中国は、2008年6月11日に、《国家知的財産権戦略ガイド》を通過し、今後、続けて、一系列の措置を採用し、知的財産制度を完成させる。中国の知的財産制度は既に「戦略主動期」に入った。中国の最高裁判所の知的財産権法廷、蔣志培法廷長は、将来は最良の機制で挑む、と述べた。
2008年7月10日から11日に、中国、米国、ドイツ、日本等の数十人の裁判官が、上海で知的財産権司法保護国際検討会を開催し、共同で世界の知的財産権司法保護に関連する問題を検討した。現在、中国での知的財産権司法裁判の役割は非常に重要で、著しい経済発展に伴い、大量の商標、専利、著作権の紛争が発生している。これにより、中国の知的財産裁判体系は、設立して二十数年のみであるが、知的財産裁判体系は、既に各種、目覚しい変革を遂げており、最初の知的財産権案件は、民事法廷および経済法廷により審理されたが、後に、知的財産権法廷に統一して審理されるようになった。2000年以降は、知的財産権法廷は、民事審判第三法廷に改められ、知的財産権案件の審理を担当している。
大量で複雑な知的財産権の案件に対応する為、通過したばかりの《国家知的財産権戦略ガイド》は、「知的財産権の審判体制を完成し、審判の人材配置を改善し、救済手順を簡略化する」ように明確に指示している。この前提で、中国は、民事案件、行政案件及び刑事案件を統一して受理する専門的知的財産権法廷を設置し、特許など技術に深く関連する案件を適切に集中して審理する管轄権問題を研究すると共に、知的財産権の上訴裁判所を成立させることも検討している。
知的財産権の案件は、各々、対応する民事、刑事、および行政審判法廷によって審理するので、裁判官は、審理中、異なる訴訟法を分別して適用し、異なる訴訟法の見解で審判し、成される司法理念も全く同一ではないので、知的財産の刑事および民事案件が衝突することもある。 知的財産権案件の審判および行政の執行から派生する行政案件および民事権利侵害案件も、常々内在的に相互に関連している。これは、目下の中国知的財産権の審判が対面する困難である。
知的財産権案件の専門技術の特殊性および適用法律の複雑性、ならびに知的財産権案件は、民事損害賠償、刑事犯罪、および行政訴訟等に関連する問題に係るため、知的財産権案件の審判は比較的に難しく、知的財産権の裁判官の水準も相対的に高く要求されている。
上記の問題に対し、上海浦東新區の人民裁判所は、1996年に一連の知的財産の「立体」司法保護体制を試行し始めた。これは、1995年、中米合資の上海吉列株式会社の「飛鷹」の商標が模倣に遭い、当時、浦東新區の裁判所の刑事法廷、行政法廷および知的財産権法廷の各々どれでも、「飛鷹」を模倣した登録商標の案件として受理したことからである。
刑事法廷では、該社の商標を模倣した犯罪者は、法により刑罰に処された。行政法廷では、法により工商部門が「飛鷹」を模倣販売した部門に対しての行政処罰が維持した。また、知的財産法廷は、権利侵害をした会社が吉列社に20万元の損害賠償を行う判決を下した。この案件において、刑事法廷、行政法廷は管轄範囲が限られるため、対応する知的財産の専門知識が欠乏していることを明確になった。また、三つの案件が関わるのは根本的に同じ事実であり、異なる審判の法廷による分別審理により、訴訟資源の浪費となった。こうした事から、1996年より浦東新區人民裁判所が三位一体の「立体」審判方式を導入し、知的財産権案件を審理する、即ち、知的財産にかかる民事、刑事、行政問題の同一案件は、統一して、知的財産法廷により審理する。この方式は、知的財産権学者、故鄭成思氏により、「浦東方式」と呼ばれた。
その後、「西安方式」も発展する。西安市中級人民裁判所が、2006年から、全国中級裁判所中、率先して知的財産権案件の民事、刑事、行政審判一体化の改革措置を実行し、基層裁判所による管轄の知的財産に関わる刑事、行政の一審案件を中級裁判所で審理する。知的財産に関する刑事、行政案件に対し、二名の知的財産権案件の民事審判裁判官を増員して参与させ、5人の合議法廷を組織して審理を行い、刑事、行政及び民事の知的財産権案件の審判人員が確実に相互に協議することで、法律の見解を一致させる。将来、時期が熟せば、知的財産の審判法廷によって全ての知的財産権案件を統一して審理するように、徐々に移行していく計画であり、全体として、司法資源を節約し、知的財産権案件の審査の品質を向上する目的である。
2008年6月より、武漢市中級人民裁判所も、過去の14ヶ所の基層裁判所が審理する知的財産に係る刑事、行政の一審案件を、民事案件の管轄権を部分的に有する基層裁判所である「江岸区人民裁判所」に集中して審理し、且つ知的財産権案件に関る民事、刑事及び行政案件の二審案件を中級人民裁判所の知的財産審判法廷に集中して受理するとした。こうした基層裁判所と中級裁判所の二審級における集中管轄及び一、二審の裁判所の特殊業務で、「武漢方式」を形成した。
これ以外に、目下、広東、浙江、江蘇、山東、福建等の裁判所も全て、知的財産権案件の審判の改革方式を積極的に探索、研究している。
アメリカ第三巡回上訴裁判所のJordan裁判官は、「各国家の情況が異なり、知的財産権の司法体制の改革の方向もまた異なる」と述べた。又、日本知的財産権高等裁判所の Limura裁判官は、日本の知的財産権司法制度の改革は、知的財産権訴訟検討会を通して改革方案を作成した。2002年から2004年の2年間に、17回会議を召集し、最後に国会に関係議案を提出し、ようやく日本知的財産権高等裁判所を設立するに至った、と紹介した。現在、日本の知的財産権高等裁判所は、特許庁と関連する行政案件、ならびに特許、実用新案、集積回路デザインおよびソフトウエア著作権の上訴案件の受理を責務としている。
中国大陸は、《国家知的財産権戦略ガイド》中に、知的財産権上訴裁判所の設立検討を提出し、最高院は、2008年末前に総合知的財産権法廷を設置し、知的財産権上訴裁判所の設立を検討する事に対し、具体的な実施方法を提出する予定である。