大立光電
営業秘密の侵害で15億元の賠償金を獲得
2017年12月初旬、台湾知的財産裁判所は、102(2013)年度民営訴字第6号判決書により、先進光電科技株式会社(以下「先進光」という)及びその他6名の被告人に対し大立光電株式会社(以下「大立光」という)の営業秘密を侵害したとして、大立光に約15億2千万元余りの賠償金を連帯して支払うよう命じる判決を下した。この事件は先進光に極めて大きな影響を与え、判決の翌日、先進光の株価は制限値幅の下限まで下落した。そのうえ、先進光内部の決議により進行中の現金による増資計画が中止となり、既に集めていた資金が無条件で株主に返還されることとなった。
原告の大立光は、エンジニアとして働いていた元従業員4名が2011年5月から6月にかけて被告である先進光に転職する際、原告の7つの主要な営業秘密技術を持ち出して被告の先進光に移り、その後、先進光が当該営業秘密技術からレンズ自動製造プロセスを開発し、さらに2012年4月にそのうちの一部技術について知的財産局に実用新案登録出願して実用新案権(実用新案第M438320号「點膠針頭結構(ディスペンシングニードル構造)」及び実用新案第M438469号「遮光片送料機構(遮光シート供給装置)」)を取得したことによって、原告の営業秘密の内容が一般公衆に知られてしまったことは、原告の著作権及び営業秘密の侵害であると主張して、訴訟を提起した。
原告の大立光は被告の先進光及びその代表者、元総経理、エンジニアの元従業員4名に対して侵害の停止と、上記2つの考案に係る実用新案登録を受ける権利及びその実用新案権のいずれも原告が有することの確認、並びに、被告らに対し連帯して15億2千万元余りの賠償金を支払うことを求めた。
裁判所は審理した後、2015年に、原告の主張する7つの主要技術は原告が自ら研究開発した営業秘密であると認定し、そのうち被告らの窃取行為と認定できなかった「膠水儲存裝置(接着剤貯留装置)」を除くその他の技術内容については、被告らに原告の著作権及び営業秘密に対する侵害行為があったとの中間判決を下した。
その後、裁判所が双方に和解勧告をしたものの合意に至らなかったため、裁判所は2017年12月6日に、上述した「膠水儲存裝置(接着剤貯留装置)」を除いて、侵害の停止と2つの実用新案登録を受ける権利及びその実用新案権が原告の有するものであることの確認を求めた原告の請求を全て認める終局判決を下した。
また、損害賠償額の計算方法については、判決理由に次のように示されている。原告は本件の営業秘密の技術を研究開発するために、今迄に総額6億元余りの研究開発費を投じた。営業秘密は、その秘密性がいったん喪失してしまうと、当該営業秘密の所有者がもともと単独で当該秘密情報を享有し、且つ使用できていた優位な地位を失ってしまう。そのうえ、当該秘密情報がその後どのように拡散され又は使用されるか、当該営業秘密の所有者は完全にコントロールしたり防止したりすることができず、営業秘密の所有者が当該営業秘密を研究開発するために費やした時間、労力がすべて台無しとなる。つまり、第三者が相当の対価を支払うことなく、不正な方法で秘密情報を取得して無断で他人が努力を集積して得た研究開発の成果を利用して利益を得る行為は、営業秘密の所有者の利益を侵害し、損害を与えるものである。原告のプラスチックレンズ業界における高い市場占有率と同業他社よりもはるかに高い利益を得ているなどの点から、係争営業秘密が原告にもたらす巨額の経済価値はすでに原告の主張した研究開発費を上回っていることが認められる。加えて被告らの侵害行為は故意によるものであり且つ情状が重大であるため、原告は本来営業秘密法第13条第2項の規定により、研究開発で支出した6億元余りの3倍、即ち18億元余りの懲罰的損害賠償額を請求することができるが、現在原告が請求した賠償金は上述した金額を超えない15億2千万元余りであるため、原告が被告らに対して請求した賠償金額がすべて認められた。
判決が下された翌日、被告である先進光の株価は制限値幅の下限まで下落した。しかも、15億2千万元余りという賠償額は、先進光の総資産額10億3千万元の1.5倍にも達するものである。先進光は上訴する考えを示しているが、この事件が台湾の光学産業と知的財産業界に与えた衝撃は非常に大きい。
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