IPニュース | 知的財産裁判所

知的財産裁判所関連の新制度

知的財産裁判所は、20087月1日から正式に運営開始する。これは司法界に対する一大変革であり、将来、国内外企業が知的財産案件を処理する上での考察に影響を及ぼすだろう。新制度は、裁判官、弁護士及び当事者にとって新しい挑戦であり、4年をかけて準備した知的財産訴訟新体制が、改革の要求と目標に応えられる事を期待する。

一、知的財産裁判所の訴訟費用は外国より大幅に低く、企業にとって魅力が大きい。

知的財産裁判所所長の高秀真裁判官は、「米国などその他の国家と比較すると、台湾の訴訟費用は低い上に、知的財産裁判所の専業化および高効率の審査で、将来企業が国外まで赴いて訴訟を行う必要がなくなり、市場競争の機制の下、知的財産裁判所は、企業にとって絶対的な魅力であると信じている。」と述べた。

知的財産裁判所は、裁判の品質を向上させ、一般の裁判所が技術に関する専門的審判の経験不足の問題を解決することが主な目的であり、よって、知的財産に少々触れる案件全てを知的財産裁判所によって審理を行って、専業人材を浪費し、裁判官の負担を増やすことを望んでいるのでない。将来的に、知的財産民事争議において、技術的需要があまり高くなければ、当事者が地方裁判所で起訴する選択も可能である。もし普通裁判所が、解決できない技術的問題に直面した場合も、知的財産裁判所に技術審査官提供の協力を要請することもできる。よって、こうした知的財産裁判所は、現行の台湾司法体系に最も相応しい制度に設計されている。

二、知的財産裁判所が専利の有効性を自ら判断できる

知的財産裁判所の最大の特色のひとつは、裁判官が専利の有効性を自ら判断でき、知的財産局に差し戻して、初めから審査をする必要がないので、効率が上がる事である。

しかしながら、ある弁護士は、「当事者がこの点を利用して、専利の有効性の抗弁を絶えず提出し続け、訴訟を延期することで、商業の不当競争の手段とすることが可能である。」点について質疑を提出した。この点について、知的財産裁判所所長の高秀真裁判官は、このような問題を防止するために、裁判官は当事者両方と審理手続きを計画して、協議した後、期限後に抗弁を提出すれば、「訴訟遅延」を構成し、裁判官は直ちにその抗弁を却下できる。

これ以外にも、知的財産案件「秘密保持命令」に違反すると、刑事責任を負うが、法律条文には秘密保持の期限が規定されておらず、「秘密保持命令」が乱用され、「不定時の爆弾」と化すのを弁護士たちも危惧している。これに対し、知的財産裁判所の高所長は、「裁判官は営業秘密に遭遇した場合、先ず間接的な方法で、訴訟を処理すべきで、法廷での弁論に証拠公開が不可欠である場合のみ、秘密保持命令を発布するとし、秘密保持の対象範囲を制限することで、影響を最低限に押さえることができる。」と表明した。

三、知的財産裁判所は「権利侵害不存在確認訴訟」を承認しないほうがよい

現在、民事訴訟の類別として、給付訴訟、形成訴訟、確認訴訟を包括している。英米の法体系国家では、如何なる案件も全て、裁判所に訴訟を提起でき、よって国外企業は、知的財産案件の争議に遭遇する可能性がある場合、度々先ず裁判所に「権利侵害不存在確認訴訟」(権利の未侵害を証明するための確認訴訟)を提起し、自分が将来、競争相手に起訴されないよう確定する。しかし、台湾の現行の民事訴訟制度によると、「確認訴訟」を承認しているが、実務の発展上、当事者がそのような「権利侵害不存在確認訴訟」の提出を許可できるかどうか、観察する必要がある。

こうした「権利侵害不存在確認訴訟」により、実際には争訟性が明らかではない上に、他方の当事者も不明確であり、もし裁判所がこの種の訴訟類型を承認すると、権利侵害の疑いがある企業が、これを、未侵害を確認する担保とする虞れがあり、将来、もし具体的な争議が発生した場合、効力範囲の判決も争議を起こすだろう。

その他にも、将来、知的財産裁判所の審級は、二審までで(下表参照)、「確認訴訟」を提起できるか否か等の見解は、最高裁判所もしくは最高行政裁判所の見解により拘束を受ける。よって、実務上、こうした種類の訴訟類型を承認するかどうか、依然として終審裁判所の見解を尊重する必要がある。

訴訟性質

第一審

第二審

第三審

民事

知的財産裁判所
(獨任審理)

知的財産裁判所
(合議審理)

最高裁判所

刑事

地方裁判所

知的財産裁判所

最高裁判所

行政

知的財産裁判所

最高行政裁判所

 


四、台湾高等裁判所検察署が「知的財産分署」を成立して対応

71日より、司法院が新たに知的財産裁判所を設立したのに加え、台湾高等裁判所検察署も同時に、「知的財産分署」を設立させた。これは、「未来性、国際性、科学技術化」を目標とし、知的財産刑事案件に関する上訴、起訴等を統一処理し、同時に国際交流による協力支援を強化し、案件処理の経験を相互に交換するよう計画している。

高等裁判所検察署(高検署)は、「知的財産分署は、初期は、検察官および書記官を各4名配置し、知的財産裁判所の審判時に、法廷に赴いて公訴を執行し、判決を受け、起訴するかどうかを審査する。また、当事者が地方裁判所の一審裁判に不服として上訴、または抗告した刑事案件、および各地の検察署の知的財産権の再議案件を処理する。その他、知的財産分署は、関連部署の知的財産権の侵害案件を処理するのを支援し調整する責務も負う。」と述べた。
 知的財産分署の管轄範囲としては、「商標‧商号の偽造および模倣」「偽造、模倣した商標‧商号の貨物の販売、陳列、輸入」および「業務上または職務上の商工的秘密の漏洩等」にかかる刑法、ならびに商標法、著作権法、公平交易法等知的財産権に関する案件を含み、知的財産裁判所の管轄する類型と同じである。

五、知的財産案件の量刑参考要点改定

司法の透明度を向上し、定刑の問題を解決するため、司法院は625日に「知的財産案件量刑参考要点」を公布し、将来、裁判官が知的財産犯罪の刑度を決定する際、法による審判、独立行使審判権以外に、「量刑参考要点」も参考にできる。

「量刑参考要点」は、犯罪行為の刑度の宣告および執行すべき刑度の決定を含み、刑法において連続犯、常習犯の規定をそれぞれ削除した後、数罪併罰の定執行刑の問題が絶えず出現する。また、知的財産裁判所が刑事二審を導入し、量刑の問題に直面することも避けられないため、司法院はまず、知的財産案件の量刑参考要点を訂した。
 

発布された量刑参考要点には、比較的に具体的に、「刑の加重または減軽は、特別な情況を除いて、原則的に加減幅が15%である」ことだけで、二つ以上の罪がある場合、その執行すべき刑は、宣告されたうちで最長または最高罰金の罪刑に、その他の罪刑の合計を1030%減少して得た刑を加え、最後の執行すべき刑とする。

 

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