『2018中国ブロックチェーン
産業白書』― 優位性の
ある技術の知的財産権を如何に保護するか
【出典:零壹財経】
2015年5月、工業・情報化部情報センターは、『2018中国ブロックチェーン産業白書』(以下、『白書』という)を発表し、中国のブロックチェーン産業の全体的な発展状況、分野別の発展状況、金融分野での応用の発展状況、実体経済分野での応用の発展状況、産業の発展動向、法律政策と基準などについて詳しく分析を行い、中国のブロックチェーン産業の現状及び今後の発展動向を全面的に紹介した。
一、ブロックチェーン技術の法的保護
『白書』では、ブロックチェーン技術の性質について定義し、ブロックチェーン技術をコンピュータ技術とみなして保護するとしている。このことから、中国における現在のブロックチェーン技術の法的保護は、専利権による保護、営業秘密による保護及び刑法による保護の3つに限られていることが分かる。白書では、これらの法的保護の内容を更に整理し、(一)著作権による保護(二)専利権による保護(三)営業秘密による保護(四)刑法による保護の側面からブロックチェーン技術の法的保護について分析を行っている。
(一)著作権による保護
『コンピュータソフトウェア保護条例』によると、ソフトウェアの著作権者はそのコンピュータプログラム及び関連する文書ファイルについて著作権を享有し、その著作権はソフトウェアを完成した日から生じ、法律の保護を受ける。専利権の出願と比較すると、著作権のコンピュータ技術に対する審査基準は比較的厳しくなく、審査期間も短く、ブロックチェーン技術の開発者は通常2ヶ月以内に対応する証書を取得することができる。同時に、著作権の保護期間も比較的長く、法人またはその他の組織のソフトウェアの著作権の保護期間は、ソフトウェアを最初に発表してから第50年の12月31日までである。
但し、著作権の欠点も非常に明らかで、著作権は新規性に対する要件が低いため、他のブロックチェーン企業が、このコンピュータ技術に若干の改変を加えて、新たな著作権として登録申請する可能性がある。
(二)専利(特許、実用新案、意匠)権による保護
中国国家知識産権局の最新版の『専利審査ガイドライン』によると、コンピュータ言語、計算規則、コンピュータプログラム自体は、知的活動の規則及び方法に属するため、『中国人民共和国専利法』の規定に基づき、専利は付与されない。
専利権の保護範囲内にあるコンピュータプログラム発明とは、発明が提示する課題を解決するためのもので、コンピュータプログラムの処理フローが全部または一部の基礎となっており、コンピュータが前記フローに基づいて作成されたコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータの外部対象または内部対象を制御しまたは処理する解決方案のことである。
例えば、コンピュータプログラムの目的が、ある工業プロセス、測定または試験プロセスの制御を実現することであり、コンピュータが、ある工業プロセスの制御プログラムを実行し、自然法則に従って工業プロセスの各段階で実施される一連の制御を完成することで、自然法則に沿った工業プロセスの制御効果を獲得する場合、この種の解決方案は、技術方案に属し、専利の保護客体に属する。
一般的に、分権化と分散型台帳技術によりサプライチェーンフローを最適化するというブロックチェーン技術の特徴は、上記技術方案の定義に合致しているが、実際の出願結果は、案件ごとの具体的状況に応じて分析する必要がある。したがって、ブロックチェーン技術が全て前記の専利出願の条件に合致するわけではない。
専利権による保護のメリットは、保護の程度が高く、専利権者の権利も比較的大きく、一定期間内にある程度の独占権を享受できることである。しかし、同時に欠点も比較的はっきりしており、その審査基準が比較的厳しく、保護期間も限られていて、特許の場合だと、保護期間が20年しかない。また、特許の保護範囲は、特許権者が提出した要求の範囲を基準とするため、ブロックチェーン技術企業がその技術の適用範囲を明確に説明できない場合、保護すべき部分の遺漏が発生する可能性が非常に高い。
(三)営業秘密による保護
中国の営業秘密の保護については、未だに整備された保護体系が形成されていらず、関連法律は、『中華人民共和国契約法』、『不正競争防止法』、『中華人民共和国労働法』と『中華人民共和国刑法』などの法律法規に分散している。したがって、中国の現時点での法律の発展状況からすると、営業秘密を利用してブロックチェーン技術を保護するには、ある程度の適用難度があり、個別の案件を組み合わせて分析する必要がある。
(四)刑法による保護
上記の民事手段による保護措置以外に、『中華人民共和国刑法』(以下、「刑法」という)による保護は、ブロックチェーン技術の権利者にとって中国の法律で認められた法的保護の最後の砦であり、同時にそれに対応する懲戒措置も最も厳しい。権利者が著作権、専利権、営業秘密などの法的な保護手段をとっても、理想的な法的保護効果が得られず、しかも相手方による権利者への権利侵害が深刻な場合、権利者は「刑法」による保護措置を講じることができる。具体的には、侵害手段、侵害程度に基づいて認定される。
二、ブロックチェーン技術の業界基準
『白書』では、中国のブロックチェーン技術の業界基準の制定状況にも言及している。
(1) 中国電子技術標準化研究院は、国内のブロックチェーン分野の主要企業を集めて、2016年10月に、中国ブロックチェーン技術と発展フォーラムを設立し、前後して『ブロックチェーンリファレンスアーキテクチャ』と『ブロックチェーンデータフォーマット仕様』の二つの基準を作成し、発表した。
(2) 2017年10月、中国電子技術標準化研究院は、中国国内で初めてのブロックチェーン分野の国家標準である『情報技術ブロックチェーンと分散型台帳技術リファレンスアーキテクチャ』を完成させた。
目下、業界では依然として具体的で、適用可能な技術標準を必要としている。特に、現在中国は技術研究の最先端という優位な地位にあるため、ブロックチェーン技術が濫用、誤用されるのを防止しつつ、本当に価値のある技術応用が合法的な保護が受けられることを必要としている。
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