」に使用していたとは認められない。」と認定した。

このことから分かるように、商標権者は、登録商標を使用する際に、販売を目的として商標を使用する以外に、その使用について、客観的に取引行為の全部又は一部が台湾国内で行われていて、台湾の消費者が台湾で当該商標が表示されている商品又は役務について実際に取引をすることが可能である必要があり、そうしてはじめて、商標の真実の使用であると認められ、商標権を維持するための使用に合致し、自身の商標権を効果的に維持することができる。言い換えれば、上述の判決の要旨は、外国の役務提供者が、台湾で登録済みの商標権を維持することができないことを意味しているわけではない。例えば、外国の宿泊事業者が、台湾消費者のために宿泊予約を受け付ける台湾事務所を設置したり、台湾消費者向けのサービスホットラインを提供したりして、台湾消費者が台湾で直接に商標権者の提供する役務を予約することができる場合や、外国のレンタカー事業者が、台湾の旅行会社などの関連事業者と連携することによって、台湾消費者が台湾国内でその役務を予約しておいて外国に行って利用することができる等の場合のように、商標権者の提供する役務の取引過程の一部が台湾で行われれば、台湾で経済的意味を有する取引行為が発生したと認定されるだけでなく、商標権を維持するための使用に属すると認められ得る。

 

 

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