事務所情報 | 出版物品 | 2016年 3月
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中国大陸産酒類商品の台湾への輸入販売未開放は
「商標不使用」の正当事由とする廃止不成立の事例

廃止申請(取消請求)対象商標:登録第1208218号「東方紅<簡体字>DONGFANGHONG

指定商品:33類「酒(ビールを除く)、果実酒」(後に白酒(蒸餾酒)に限定)

廃止申請人:香港商・東方紅薬業有限公司

商標権者:中国・四川綿竹剣南春酒廠有限公司

商標代理人:蔡坤財、李世章

主文:廃止申請(取消請求)不成立

一、双方当事者の主張

1)廃止申請人の主張

 商標権者のウェブサイトを調べたが、台湾においては分公司又は販売拠点を設けていない。また、「東方紅」及び「酒類」をキーワードとしてインターネットで調べても何ら関連する資料が見当たらない。酒(ビールを除く)、果実酒商品業者及び関連する通路業者を調査・訪問した結果、被訪問者がこぞって過去3年上記廃止対象商標の商品を見たことがないという。廃止対象商標の指定商品は既に輸入開放されているため、輸入販売未開放故、商標の使用ができないという弁解が成り立たない。廃止対象商標は既に商標法6312号に定めた商標不使用の事由に該当する云々。

2)商標権者の答弁

 商標権者は中国大陸地区の著名な白酒(蒸餾酒)の製造メーカーであり、「東方紅<簡体字>DONGFANGHONG」商標は確かに中国大陸地区で酒類商品に使用されている商標である。しかし、台湾対中国大陸物品輸入規定により、現在大陸地区製造・生産する酒類商品の台湾への輸入販売は未だ開放していないため、上記登録商標の指定商品は台湾へ輸入販売することができない。商標権者は実在に製造・生産する商品を指定商品と一致させるため、既に指定商品の範囲を「白酒(蒸餾酒)」のみに減縮した。従って、商標権者はまだ台湾において販売ないし販売促進を行うことができないことは己の責めに帰せられない正当な事由に属するので、商標法6312号の規定に違反していない。

(二)商標法6312号の規定

 商標登録後、「正当な事由がないのに、今まで使用しなかったときまたは使用を中止してから引き続き3年満了したとき」、商標専門機関は職権でまたは請求によりその登録を廃止しなければならない。いわゆる「正当な事由」とは、商標権者が事実上の障碍若しくはその他己の責めに帰せられない事由でその登録商標を使用できないことを言う。例えば我が国が大陸地区で製造・生産する酒類商品の台湾への輸入販売を未だ開放しないことは、使用できない正当な事由と認めることができる。(知財局が発布した「登録商標の使用に関する注意事項3.3」参照)

 本件上記登録1208218号「東方紅<簡体字>DONGFANGHONG」商標は200651日に登録され、「酒(ビールを除く)、果実酒」商品に使用を指定している。廃止申請人は商標権者が明らかに上記登録商標を指定商品に今まで使用しなかった、または使用を中止してから引き続き3年満了した疑いがあると主張しているが、しかし商標権者は既に指定商品の範囲を実際製造・生産する商品「白酒(蒸餾酒)」のみに限縮した。商標権者が台湾にて販売できない、販売促進できない理由は己の責めに帰せられない正当な事由である。

三、菸(タバコ)酒管理法施行細則35号「蒸餾酒類」下3目に「白酒」と載せられている。「白酒」とは「糧穀類」を主要原料とし、各種麹類又は酵素及び酵母等糖化発酵剤を採用し、糖化、発酵、蒸餾、熟成、調和して造った蒸餾酒」を指す。財政部国庫署台財庫字第0910045854号令の解釈:「菸(タバコ)酒管理法施行細則353目白酒に関する定義の中に言う『糧穀類』という言葉は稲、高梁、とうもろこし、大麦、小麦、蕎麦、粟、薯類、里芋及び山芋ら糧穀。」をいう。また、経済部国際貿易局「大陸物品輸入不許可項目まとまり表」の中、貨物品号、貨物品名称「2208.90.60.00-4穀類蒸餾酒Korn、『寇恩酒ともいう』」及び「2208.90.90.19-7その他穀類酒Other distilled cereal beverages」というものは、その項の後の輸入規定は共に「MWO」とあるものは大陸地区物品の輸入不許可の項目である。

 本件限縮後の指定商品「白酒」は商標権者の「東方紅」産品を紹介する答弁資料によれば、その原料は「水、高梁、米、糯米、小麦、とうもろこし」、酒精度は46%、前記菸(タバコ)酒管理法施行細則及び関連解釈によれば、商標権者の「東方紅」産品は「糧穀類」を原料とする「蒸餾酒」商品であり、即ち当該商標の現在登録している「白酒」商品であり、かつ、「大陸物品輸入不許可項目まとまり表」の中に列記されている「穀類蒸餾酒」(「寇恩酒Korn」ともいう)、「その他穀類酒」に相当する。従って、商標権者が主張する「廃止被請求する商標が我が国にて販売できないことは前記『登録商標の使用に関する注意事項3.3』に列記されている使用できない正当な事由に属する」ことはなお根拠がないのではない。

四、以上の説明をまとめて、廃止被請求の登録商標「東方紅DONGFANGHONG」の不使用は「正当な事由がない」のではないので、自ずと商標法6312号規定の適用がない、よって商標法15条の規定に基づき、主文の如く処分する。

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