事務所情報 | 出版物品 | 2019年 3月
前のページ 11 12 13 14次のページ
 


中国で初めて
商標権者が懲罰的損害賠償を獲得

 

 【案件番号:(2018)魯04民初字第432号《民事調解書》】

 棗荘中院(2018)魯04民初字第432号《民事調解書》に記載された全国初の商標権者が懲罰的損害賠償を獲得した事例は、特別に「3.15事例」と評価され、中国の「中国法学会消費者権利保護法学研究会」から、棗荘中院が審理したこの商標権紛争事件は、中国で初めて商標権侵害に対し懲罰的損害賠償金が支払われることになった事例であると認定した証書が授与された。その後山東棗荘で開かれた2018年の年次会合で、商標権侵害に対する懲罰的賠償制度について討論がなされ、法人による模倣取締が推進された。 

 

 事実の概要

1.20165月、ある消費者が、山東の某食品公司が生産した偽の河北養元智匯飲品股份有限公司の「六個核桃」(六つのクルミ)商標のクッキーを5箱購入した後、山東棗荘工商局に通報した。

2.20187月、河北養元智匯飲品股份有限公司は、山東の某食品公司が許可なしに、その生産したクッキーを入れる包装箱に河北養元智匯飲品股份有限公司の「六個核桃」商標を使用したことは、商標権の侵害にあたり、悪意の状況があると主張し、懲罰的損害賠償金の支払いを求めて、棗荘中院に訴訟を提起した。

3.棗荘中院の裁判官が何度も当事者双方に関連する法律の規定を説明した後、山東の某食品公司は権利侵害の事実を認め、懲罰的損害賠償金の支払いに同意した。

4.20188月、棗荘中院は山東の某食品公司が河北養元智匯飲品股份有限公司に対し懲罰的損害賠償金16,000人民元を支払うとした民事調解書を作成した。

本件は中国で初めて商標権者が懲罰的損害賠償金を獲得した事例となった。

 中国では商標権侵害事件が頻繁に発生している。商標権の事件に関して、司法実務においては、一般的に侵害者の違法コストが低く、権利者の権利維持コストが高く、訴訟は割に合わない等の現象がある。そのため、中国の『商標法』に商標権者のための懲罰的損害賠償制度が導入された。『商標法』第63条には、「悪意により商標権を侵害した事情が深刻な場合は、商標権利者が商標権の侵害により被った損失、侵害者が侵害により得た利益又は商標の使用料の1倍から3倍の範囲内で賠償額を確定することができる」と規定されている。しかしながら、『商標法』が改正されてから、本件が受理されるまで、『商標法』第63条を適用して懲罰的損害賠償が認められた事例はなかった。本件で事実上当該法律条文の適用が開始されたといえる。

 中国人民大学教授兼中国法学会消費者権利保護法学研究会の副会長は、「調解書により当事者の懲罰的損害賠償金の支払いが確定したことは、知的財産権侵害行為に対する処罰力を強化する司法原則を反映しており、司法の創造性と能動性も反映している。その点においてこの事件は「棗荘経験」と称することができる」と述べた。

 

Top  
前のページ 11 12 13 14次のページ
 
 
  11th F1., 148 Songjiang Rd., Taipei, Taiwan | Tel : 886-2-2571-0150 | Fax : 886-2-2562-9103 | Email : info@tsailee.com.tw
© 2011 TSAI, LEE & CHEN CO LTD All Rights Reserved
   Web Design by Deep-White