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特許権侵害紛争事件の審理に関する 法律
適用の若干問題の最高人民法院の解釈(二)

 

中華人民共和国

最高人民法院審判委員会

1676回会議にて採択

2016321日公布

201641日より施行

法釈[20161

全文31

 特許権侵害紛争事件を正確に審理するため、「中華人民共和国専利法」、「中華人民共和国不法行為法」、「中華人民共和国民事訴訟法」等関係法律の規定に基づき、審判実践と結合してこの解釈を制定する。

1

 権利要求書に記載されている権利要求が2項以上の場合、権利者は起訴状の中に起訴に依拠され、訴えられた侵害者がその特許権を侵害する権利要求が記載されていなければならない。起訴状に記載されていない又は記載が明瞭でない場合、人民法院は権利者に明確に記載するよう要求しなければならない。釈明されたあと、権利者がやはり明確にさせない場合、人民法院は裁定で起訴を却下することができる。

2

 権利者が特許権侵害訴訟中に主張する権利要求が特許審判委員会により無効と宣告された場合、特許権侵害紛争案件を審理する人民法院は裁定で権利者が当該無効の権利要求に基づく起訴を却下することができる。

2 上記権利要求が無効であると宣告された決定は効力を生ずる行政判決によって取り消されたことを証明する証拠があるとき、権利者は別に起訴を行うことができる。

3 特許権者が別に起訴を行ったとき、訴訟時効の期間は本条第2項にいう行政判決書が送達された日より起算する。

3

 明らかに特許法第26条第3項、第4項に違反して明細書が権利要求の解釈に用いることができなくなり、かつ本解釈第4条に規定する情況に属さず、特許権が従って無効宣告を請求された場合、特許権侵害紛争案件を審理する人民法院は一般に訴訟の中止を裁定しなければならない。合理的期限内に特許権の無効宣告を請求されなかったとき、人民法院は権利要求の記載に基づいて特許権の保護範囲を確定することができる。

4

 権利要求書、明細書及び付属図面中の語法、文字、句読点、図形、符号等にあいまいさが存在するが、しかし、この分野に普通の技術者が権利要求書、明細書及び付属図面の閲読を通じてただ一つの理解を得ることができる場合、人民法院は当該唯一の理解に基づいて認定しなければならない。

5

 人民法院が特許権の保護範囲を確定するとき、独立権利要求(独立請求項)の序言部分、特徴部分及び従属権利要求(従属請求項)の引用部分、限定部分に記載されている技術特徴は共に限定作用がある。

6

 人民法院は関わる案件の特許と分割出願関係にあるその他の特許及びその特許審査ファイル、効力を生ずる特許権付与権利確定裁判文書を運用して関わる案件の特許の権利要求を解釈することができる。

2 特許審査ファイルとは、特許審査、審判、無効手続中特許出願人又は特許権者が提出した書面材料、国務院特許行政部門及びその特許審判委員会の制作した審査意見通知書、インタビューの記録、口頭審理記録、効力を生ずる特許審判請求審査決定書及び特許権無効宣告審査請求決定書等を含む。

7

 侵害と訴えられた技術方案は閉鎖式組成物の権利要求の全部技術特徴のベースにその他の技術特徴を加えた場合、人民法院は侵害と訴えられた技術方案が特許権の保護範囲に入らないと認定しなければならない。しかし、当該増加した技術的特徴は不可避的な常規数量の不純物は除かれる。

2 前項にいう閉鎖式組成物の権利要求とは一般的に漢方薬組成物の権利要求を含まない。

8

 効能性特徴とは構造、成分、工程、条件又はその間の関係等を、それが発明創造の中に起こっている効能又は効果を通じて限定的技術特徴を行うことをいう。但し、この分野の普通の技術者が単に権利要求を閲読するだけで直ちに上記効能又は効果の具体的実施方式を直接、明確に確定的に実現する実施方式を除く。

2 明細書及び付属図面に記載されている前項にいう効能又は効果に不可欠の技術特徴と比べれば、侵害と訴えられた技術方案の相応する技術特徴は基本的に同じ手段で、同一の効能を実現して同一の効果達成し、かつこの分野の普通技術者が侵害行為発生時と訴えられたとき、創造的労働をを経る必要がなくても連想できる場合、人民法院は当該相応する技術特徴と効能性特徴とが同一又は均等と認定しなければならない。

9

 侵害と訴えられた技術方案が権利要求中環境特徴に限定された使用環境に適用できない場合、人民法院は侵害と訴えられた技術方案が特許権の保護範囲に入らないと認定しなければならない。

10

 権利要求中調製方法をもって産品を定義する技術的特徴に対して侵害と訴えられた侵害産品の調製方法がそれと同じでなく、均等視できない場合、人民法院は侵害と訴えられた技術方案が特許権の保護範囲に入らないと認定しなければならない。

11

 方法の権利要求に技術工程の先後順を明確に記載されていないが、この分野の普通の技術者が権利要求、明細書及び付属図面を閲読したあと、当該技術工程が特定の順序に従って実施すべきであると直接、明確に認めた場合、人民法院は当該工程の順序は特許権の保護範囲に対して限定的作用を有すると認定しなければならない。

12

 権利要求が「少なくとも」、「超過しない(越えない)」等用語を採用して数値特徴に対し定義を行い、かつ、この分野の普通技術者が権利要求書、明細書及び付属図面を閲読したあと、特許技術方案が特に当該用語の技術特徴に対する限定作用を強調していると認めた場合、権利者がそれと同じでない数値特徴は均等特徴に属すると主張した場合、人民法院は支持しない。

13

 権利者は、特許出願人、特許権者が特許権付与権利確定の手続き中、権利要求書、明細書及び付属書面に対する限縮的修正又は陳述を明確に否定されたことを証明した場合、人民法院は当該修正又は陳述は技術方案の放棄に導いていないと認定しなければならない。

14

 人民法院は一般消費者が意匠に対して有する知識水準と認知能力を認定するとき、一般に考慮すべき事は訴えられた侵害行為が発生したときに、権利を付与された意匠の所属する同一又は類似する種類の産品のデザイン空間を考慮しなければならない。デザイン空間が比較的に大きい場合、人民法院は一般消費者が通常異なるデザインの間の比較的小さい区別に注意することは容易ではないと認定することができる。デザイン空間が比較的に小さい場合、人民法院は一般消費者が通常より容易に異なるデザインの間の比較的小さい区別に注意すると認定することができる。

15

 組物の意匠特許に関し、侵害と訴えられた意匠がその一つの意匠と同一又は類似である場合、人民法院は侵害と訴えられた意匠は特許権の保護範囲に入ると認定しなければならない。

16

 組立関係に唯一の組物の意匠特許に対し、侵害と訴えられたデザインがその組立状態の下における意匠と同一又は類似している場合、人民法院は侵害と訴えられたデザインが特許権の保護範囲に入ると認定しなければならない。

2 各部材の間に組立関係がなく又は組立関係が唯一でない組物の意匠に関し、侵害と訴えられたデザインが全部単一部材のデザインと均しく同じ又は類似である場合、人民法院は侵害と訴えられたデザインが特許権の保護範囲に入ると認定しなければならない。侵害と訴えられたデザインに単一部材を欠く意匠又はそれと同一でなく類似でもない場合、人民法院は侵害と訴えられたデザインが特許権の保護範囲に入らないと認定しなければならない。

17

 変化状態の産品の意匠特許に関し、侵害と訴えられたデザインが変化状態図で示す各種使用状態下のデザインと均しく同じ又は類似である場合、人民法院は侵害と訴えられたデザインが特許権の保護範囲に入ると認定しなければならない。侵害と訴えられたデザインに一種の使用状態下のデザインを欠く又はそれと同じでなく類似もない場合、人民法院は侵害と訴えられたデザインが特許権の保護範囲に入らないと認定しなければならない。

18

 権利者が特許法第13条に基づいて発明特許出願の公開日から権利付与公告日までの期間に、当該発明を実施する単位又は個人が適当額の費用の支払いを訴えた場合、人民法院は関連する特許実施許諾費を参照して合理的に確定することができる。

2 発明特許出願が公開したとき、出願人の保護請求範囲が発明特許付与公告時の特許権保護範囲と一致でなく、訴えられた技術方案は均しく上記二種の範囲に入る場合、人民法院は被告が前項にいう期間内に当該発明を実施したと認定しなければならず、訴えられた技術方案が単にその中の一種の範囲に入る場合、人民法院は被告が前項にいう期間内に当該発明を実施していないと認定しなければならない。

3 発明特許付与公告後、特許権者の許諾なしに、生産経営の目的のために本条第1項にいう期間内に既に他人が製造、販売、輸入の産品を使用、許諾販売、販売し、かつ、当該他人が特許法第13条に規定する適当額の費用を既に支払い又は書面で支払いを承諾した場合、権利者が上記使用許諾販売、販売行為の特許権侵害の主張に対して人民法院は支持しない。

19

産品売買契約が法によって成立したとき、人民法院は特許法第11条に規定する販売に属すると認定しなければならない。

20

特許方法に従って直接獲得した産品を一歩進んで加工、処理して得た後続産品に対して再加工、処理を行った場合、人民法院は特許法第11条に規定する「当該特許方法に従って直接獲得した産品を使用する」に属さないと認定しなければならない。

21

関係産品は専ら特許実施に用いられる材料、設備、部品、中間物等を明らかに知りながら、特許権者の許可なしに、生産経営目的のため、当該産品を他人に提供して特許権侵害の行為を実施したとき、権利者は当該提供者の行為は不法行為法第9条に規定する他人を幇助して不法行為を実施すると主張する場合、人民法院は支持しなければならない。

2 関係産品、方法が特許権を付与されたことを明らかに知りながら、特許権者の許諾なしに、生産経営の目的のため、積極的に他人を誘導して特許権侵害行為を実施させたとき、権利者は当該誘導者の行為は不法行為法第9条に規定する他人を教唆して不法行為を実施させると主張する場合、人民法院は支持しなければならない。

22

訴えられた侵害者が主張する現有技術の抗弁又は現有デザインの抗弁に対し、人民法院は特許出願日に施行されている特許法に基づいて現有技術又は現有デザインの定義を定めなければならない。

23

 侵害と訴えられた技術方案又は意匠が先に関わっている案件の特許権の保護範囲に入り、訴えられた侵害者がその技術方案又は意匠が特許権を付与されたことを理由として関わる案件の特許権を侵害しないと抗弁した場合、人民法院は支持しない。

24

 薦める国家、業種又は地方の標準には関わる必要特許の情報を明示し、訴えられた侵害者は当該標準の実施は特許権者の許可を必要ないとの理由で当該特許権を侵害していないと抗弁した場合、人民法院は一般に支持しない。

2 薦める国家、業種又は地方の標準には関わる必要特許の情報を明示し、特許権者、訴えられた侵害者が当該特許の実施許諾の条件を協議するとき、特許権者は故意に彼が標準制定中承諾した公平、合理、無差別の許可義務に違反して特許実施許諾契約に達成できないことになり、かつ、訴えられた侵害者が協議中、明っきりした過失がない場合、権利者が標準実施行為の停止を請求する主張に対して人民法院は一般に支持しない。

3 本条第2項にいう実施許諾条件について特許権者、訴えられた侵害者によって協議して確定しなければならない。十分協議を経てもやはり一致達成できないとき、人民法院に確定を請求することができる。人民法院は上記実施許諾条件を確定するとき、公平、合理、無差別の原則に基づいて特許の創造革新程度及びその標準における作用、標準に所属する技術分野、標準の性質、標準実施の範囲及び関連する許諾条件等要素を総合的に考慮しなければならない。

4 法律、行政法規には標準実施中の特許に対して別に規定がある場合は、その規定に従う。

25

 生産経営目的のため、特許権者の許諾を経ずに製造かつ売却した特許侵害産品を知らず、かつ当該産品の合法的源泉を挙証して証明した場合、権利者の上記使用、許諾販売、販売行為の停止を請求する主張に対して人民法院は支持しなければならない。ただし、訴えられた侵害産品の使用者は既に当該産品の合理的対価を支払ったことを挙証して証明した場合は除かれる。

2 本条第1項にいう知らずとは実在知らないそして知るべきでないことをいう。

3 本条第1項にいう合法的源泉とは、合法的な販売チャネル、通常の売買契約等正常な商業方式で取得した産品をいう。合法的源泉、使用者、許諾販売者又は販売者に対し取引習慣に合致する関係証拠を提供しなければならない。

26

被告が特許権に対する侵害を構成していて権利者がその侵害行為の停止判決を請求した場合、人民法院は支持しなければならない。但し国の利益、公共利益の考量に基き、人民法院は判決で被告人に被訴行為の停止を命じる事なく、相応する合理的費用の支払いを命じることができる。

27

 権利者が侵害で受けた実在の損失が確定しがたい場合、人民法院は特許法第65条第1項の規定に従い、権利者に対して侵害者が侵害によって得た利益について挙証を行うよう要求しなければならない。権利者は既に侵害者の得た利益の初歩的証拠を提供し、特許侵害行為と関係する帳簿、資料は主に侵害者が掌握している情況の下では、人民法院は侵害者に当該帳簿、資料の提供を命じることができる。侵害者が正当な理由なしに提供せず、若しくは贋の帳簿、資料を提供した場合、人民法院は権利者の主張及び提供する証拠に基づいて侵害者が侵害によって得た利益を認定することができる。

28

 権利者、侵害者が法により特許権侵害の賠償金額又は賠償計算方法を約定し、しかも特許権侵害訴訟中に、当該約定に従って賠償金額を確定したいと主張する場合、人民法院は支持しなければならない。

29

 特許権無効宣告の決定を作成した後、当事者は当該決定に基づき、法により再審を請求して特許権無効宣告前人民法院が作成しているが未だ執行していない特許権侵害の判決、調停書の取消を請求した場合、人民法院は再審審査の中止を裁定し、かつ、原判決、調停書の執行の中止を裁定することができる。

2 特許権者は人民法院に十分、有効の担保を提供し、前項にいう判決、調停書の執行継続を請求した場合、人民法院は執行を継続しなければならない。侵害者が人民法院に十分、有効な反担保を提供して執行の中止を請求したとき、人民法院は許可しなければならない。人民法院の効力を生じる裁判は特許権無効宣告の決定を取り消さなかった場合、特許権者は執行の継続により相手方に与えた損失を賠償しなければならない。特許権無効宣告の決定が人民法院の効力を生じる裁判によって取り消された場合、人民法院は前項にいう判決、調停書に基づいて直接上記反担保財産を執行することができる。

30

 法定期限内に特許権無効宣告の決定に対して人民法院に起訴せず又は起訴後効力を生じる裁判は当該決定を取り消さないで当事者は当該決定に従い、法により再審を請求し、特許権無効宣告前、人民法院が作成しているがまだ執行していない特許侵害の判決、調停書の取消を請求した場合、人民法院は再審しなければならない。当事者は当該決定に従い、法により特許権無効宣告前、人民法院が作成しているがまだ執行していない特許侵害の判決書、調停書の執行終結を請求する場合、人民法院は執行の終結を裁定しなければならない。

31

 この解釈は201641日より施行する。最高人民法院は以前発布した関連司法解釈と本解釈が一致でないときは、この解釈を基準とする。

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