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台湾 発明の単一性の判断手順を改訂

 
 台湾の知的財産局は20181217日に改訂した専利審査基準の発明の単一性に関する章節を公布した。今回の改訂内容は既に201911日に発効されている。専利法については対応する改訂は行われず、単一性の法定要件に変更はないが、専利審査基準の単一性の章節の改訂後と改訂前の内容を比較すると、改訂後は少なくとも7割以上の変更があり、その変更の多くは、単一性の判断手順及び当該章節に記載された範例の追加や削除である。この手順は審査官が今後単一性の判断を行う際の心証形成の具体的なステップと言えるため、非常に参考にする価値がある。

 専利法第33条には「特許出願は、一発明ごとに出願しなければならない。二以上の発明が一つの広義の発明概念に属するときは、一つの願書で特許出願をすることができる」と規定されている。広義の発明概念とは何かについては、専利法施行細則第27条によると、二以上の発明であって技術的に相互に関連しているものをいい、二以上の発明は一つ又は複数の同一の又は対応する特別な技術的特徴を含んでいなければならない。また、特別な技術的特徴とは、特許出願に係る発明全体が先行技術に対する貢献をもたらす技術的特徴のことをいう。

 一つの出願案に二以上の独立項が含まれている場合、審査官は先行技術文献を検索する前に、まず独立項が明らかに単一性の要件を満たさないかどうかを判断しなければならない。明らかな要件違反はないと判断した場合、審査官は先行技術文献の検索を行って、「特別な技術的特徴」は何かを把握するとともに、その技術的特徴が先行技術に対する貢献をもたらすものか否かを判断する(もちろん、一つの独立項に特別な技術的特徴が一つだけとは限らない)。改訂後の手順では、単一性の判断は以下のステップで行われる。

(1)   各独立項に係る発明が明らかに発明の単一性の要件を満たさないかどうかを判断する。各発明の間に同一の又は対応する技術的特徴がない場合、又は明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された先行技術に基づいて、各独立項の同一の又は対応する技術的特徴が先行技術又は出願時の技術常識に属すると認定できる場合、二つの発明の間に明らかに同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しないため、出願案は発明の単一性の要件を満たさないと判断される。

(2)   先行技術を検索する。各独立項に係る発明が明らかに発明の単一性の要件を満たさないものではない場合、先行技術を検索しなければならない。原則として、請求項1に係る発明から検索を行い、当該発明に特別な技術的特徴が存在するか否かを判断する。特別な技術的特徴が存在しない場合、各独立項に係る発明の間には、同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しないことになるため、出願案は発明の単一性の要件を満たさないと判断される。

(3)    請求項1に係る発明に特別な技術的特徴が存在する場合、更に他の独立項に係る発明がその特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有するか否かを判断する。有する場合、他の独立項に係る発明と請求項1に係る発明の間には、同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在することになるため、出願案は発明の単一性の要件を満たすと判断される。有しない場合、他のどの独立項に係る発明も請求項1に係る発明と同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しないことになるため、出願案は発明の単一性の要件を満たさないと判断される。

 また、通常、以下のような場合、特許請求の範囲が明らかに発明の単一性の要件を満たさないとされる。

(1)    各独立項に係る発明間に同一の又は対応する技術的特徴がない。例えば、二つの独立項に係る発明がそれぞれ除草剤と草刈機の場合、除草剤の技術的特徴は組成物の成分であるが、草刈機の技術的特徴は異なる素子の組合せ及びその連結関係であり、二つの発明の間に同一の又は対応する技術的特徴が存在しないため、出願案は発明の単一性の要件を満たさないと判断される。また、例えば、二つの独立項に係る発明がそれぞれ携帯電話用アンテナと携帯電話用ディスプレイの場合、携帯電話用アンテナの技術的特徴はアンテナ素子の組合せ及びその連結関係であるが、携帯電話用ディスプレイの技術的特徴はタッチパネル素子の組合せ及びその連結関係であり、二つの発明の間に同一の又は対応する技術的特徴が存在しないため、出願案は発明の単一性の要件を満たさないと判断される。

(2)    明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された先行技術に基づき、各独立項の同一の又は対応する技術的特徴が先行技術又は出願時の技術常識に属すると認定できる場合、出願案は発明の単一性の要件を満たさないと判断される。

 二以上の独立項を含む出願案において、一つの独立項に新規性又は進歩性がない場合、それは当該独立項に特別な技術的特徴が存在しないことを意味するため、審査官は、当該出願案は単一性の要件を満たさないとの理由で他の独立項について検索しない。この場合、台湾の知的財産局の從来の実務上の処理方法では、他の独立項について検索をしない理由を出願人に特別通知することはなかったが、今回の改訂後の専利審査基準によれば、審査官は、出願人に明確に理解させるために、拒絶理由通知に発明の単一性の要件を満たさない旨の拒絶理由を記載するとともに、単一性の要件を満たさないために検索しなかった請求項を明示しなければならない。

請求項の記載順序における戦略

 出願人の立場からすれば、通常、一回の実体審査手数料納付で、出願の全ての請求項が審査対象となることが望ましい(発明の単一性の問題で分割出願となれば、実体審査手数料が更にかかるため)。しかしながら、上述のとおり、審査官は、選択した独立項の検索結果に基づいて出願が単一性の要件を満たさないと判断すれば、他の独立項についての検索を中断する。これは他の独立項の特許性を知りたいという出願人の希望に反するものである。

 改訂後の専利審査基準では、前述の判断手順(2)の先行技術を検索する際、審査官は原則として「請求項1」に係る発明から検索をしなければならず、「権利範囲が最も広く」記載された請求項から検索をしなければならないわけではない。これは、請求項1が一般的に最も権利範囲の広い独立項であるとの仮説に基づいている。そのため、請求項1に特許性がない場合でも、より多くの技術的特徴を含む他の独立項に特許性がないというわけではない。これらを踏まえて、当事務所が提案する特許請求の範囲の記載方法は次の通りである。それは、逆に権利範囲の最も狭い独立項(つまり技術的特徴を最も多く有する独立項)を請求項1とし、次に他の独立項を権利範囲の狭いものから広いものという順序で記載するという方法である。このような方法であれば、技術的特徴を最も多く含む独立項でさえ特許性がないという場合を除き、審査官は全ての請求項を順に審査しなければならなくなるため、出願人の納付した実体審査手数料の効果と利益を最大化することができる。

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