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台湾知的財産裁判所が「大吉嶺」(ダージリン)商標争議において、インド紅茶局に勝訴判決

インドのダージリンを原産地とする「ダージリン紅茶」は中国のキーマン(祁門)、インドのアッサム、セイロンのウバと並び「世界四大著名紅茶」と公認されている。その摘み方や選別基準は非常に厳格で、インド紅茶局(Tea Board of India)では茶葉の品質を維持するために専門的な規則が定められていて、認証を通過して初めて「DARJEELING」標章を表示することができる。

DARJEELING」はブリタニカ百科事典で著名な地名とされるほか、オーストラリア、カナダ、インド、アメリカ及びイギリスにおいて証明商標として登録されていて、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク及び欧州連合において団体標章として登録されている。なお「DARJEELING」は商標としてロシア、カナダ及び日本でも登録されており、インドでは文字及び図形の地理表示登録及び著作権を取得している。「DARJEELING」茶葉は非常に大量に輸出されていて、2000年の一年間に850万キロも輸出し、輸出総金額は三千万ドルも及んだ。

しかし、フランス商DELTA LINGERIE(以下「DELTA社」と略す)は「DARJEELING」を文字商標として、2003717日に第25類のシャツ、半ズボン、ドレス、下着、靴下などの商品を指定して出願第092044241号商標として出願し、審査及び登録許可を経て、200471日に第01109052号商標として登録された(以下、係争商標と略す)。

上記事情を知ったインド紅茶局は「DARJEELING」紅茶の商標権益を守るため、台湾知的財産局に対する異議申立てで一度係争商標の登録の取消処分を勝ち得た。ところが、DELTA社が取消処分に不服して訴願した結果、訴願会は「DARJEELING」紅茶の著名性を認めず、著名標章とは認定できないという理由で知的財産局の元処分を取り消し、適切な再処分を命じると決定した。訴願決定に不服したインド紅茶局は当所に依頼して知的財産裁判所に行政訴訟を提起して、ついに勝訴判決を勝ち得た。

本件の争点は概ね以下の2点、

1.      本件の引用商標である「DARJEELING」(以下、「引用商標」と略す)は果たして著名商標であるか。引用商標は係争商標と同一・類似商標であるか。また、係争商標は引用商標の識別力若しくは信用名誉を減損する虞があり、台湾商標法第23条第1項第12号後半の不登録事由に該当するか。

2.      異議を申し立てた際、申立人は台湾商標法第23条第1項第8号、第9号及び第11号の不登録事由の該当をも主張したが、処分官庁は当該部分に対する判断を示さなかった。従って本件はこの三号の不登録事由に該当するか。

裁判所の判断は、

1.      両方の商標を高度類似商標と認定した。単なる英字大文字の「DARJEELING」で構成された係争商標と、申立人に引用された産地証明標章の「DARJEELING」、同じく単なる英字大文字のみで構成された「DARJEELING」商標や手に一芯二葉を持つインド女性図及び英字大文字で構成された「DARJEELING」など諸引用商標とは消費者に極めて強い関連性のあるイメージを与える。しかも両方商標は外観・称呼においていずれも関連消費者が購買時に混同誤認する虞があるだけでなく、商標の希釈化の認定要件に要求される類似度すら超えるほど非常に類似している。

2.      引用商標が著名商標である。原告の提出した証拠によると、インド紅茶局は1953年の「茶葉法」に基いて成立したものである。そしてインドで生産されている諸種類の茶葉の中で、西ベンガル州北部のヒマラヤ山脈の麓に生産された「DARJEELING」茶葉(台湾では「大吉嶺」と訳される)が一番有名で、「紅茶のシャンパン」若しくは「紅茶のブルーマウンテン」とも誉め称えられている。なお原告の提出した証拠によると、引用された産地証明標章の「DARJEELING」を守るため、原告は当該文字をロシア、カナダ及び日本において商標として登録している上、オーストラリア、カナダ、インド、アメリカ及びイギリスにおいて証明商標として登録していると共に、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、ドイツ及び日本において団体標章として登録している。しかも大量な茶葉の輸出販売証明、国会の立法による保護、全世界に流通している宣伝品・広告及び台湾のサイトや店舗における記述など諸資料から見れば、引用された産地証明標章は台湾の関連業者や消費者に広く認識され、非常に著名な商標と認定されることができ、商標法第23条第1項第12号の保護標的になりえることと認定できる。

3.      引用された「DARJEELING」標章に使用された外国語部分はインドの有名茶葉産地で、通常に使用されている外国語単語でもなく第三者が普遍的に特定商品・役務に使用されているものでもない。従ってこの引用標章は原告に使用されている高度な識別力を有する標章と考えられる。たとえ市場上の区別が非常に明確で、競争関係のない異種類商品に指定・使用しても、客観的な角度から見れば、引用商標と高度類似する係争商標の使用は引用商標の示した単一由来の特徴若しくは集客力を弱化・希釈する可能性がある。故に係争商標の使用は引用された著名商標の識別力を減損させる虞があると認める。

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