ホテルの客室室内
デザインの剽窃は、著作権侵害及び
公平交易法違反のおそれ
【知的財産権法院104年度民著訴字第32号民事判決】
事実の概要:
原告は、長年ホテルの経営に従事し、同社グループには「雲品」「君品」などのホテルブランドがあり、顧客に宿泊サービスを提供している。また、原告は、ホテルの客室やインテリア・家具のデザインについては有名なデザイナーに委託してこれを行っていた。原告は、被告が経営するホテルの客室デザインは原告の客室デザインの剽窃であると主張した(下図参照)。
▓ 被告による著作権侵害との原告の主張に対して、法院は侵害不成立と判断
主な理由:
法院は著作権侵害があるか否かを判断する際に、関連する全ての事情を参酌して、著作権侵害を認定する2つの要件、いわゆる「依拠性」と「実質的な類似性」について慎重に審理しなければならない。そのうち「実質的な類似性」は、量の類似性を指すだけでなく、質の類似性も指している。図形、写真、美術、映像音楽などの芸術性又は美観性を有した著作物の盗用であるかどうかを判断する際、文字の著作物と同じ分析方法で詳細を比較すると、往々にして困難さがあったり、公平を失する可能性があったりする。したがって、質を考慮する場合、特に著作物間の「全体的な概念と感覚」に注意を払う必要がある(最高法院97年度台上字第6499号刑事裁判判決書、94年度台上字第6398号刑事裁判判決書参照)。
A社は、原告のホテルの客室の室内デザインや、室内デザイン図面の作成及び図面に基づく施工だけでなく、ホテル内の空間全体のレイアウト、宿泊に必要な設備の配置と計画、家具の選択及びインテリア計画、各設備と家具のサイズ及び動線の設計、照明計画などを含むホテルの空間全体の計画及び設計を担当しており、A社の当該ホテル全体の室内デザインについては、1つの完全な創作成果とみなすべきであり、客室デザインは全体デザインの一部に過ぎないため、各部分を分割して単独で著作権の保護を主張することはできない。
原告は、当該ホテルの客室デザイン以外の室内デザインの創作過程及び独創性などについて、関連の証拠を提出しなかったため、法院は、当該ホテルの室内デザイン全体に「独創性」があるかどうか、また、原告のホテルと被告のホテルの「全体的な」室内デザインから見て、実質的な類似(「質」の類似と「量」の類似を含む)に当たるかどうか、対比できない。したがって、被告らが係争客室室内デザインに係る著作権を侵害したとの原告の一方的な主張は、認めることができない。
▓ 被告による公平交易法第25条違反との原告の主張に対して、法院は違法と判断
主な理由:
公平交易法第25条は、「本法に別途規定がある場合を除き、事業者は取引き秩序に影響を与え得る欺瞞又は明らかに公平を失する行為を行ってはならない」と規定している。この条文における「明らかに公平を失する」とは、他人の努力成果を搾取したり、他人が相当な努力を費やして構築したウェブサイトの資料を剽窃したり、また高度な剽窃行為などを含む、明らかに公平を失する方法で競争に従事し又は取引きを行うことをいい、事業行為がこの条文における「取引き秩序に影響を与え得る」ことにあたるかどうかの判断は、その行為の実施後に、取引き秩序に影響を与え得る可能性があり、抽象的な危険性があれば足りる。(最高行政法院94年度判字第479号判決参照)。
原告は、長年ホテル経営に従事しており、非常に高い知名度を有している。被告も10数年のホテル経営経験があり、ホテルの客室デザインが宿泊価格を決定する上で重要な参考要素の1つであり、ホテル経営業者が費やす最も重要なコストの一つでもあり、消費者を引き付けるために、ホテル業者はみんな客室デザインに多くの労力と費用をかけて、快適で特色のある客室デザインを創り出すことをよく理解している。
被告は自ら創作デザインをせず、客室デザインを剽窃し、壁紙の模様まで同一であり、消費者を、被告のホテルと原告のホテルは関係企業であり、又は両者の間に加盟若しくはライセンスなどの関係があると誤認させる可能性がある。
被告は、消費者を引き付けるために、さらに室内デザインを剽窃した客室の写真を当ホテルの公式ウェブサイト及び主要予約サイトに載せた。被告は違法に原告のホテルの客室デザインを剽窃することで、デザイン創作及び内装時間を節約できるだけでなく、膨大なデザイン費用をかけることなく、内装を簡単に完成させ対外的に営業することができ、このような労せずして利益を得る行為は、観光ホテル業の取引き秩序に影響を与え得るため、公平交易法第25条の「取引き秩序に影響を与え得る欺瞞又は明らかに公平を失する行為」にあたる。
▓ 法院の判決
1.被告の会社及び代表者は500万元及び利息を連帯して賠償すること。
2.被告は、客室の中の類似を構成する物品を撤去や除去しなければならない。被告が当該物品を撤去や除去するまでは、消費者に宿泊を提供してはならない。また、権利侵害に係る写真を使用してはならず、ウェブサイトにアップロードした写真も削除しなければならない。
3.被告は、本件の最終的な判決書の当事者、事件の概要及び主文の内容を蘋果日報の全国版第一版のページ下半分に、コンピュータの標準楷書体フォント10号で、一日掲載すること。その費用は被告が連帯して負担する。
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