中国　新三板のIT企業に対する
知的財産関連情報の開示を義務づけ

【出典：中国知識産権報】

　中国の全国中小企業株式譲渡システム会社は、登録を申請するソフトウェア及び情報技術サービス業の会社の知的財産権の情報開示について詳細に規定した『全国中小企業株式譲渡システム公開譲渡説明書情報開示ガイドライン第7号―ソフトウェア及び情報技術サービス会社（試行）』（以下、『ガイドライン』と略称）を公布し実施を開始した。今後「新三板」に登録するIT企業は知的財産権関連情報の開示が義務付けられる。

　中国市場の「新三板」とは、『主板（メインボード）』、『創業板（GEM）』に相対する証券取引プラットフォームの呼び方である。
  

　場内市場の上場企業は不特定の公衆に株を発行することができるが、場外市場に登録した企業は中国証券監督管理委員会が認定した適格の投資家にしか株を発行することができないため、「新三板」に登録することは、「上場」（go public）ではなく、法律で強制された一種の株式取引プラットフォームである。新三板の登録企業は主にイノベーション型、成長型の零細企業であり、メインボード及び創業板とは対照的に、キャッシュフロー、純資産及び総資本について何の条件もなく、剰余金の額に対する基準もなく継続的な収益能力があれば登録ができる。

しかしながら、「新三板」に登録された企業は常に情報の開示が不実・不完全であった。知的財産権の問題で、上場できない事例（例えば、江西天施康中薬株式会社は、「康恩貝」の商標使用権の問題で上場に失敗した。西点薬業は特許権の権利の帰属が不明なためにIPOできなかった……。）はよく耳にする。今回の新規定は、投資家が知的財産権情報から投資価値を発見及び判断するのに役立ち、IT企業の自主的イノベーション能力を奨励するものである。

　『ガイドライン』は、知的財産権情報開示ルールを強調し、知的財産権の評価、保護措置、研究開発モデル及び第三者への依存度などについて、詳細に規定している。

　『ガイドライン』は、二つの特徴がある。一つはソフトウェア及び情報技術サービス業の特徴に基づいて、差異化情報の開示要求を提示している点。もう一つは投資家の立場に立った情報開示要求を強調し、会社が市場に対しその投資価値及び投資リストを十分に示すことを規定している点である。

　過去、知的財産権の情報開示については、主な無形資産の取得方法及び取得日、実際の使用状況、使用期限又は保護期間、最新の期末帳簿価額などの開示のみを要求していた。『ガイドライン』では、これらを基礎として、無形資産評価の開示・評価方法、価値評価、評価方法の違いによる評価結果の相違状況などを追加し、また、知的財産権の保護措置、研究開発モデル、第三者への知的財産権の依存度などの方面についても規範した。

　これによって、将来企業が保有する知的財産権の数量、質、経営管理の水準が、上場企業の優劣を判断する重要な指標になる。上場を目指す企業にとっては、企業が将来順調に上場できるように、企業の知的財産権戦略、企業の知的財産権管理体制の構築を早めに制定しなければならない。『ガイドライン』は、IT企業の知的財産権ストックのチェック、価値評価及びリスク予測、知的財産権の開発及び利用、知的財産権のリスク管理計画、危機対応の届出の制定及び実施などについて、いずれも詳細に規定している。

　中国国務院が公布した『企業のレバレッジ比率の積極的且つ安定的な引き下げに関する意見』には、初めて、全ての中国の中小企業株譲渡システム登録会社の創業板への移動に関する制度を研究することが明示された。しかし、知的財産権方面においては、第三板企業と創業ボード企業には、依然として小さくない開きがある。今回、『ガイドライン』の知的財産権情報の開示に関する規定は、創業ボードへ移動する新三板企業に影響を与え、企業の商品及びサービスの創造、価値評価及び融資能力の向上、コーポレート・ガバナンス能力の向上及び企業リスクの管理水準に対する適合性の向上に重大な影響を与えると思われる。知的財産権情報の開示によって、効果的に新三板の企業の知的財産権に係る作業がスムーズに行われ、新三板から創業板へ転換する技術環境が改善されるものと見られている。