事務所情報 | 出版物品 | 2018年 3月
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中国国務院 
知的財産権資産の証券化を支持

【出典:新華網】

 中国国務院は、国家技術移転体系の構築と完備化を加速させるために、2017915日に『国家技術移転体系建設方案』(国発〔201744号)、以下《方案》という)を公布した。《方案》では、多様な投融資サービスを改善するための具体的な措置の1つとして「知的財産権証券化融資パイロット事業の実施」が提案された。

 アメリカでは、知的財産権の証券化の発展は比較的成熟しているが、中国では、銀行間であろうと取引所であろうと、知的財産権の実施許諾料を直接に基礎資産として資産担保証券(Asset-backed securities,略称ABS)を発行した例は未だにない。現時点では、リース会社が無形資産をリース物件として発行するABSしかないが、ここ数年、中国の資産証券化の市場規模は急速に拡大し、市場は日増しに成熟し、基礎資産の拡大は、当然ながら知的財産権にも及んでいる。

 資産証券化はリスク分離などのメリットがあり、オリジネーターにとっては魅力的であるが、現在中国の知的財産権においては、キャッシュフローの安定性が低いことや、客観的な価値評価基準が確立されていないなどの問題があることから、知的財産権の証券化の発展には、まだ努力が必要である。

 知的財産権の証券化(IP-Backed Securitization)は、資産担保証券化(Asset-backed Securitization)の一種であり、具体的には知的財産権の将来の実施許諾料を対象として、証券を発行し資金調達を行うというものである。

 知的財産権証券化の参加主体は、現在の取引所の各種資産証券化商品と違いがなく、主にオリジネーター、特別目的会社(special purpose vehicleSPV)、投資家、受託管理人、サービス機関、信用格付機関、信用補完機関、流動性供給機関などが含まれる。

 そのうち、知的財産権の原始権利者が自身の所有する知的財産権資産を「実質売却」方式でSPVに移転し、SPVが知的財産権の唯一の譲渡権を取得した後に、将来知的財産権で生じる現金収入を基礎として証券を発行する。唯一の譲渡権は、将来発生する収入が投資家の元本及び利子を償還するために用いられ、余分な収入が付加価値収益であることを保障することができる。

 中国の国専知的財産権評価認証センターの報告書によると、知的財産権の証券化は、19971月にアメリカの有名なロック歌手デビッド・ボウイが、短期間内に運転資金を必要としていたことから、アメリカの金融市場に自身の音楽作品の著作権債券を売却し、公衆に対し利回り7.9%の10年債を発行して、自身の音楽発展のために5500万米ドルの資金を調達したのが最初である。この資金調達行為は大成功を収め、世界で最初の典型的な知的財産権証券化事例と考えられている。その後、知的財産権の証券化は、アメリカにおいて映画、音楽、専利、商標などの分野に拡大した。

 中国の国専知的財産権評価認証センターの統計によると、1997年から2010年までの間、アメリカの知的財産権証券化による資金調達高は420億米ドルに達し、年平均成長率は12%を超えている。

 実際、知的財産権の関連金融サービスは中国に既に存在しており、中国の銀行も既に関連ローンを取り扱っている。例えば、北京銀行の著作権担保ローンである。近年、ファイナンスリース会社もこのサービスに参入し始めている。例えば、20149月に設立し、現在登録資本額が21.9億人民元の北京文化テクノロジーファイナンスリース株式会社がその一例である。

 知的財産権資産証券化一種簿外資金調達(Off-balance-sheet Financingでありオリジネーターの貸借対照表計上されないまた、SPVを通じて、効果的にリスクを分離して、投資家のリスクを低減することで、資金調達コストを削減することができるため、担保融資などの方式と比べ、証券化融資は規模がより大きいだけでなく、専利権利者にとって十分な資金をより獲得しやすくなる。

 しかしながら、中国国内の証券化は依然として実施が難しく、主な難点は、2件の無形資産をリース物件として、ファイナンスリースの形式により、見積もりシステムで完成されたプライベート・エクイティ証券化商品しかないことである。この2件はいずれも、北京文化テクノロジーファイナンスリースが発行したもので、知的財産権と資産証券化が既に密接に連結しているとしても、商品の観点からすると、ABSであることに変わりはない。

 現在、中国の知的財産権資産は既に一定の規模を有している。中国国家知的財産局が20174月に発表したデータによると、専利では、2016年度の特許出願受理件数は133.9万件であり、前年度に比べ21.5%増加し、PCT特許出願受理件数は4万件を超え、中国国内の有効特許保有数は100万件を突破した。商標では、2016年に中国が受理した商標登録出願は369.1万件であり、前年度に比べ28.35%増加し、15年連続世界1位を獲得した。知的財産権の訴訟の点においては、中国は知的財産権法院を設立してから、知的財産権の権利保護状況が大幅に改善され、客観的に見て知的財産権の証券化の発展に対してもプラスの効果がある。

 しかしながら、中国の知的財産権の証券化業務においては依然として障壁が存在する。最大の問題は下記の通りである。

 第一に、知的財産権の資本化、証券化業務は中国ではまだ発展初期段階であり、分野を跨いだ人材、成功した経験と事例、制度構築と理論構築のいずれにおいても、研究、改善しなければならない部分がたくさんある。

 第二に、知的財産権業務と市場業務の緊密度を強化しなければならない。知的財産権の市場価値を真に発揮するためには、知的財産権業務を研究開発の決定、戦略策定、競争相手の調査、市場分析などの業務と統合する必要がある。

 第三に、現段階では低品質の知的財産権が大量に存在している。出願人による専利証書に対する盲目的な追求や、代理機関のサービス品質の差が大きいなど様々な要因で、多くの知的財産権の出願が形式的なものとなり、多くの登録済みの知的財産権が「品質上の理由により戦略的資産として市場機能を発揮することができない」状態にある。

 また、現在、無形資産の評価額は評価機関の手数料と関係しているため、知的財産権の評価に偏差が生じやすく、また知的財産権の証券化にも影響を及ぼしている。 

したがって、専利で見てみると、毎年中国は多数の専利を産出するものの、訴訟と市場の検証に耐えられる高品質な専利はまだ多くない。この種の基礎資産は、明確な権利範囲、法的効力が求められるため、特定の基準に従って厳格に審査される必要がある。というのも、この種の投資家に認められ得る高品質な専利プールは、基礎が欠けており、また専利資産のキャッシュフローの安定性、情報開示の特殊性なども、知的財産権の証券化の発展に影響するからである。

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