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混同誤認の虞で「御茶園」が「御茶醸」に勝訴

 原告の維他露食品株式会社(VITALON FOODS、以下「維他露」と称す)は長年にわたり「御茶園」シリーズの商標(下表一、二)を出願し、2001年から使用を開始して、積極的に係争シリーズ商標の多角化を図ってきた。係争商標はかつて確定判決において著名商標であると認定されたことがある(知的財産裁判所99年(西暦2010年、以下同じ)度行商訴第242号及び最高行政裁判所100年(西暦2011年、以下同じ)度上字第1252号判決)。
 
 被告の佳格食品株式会社(クエーカー、以下「佳格」と称す)は2006728日に、商標法施行細則第13条第30類の商品計60品を指定して「御茶醸」の商標登録出願を行った。知的財産局は200727日に第1256762号商標出願案件として登録査定を行った。その期間に原告の維他露は、被告の佳格の「御茶醸」商標に対し無効審判を提起したが、被告は行政訴訟中に二度の減縮を申請し、混同誤認を生じさせる虞のある商品を削除し、現在係争商標の指定商品は「醤油、調味料」の2品のみ保留した。被告は、知的財産局がその商標登録の取消の決定を下した後も、依然として「御茶醸」商標を醤油商品に使用し、市場に出荷し続けた。
◆本事件の争点は以下の通り:
1.原告の係争商標は著名商標かどうか。
2.被告が使用する被告商標「御茶」は、係争商標「御茶園」の識別性又は信用を希釈化させるものであるか。
3.被告は、商標法第68条に規定の係争商標権を侵害する虞があることを明らかに知りながら、商品又は役務とまだ結合していないラベル、タグ、包装容器、又は役務と関連のある物品を製造し、所持したのか。
4.被告の醤油商品における被告商標の使用は、原告の飲食サービスにおける係争商標の使用とは高い類似性があり、消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか。
5.被告は、公平交易法第20条第1項第1号、第24条、第30条の規定に違反しているか。
◆裁判所の判決
1.原告の係争商標は著名商標である。
1)原告は2001年から「御茶園」等の茶飲料のシリーズ商品の販売を開始した。最も早いものは2001216日に商標登録出願し、同年1016日に公告された登録第961991号「御茶園」商標で、最も遅いものは、200541日に出願し、同年1216日に公告された登録第1187144号「御茶園毎朝」商標である。一方、被告の商標は2006728日に出願し、200741日に公告された。従って、本件において係争商標が著名商標であるかを判断し、被告商標の商標権侵害を認定するためには2006728日より前の時点に基づいて判断しなければならない。
 (2)知的財産裁判所は、当裁判所99年度行商訴字第242号の商標無効審判資料を閲覧し、該事件の審理時に原告が証拠として提出した広告量の統計、広告資料、市場占有率、理想ブランドの調査などは事実と合っていると認める。従って引用された諸商標、特に、その核心部分を構成する「御茶園」の3文字は、係争商標の2006728日登録出願前に、原告が既に多くの資金を投じて宣伝を行い、持続的且つ集中的に販促行為を行い、新聞雑誌にも取り上げられた。また茶飲料市場において相当な占有率を有しており、既に台湾消費者の間で理想ブランド第2位となっていた。従って、係争商標が茶飲料商品において表彰する信用及び品質は、台湾の関連事業者又は消費者に既に熟知され著名の程度に達しているため、著名商標に属すべきことは、知的財産裁判所99年度行商訴第242号及び最高行政裁判所100年度上字第1252号の判決でも認められている。
2.被告が使用する「御茶」商標は著名な係争商標「御茶園」の識別性又は信用を希釈化させるものである。
(1)著名商標の表す識別性及び信用が既に関連事業者又は消費者に広く認識されていることから、他人が意図的に使用する、又は意図的ではないが著名商標の著名性により利益を得るような不公平な状況が生じるのを防止するため、著名商標の保護は、商品又は役務の類否を重点としない。しかし、過剰な保護を避けるために、関連する公衆に混同誤認を生じさせる虞がある、又は著名な商標もしくは標章の識別性又は信用を希釈化させる虞があることが要件となる。
(2)係争の「御茶園」商標は、原告が長年に亘り宣伝販売を行ってきた。それにより添付表一の係争商標は、2006528日被告商標が登録出願を行ったときには、既に関連事業者や消費者に広く認識され、著名商標に属していた。従って、原告が添付表一に示す商標は、既に独特のブランド価値と精神を築きあげており、一般消費者に単一出所であると連想させることを表している。
 (3)添付表一の係争商標は、茶飲料においてのみ著名商標であるが、茶飲料と被告商標が使用商品として指定する醤油はいずれも飲食に関しており、関連消費者の重複も多い。従って、添付表一の係争商標は、茶飲料の関連消費者の間で既に著名商標であるため、被告商標と添付表一の係争商標の類似の程度が、核心部分が僅か1文字の差であるということは、係争商標が使用を指定する飲食商品の関連消費者にとって、2つの商標は出所が同一であるシリーズ商品であると混同誤認する、又は2つの商標の使用者の間で関連企業、使用許諾関係、加盟関係若しくはその他類似の関係があると誤認するものであるため、商標法第70条第1号の規定を適用すべきである。
 (4)被告は、被告商標が有名なメーカーの商標であり、多くは「得意的一天」と併用していると主張したが、商標法第70条第1号の規定は、意図的でなくても、客観的に消費者に混同誤認を生じさせる虞をもたらし、著名商標の著名性で利益を不当に得た可能性がある場合にも適用する。
 (5)実際の商品の醤油瓶の外包装をみると、縦に書かれた「御茶醸」の文字は商品の最も目立つ位置にあり、「得意的一天」は、「御茶醸」の上に、比較的小さく目立たない文字で書かれてある。従って、被告商標は「得意的一天」と併用しているため原告の添付表一の係争商標とは混同誤認を生じないという被告の主張は、採るに足りない。
 (6)商標法第70条第1号に定められた著名商標の識別性の希釈化とは、著名商標中の文字を自分の商標として営業主体又は出所を表し、著名商標使用対象の単一性を複数に希釈される状況を指し、著名商標を同一又は類似の商品又は役務に使用することを要件とするのではない。従って、被告の会社は実際に「茶飲料業」に従事するか否か、或いは後で被告商標の使用範囲を減縮したということがあっても、いずれも被告が「御茶」を商標の特徴部分として使用し、原告の著名商標「御茶園」とそれが表す商品又は役務の間の関連性を希薄化させ、「御茶園」商標の識別性を損なわせたと認定することを妨げない。
3.被告は、商標法第68条に規定の係争商標権を侵害する虞があることを明らかに知りながら、商品又は役務と結合していないラベル、タグ、包装容器、又は役務と関連のある物品を製造し、所持したのではない。
  原告の「御茶園」係争商標は、被告の「御茶醸」商標が登録出願した2006728日には既に著名商標であったが、原告の添付表二の商標はいずれも被告の商標出願日よりも遅く、被告は出願時に原告の添付表二の商標の存在を知っていたとは認定し難いので、この部分について被告が故意に係争商標を侵害したとは認定し難い。従って、被告には、商標法第68条に規定の係争商標権を侵害する虞があることを明らかに知りながら、商品又は役務と結合していないラベル、タグ、包装容器、又は役務と関連のある物品を製造し、所持した行為がない。
4.被告が「御茶醸」商標を醤油商品に使用する行為は、消費者に混同誤認を生じさせる虞がある。
 理由は前述の2.(3)の説明を参照のこと。
5.被告は公平交易法第20条第1項第1号、第24条、第30条の規定に違反している。
  原告の「御茶園」は著名商標であり、被告が類似の「御茶醸」を同区分の商品に使用する行為は、消費者に混同誤認を生じさせる虞がある。被告は、添付表一に示された著名商標中の文字と同じ「御茶」をその商標名称の特徴部分とし、添付表一に示された商標の識別性を希釈化させたため、商標権を侵害したものとみなす。また、本件の口頭弁論が終結した2013129日まで、被告は「御茶醸」商標をその商標名称の特徴部分として依然継続して使用しているので、商標権に対する侵害は現在も依然として存在している。被告に、被告の商標中の「御茶」の特徴部分の使用を禁止しなければ、被告は「御茶醸」の商標名称を商標として使用し続け、添付表一に示された商標の識別性は引き続き希釈化され、今後も侵害される可能性があり、被告に対し被告の商標使用を禁止する必要がある。
  知的財産裁判所は被告に対し、原告の添付表一に示された「御茶園」シリーズ商標と同一又は類似の文字もしくは図形を、醤油商品又はその他類似の調味料商品の包装容器又はそれらを提供する役務と関連の物品に使用したり、又は前述の商品を所持、陳列、販売、輸出若しくは輸入をしてはならないとする判決を下す。また、原告が添付表一に示した「御茶園」シリーズ商標と同一又は類似の文字もしくは図形を、醤油又はその他類似の調味料商品又は役務と関連する全ての商業文書もしくは広告に使用したり、又はデジタル映像音声、電子媒体、インターネット又はその他の媒体方式でこれを行ってはならないとする判決を下す。
 
 
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