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大法官会議 釈字第761号解釈で
「知的財産裁判所の裁判官及び技術審査官の
忌避事件」合憲認定

  

本事件は、宏正自動科技会社が専利権に係る複数の訴訟に関わったことに起因する。同社は、民事訴訟でも、また同社の専利が無効審判を請求された後の行政訴訟でも、同一の技術審査官が担当していたため、当該技術審査官の忌避を申立てたが、当該忌避申立は知的財産裁判所に却下された。宏正自動科技会社は、確定した終局裁定(決定)に適用された知的財産案件審理法第5 1(以下、係争規定一という)及び第34条第2項 2(以下、係争規定二という)には裁判官の除斥・忌避・回避及び技術審査官に裁判官の除斥・忌避・回避の規定を準用する手続き及び実体的事項が明確に定められていないため、違憲の虞があると主張し、20133月に大法官会議による解釈を申立てるとともに、本事件に関連する2件の訴訟手続きを停止する仮処分命令を申し立てた。 

本事件の争点は二つある。 

一つ目は【係争規定一に、知的財産裁判所の技術審査官の忌避手続き及び実体的事項が明確に定められていないことにより、技術審査官を指名した裁判官が当該技術審査官に対する忌避申立の審理にも関与することができ、しかも技術審査官は当該行政訴訟事件に相互に関連する民事、刑事訴訟手続きに関与したことがあっても、自ら回避する必要がない。これは、憲法第23条に規定する法律の留保及び法律の明確性の原則に抵触するか否か】である。 

二つ目は【係争規定二に、知的財産民事又は刑事訴訟に関与したことがある知的財産裁判所の裁判官は、当該訴訟事件に関連する知的財産行政訴訟事件の審判に関与できると規定されていることにより、技術審査官にも係争規定二を準用し行政訴訟法第193号の規定を適用しないとしたことは、申立人の訴訟権を過度に侵害し、憲法第23条の比例原則に符合せず、人民の訴訟権を保障する趣旨に反する虞があるか否か】である。 

司法院大法官は201829日に第1472回会議を開き、知的財産裁判所の裁判官及び技術審査官の忌避申立事件について、釈字第761号解釈を作成した。解釈文では、係争規定一は、当該法律において各裁判に関与した裁判官の回避に関する規定を準用するという形を採っているため、法律の留保の原則の要件を既に満たしているとの解釈が示された。 

さらに、技術審査官を指名した裁判官が技術審査官の忌避申立事件の審理に関与できることは、裁判官の回避問題に属するため、行政訴訟法第19条及び民事訴訟法の裁判官忌回避規定を準用する第20条を適用すべきであるが、技術審査官の忌避申立事件の審理は、行政訴訟法第19条に規定する裁判官の回避事由に該当しないため、裁判官は自ら回避する必要はなく、したがって、係争規定一は法律の明確性の原則に抵触しないとの解釈が示された。 

係争規定二について、解釈文では「知的財産裁判所が管轄する事件は高度な専門性及び特殊性を有している。そのことにより知的財産事件の判決に相違が生じるのを避け、裁判所の判決における見解の一貫性を維持するため、知的財産民事又は刑事訴訟の担当裁判官は当該訴訟事件に関連する知的財産行政訴訟の審判に関与することができ、回避する必要はないと規定している。また、この規定は、関連する異なる審判制度の事件に適用するのであって、同一事件についての人民の審級の利益には及ばず、公正な裁判とは無関係であり、憲法の公平な裁判の要件に違反しないため、司法院はそれを尊重すべきである。したがって、係争規定二は、憲法の訴訟権保障の趣旨に抵触しない。また、裁判官が回避する必要がないならば、単に意見を提供するために訴訟手続きに関与する技術審査官も回避する必要はなく、憲法の訴訟権保障の趣旨にも抵触しないはずである。」と述べられている。 

また、申立人が申立てた仮処分の部分について、解釈文では、「本事件の解釈は既に出され、しかも申立人の本事件に関連する訴訟でも申立人に有利な判決が下されており、仮処分命令を出す必要性はなくなったため、その仮処分命令の申立は却下する。」とされた。 

ただし、大法官のなかには、その解釈文に対し異なる見解を持ち、申立人が知的財産案件審理法に「専利事件の民事訴訟に関与したことがある技術審査官はその後の同一専利事件の行政訴訟を自ら回避すべきである」、「技術審査官を指名した裁判官は、技術審査官の忌避申立事件を審理するとき、自ら回避すべきである」ことを規定していないのは、違憲であると主張したことについて、解釈文では、単に法律に関連規定がないため回避する必要はないとの簡単な解釈で的外れな回答をして、申立人の質問に対し実質的な回答をしていない、と指摘する者もいる。また、大法官が、訴訟判決が既に出たことを理由として、申立てから5年近く経過した時点で、申立人の仮処分命令の申立を却下したことについて、一部の学者からは、この却下が正当な手続きによるものなのか(今まで、大法官が処理した仮処分命令申立の解釈は11件あったが、そのうち仮処分が認められたのは僅かに1件で、その1件は立法委員(国会議員)が申立てたものである)、及び保全制度の適時性の趣旨にかなっているのかさらに検討する必要があるとの意見があがっている。 



1  知的財産案件審理法第5条「技術審査官の忌避は、それが関与する裁判種類に応じて、それぞれ民事訴訟法、刑事訴訟法、行政訴訟法の裁判官の除斥・忌避・回避に関する規定を準用する。」

2  知的財産案件審理法第34条第2項「知的財産民事訴訟又は知的財産刑事訴訟を担当した裁判官は、当該訴訟事件に関連する知的財産行政訴訟の審判に関与することができ、行政訴訟法第19条第3号の規定を適用しない。」

3  行政訴訟法第19条「裁判官は、次の各号のいずれかに該当するときは、自ら回避しなければならず、職務を執行することはできない。1、民事訴訟法第32条第1号から第6号までのいずれかに該当するとき。2、中央又は地方の政府機関において当該訴訟事件に係る行政処分又は訴願に対する決定に関与したことがあるとき。3、当該訴訟事件に関連する民事裁判、刑事裁判に関与したことがあるとき。4、当該訴訟事件に関連する公務員懲戒事件の議決に関与したことがあるとき。5、当該訴訟事件に関連する前審に関与したことがあるとき。6、当該訴訟事件に関連する再審前の裁判に関与したことがあるとき。但し、その回避は1回に限る。」 

4  中国語版の解釈文全文については下記のウェブサイトを参照http://www.lawbank.com.tw/news/NewsContent.aspx?nid=150069.00

 

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