欧州連盟執行委員会は2008年1月30日、台湾経済部知的財産局がフィリップスの有する「追記型コンパクトディスクCD-R」の専利を、強制的にライセンスさせることに対して、公平貿易に違反すると認定したのに続き、台北高等行政裁判所は、3月13日に、國碩科技(株)が、フィリップスの所有する追記型コンパクトディスクの製造方式にかかる専利5件をライセンスにより使用したことは、商業的条件に適合してないとの判決を下し、知的財産局の敗訴とした。知的財産局のなした原処分及び訴願委員会の決定が、全て裁判所に取り下げられた。裁判所は、知的財産局に法に適した処分のやり直しを要求した。
これに対し、知的財産局の王美花局長は、双方の法律攻防の観点が一致しておらず、まだ判決書を受け取っていないため、裁判所認定の理由を見て分析し、最高行政裁判所に上訴するかどうか決定する、とした。
フィリップスは、1987年中に、追記型コンパクトディスク(CD-R)の製造方式にかかる出願を連続で行い、知的財産局は5件の発明専利を査定した。
1999年10月中に、國碩とフィリップスを代表してフィリップス、日本企業ソニー、および同じく日本企業太陽誘電の三企業が、フィリップスが有する5件の専利ライセンスを含んだ契約にサインし、國碩がこの専利を利用して光ディスクを製造することに同意し、期間を10年とした。双方は,國碩が支払うべきライセンス料を被ライセンス産品一枚に付き原価の3%、もしくは10日本円のどちらか高いほうに設定した。した。
2001年3月、國碩はフィリップスにライセンス金を一枚に付き販売価格の2%から5%に減少するよう要請したが、フィリップスは同意せず、よって國碩はライセンス未払いとなり、フィリップスは、同年4月即刻ライセンス契約を停止した。
双方が協議に至らないため、2002年7月、國碩は、知的財産局に該五項専利の「ライセンス実施」 を申請した。2004年7月、知的財産局はこれを認定したが、台湾圏内のマーケットでの需要に対する供給に制限した。
知的財産局によるこの処分の結果は、国内外の該業界に波紋を呼び、フィリップは、これに対する訴願が失敗した後、裁判所に対し前記行政処分及び訴願決定を取消す要求をする訴訟を提出した。
専利法第76条第1項の本文規定によると、国家の緊急状況または公益促進のための非営利的な使用、もしくは申請者が「合理的な商業条件」によって、相当期間内にライセンス授与に同意できない場合、専利責務機関は、申請による該申請者のライセンス実施を、専利責務機関は許諾することができる。なお、その実施は、主に国内マーケットのニーズに対して提供すべきであるとする。
知的財産局の処分及びその後の訴願決定においては、いずれも該条第1項のいわゆる「合理的商業条件」とは、ライセンス使用金額の多少をその具体的な標準とすることであると認定しているが、裁判所は、本件のライセンス実施の状況下では、この観点が採用できるとは言えないと認定した。
國碩が提出した2001年6月から2002年4月の間のフィリップスとの協議資料には、國碩は、フィリップスが提示した専利ライセンス契約で、ライセンス使用金額以外のライセンス条件全てに同意、受諾しているとは示していない。これは國碩がフィリップとのライセンスに関する協議で、ライセンス使用金額のみはなく、他の条件にもまだ合意していない状況であることを表している。。裁判所は、このことから、本件のライセンス使用の情況下では、訴願の決定が、専利法第76条第1項のいう「合理的商業条件」の具体的な量化を、単にライセンス使用金額の多少によって決めることはできないと判断した。
判決中の説明は以下のとおりである。「合理的商業条件」とは、申請者が提出したライセンスの協議の「全体の内容」に基づいて総合的に判断するべきである。つまり、國碩が提出した2001年3月から4月の間に、フィリップスと共に進めてきたライセンス協議の資料では、國碩が争った5項の専利の授権協議に対し合理的な商業条件を提出したと認めるには尚十分ではない。これにより、知的財産局が、当初國碩に「ライセンス実施」を認めたことは、明らかに不合理であり、また、知的財産局の認定を維持する訴願の決定も、法律により妥当ではない。