ドメインネーム<redbull.tw>の不正登録を訴えてそのドメインネームの登録を申立人に移転すると命じる専門家グループの決定
(財団法人 情報工業策進会科技法律研究所STLI 2013-004号専門家グループ決定書)
申立人:スイス商・RED BULL AG(代理人:蔡坤財、李世章氏)
登録者:仏国籍・FARID MESSAOUD
ドメインネーム:<redbull.tw>
登録日:2012年11月29日(有効期間:2013年1月29日)
一、本案の事実
1.RED BULLは申立人の社名の主要部分である。
2.「RED BULL」「Red bull」「Red Bull Energy Drink & Device in color」「Red bull & Device」等名称及び図形は、申立人が台湾で各類商品に商標登録をしている(登録番号は620021、627791、1081639、1153486、1296857、1351153、1390990、1413707、1239763、1489889、1530821)。
3.申立人の親会社はオストリア商・RED BULL GMBHで、EUで「Red Bull」の商標登録をしている(登録番号:5225611)。
4.フランス国籍者Farid Messaoud氏が2012年11月29日にOVHSARLへ係争するドメインネーム<redbull.tw>の登録をした。
5.申立人は上記係争するドメインネームの登録が財団法人台湾インターネット情報センター(TWNIC)ドメインネーム争議処理弁法(以下「処理弁法」と略称)第5条各項の規定に違反するとして、上記係争するドメインネームの登録を申立人への移転を請求する。
二、申立の要件
(一)「処理弁法」第5条第1項の規定により、ドメインネームの登録が次に掲げる事情の一つがあるとき、申立人は争議処理機構に申し立てることができる。
(1)ドメインネームが申立人の商標、標章、氏名、事業名称又はその他標識と同一又は類似して混同を生じるとき。
(2)登録者がそのドメインネームについて権利又は正当な利益がない。
(3)登録者が悪意をもってドメインネームを登録又は使用する。
(二)「処理弁法」第5条第2項の規定により、次に掲げる事情の一つがあるとき、登録者が当該ドメインネームを所有する権利又は正当な利益があると認定することができる。
(1)登録者が第3者又は争議処理機構から当該ドメインネームの争議を通知される以前、既に善意で使用し、若しくは既に当該ドメインネーム又はその相当する名称を使用することを準備して商品を販売し、又は役務を提供したことを証明することができるとき。
(2)登録者が当該ドメインネームを使用し、既に一般大衆に熟知されている。
(3)登録者が合法的、非商業的又は正当な使用をして、消費者に混同させ、誤って導く若しくは商標、標章、氏名、事業名称またはその他標識を減損する方式で、商業的利益を得ようとしなかったとき。
(三)「処理弁法」第5条第3項の規定により、次に掲げる事情を参酌して登録者が悪意でドメインネームを登録し、又は使用することと認定することができる。
(1)登録者が当該ドメインネームを登録し、又は取得する主な目的は、ドメインネームを販売し、レンタル又はその他方式で、申立人又はその競争者から、当該ドメインネームの登録にかかる関連費用を越える利益を得ようとするとき。
(2)登録者の当該ドメインネームの登録は、申立人の当該商標、標章、氏名、事業名称又はその他標識でドメインネームの登録を妨害することを目的とするとき。
(3)登録者が当該ドメインネームを登録する主な目的は、競争者の商業的活動を妨害するとき。
(4)登録者が営利の目的で、申立人の商標、標章、氏名、事業名称又はその他標識と混同を生じること。インターネットの使用者を誘惑し、誤って導いて登録者のウェブサイド又はその他オンラインアドレスを訪問させることを意図するとき。
三、本案申立人の主張
1.登録者の登録したドメインネームは申立人の商標、標章、社名の主要部分と同一、混同を生じる。処理弁法第5条第1項第1号の規定と合致する。
2.登録者が係争するドメインネームについて権利又は正当な利益がない。
登録者が2012年11月29日に初めて「redbull」を主要名称として係争するドメインネームを登録申請する。登録者は申立人が2008年より既に著名なRED BULL商標を付した商品を世界各国で販売していることを知らないはずがない。また、登録者のドメインネームをリンクしたところ、そのウェブサイドにはいかなる実質的内容もなく、そのウェブサイドは、実際の経営又は既に使用を準備している事実もない。登録者のドメインネームの登録は「処理弁法」第5条第2項第1号に規定する善意使用または既に使用の準備をしている要件とは合致しない。また、その係争するドメインネームは同項2号に規定する既に一般大衆に熟知されている要件とも合致しない。
3.登録者が悪意で係争するドメインネームを登録し又は使用する。
登録者の登録したドメインネームについて実質的なウェブページがなく、その登録は申立人のRED BULL商標、標章、社名の主要部分またはその他標識と混同を発生し、ネットの使用者を誘導して登録者のウェブサイドにアクセスし、そのCTR率を増加し、そのドメインネームを販売する商業的利益を謀る意図で、登録者の係争するドメインネームの抜け駆け登録は悪意登録又は使用する行為に当たるため、「処理弁法」5条3項4号の要件と合致する。
4.STLIの専門家グループの決定をする前、登録者がいかなる答弁書も出していない。
四、専門家フループの認定
1.係争するドメインネームは申立人の使用する商標及び事業名称と類似して混同を生じる。「処理弁法」第5条第1項第1号の規定と合致する。
2.登録者が係争するドメインネームについて権利又は利益を有さない。「処理弁法」第5条第1項第2号の規定と合致する。
3.登録者が悪意でもって係争するドメインネームを登録又は使用する。
処理弁法第5条第1項第3号の規定によれば、登録者が悪意登録又は悪意使用のいずれか一つの事情があれば足りる、両者兼備を必要としない。その具体的状況は前記処理弁法第5条第3項第1号~第4号に挙げられている。詳しくは前記二、申立の要件(三)をご参照ください。
上記各号の状況は例示的規定であり、同項に挙げられている状況に限らない。また、その中の一種または数種の状況があれば、登録者がそのドメインネームを「悪意登録」または「悪意使用」と認定することができ、全部具備を必要としない。
4.申立人の「RED BULL」等商標は台湾及び世界各国/地域で共に著名であり、しかも一般消費者大衆に熟知されている。かつ、申立人は「www.redbull.com」及び「www.redbull.com.tw」等ドメインネームを所有しており、そのウェブページの内容に、申立人の商品及び役務が詳しく紹介されており、登録者が上記事情を知らないと弁解することができない。登録者が係争するドメインネーム<redbull.tw>を抜け駆け登録を行った行為は申立人が将来その商標名称「RED BULL」でドメインネーム<redbull.tw>を登録する正当な行為の妨害になる。言い換えると、登録者の係争するドメインネームの登録はまさに申立人をして今後その商標「RED BULL」でドメインネーム<redbull.tw>を登録することができなくなり、実に「悪意登録」に属する。
5.上記に述べたことにより、本案の専門家グループは係争するドメインネームが「処理弁法」第5条第1項第3号の規定と合致すると認定した。
6.認定理由の総結論:専門家グループは申立人の申立は「処理弁法」第5条第1項各号の要件と合致すると判断し、申立人の申立は理由があると結ばれた。
五、決定の主文:本案専門家グループは申立人が係争するドメインネームについての申立が「処理弁法」第5条第1項各号の規定と合致すると認定し、申立書の請求する救済方法に従い、本件係争するドメインネームの登録を申立人に移転するよう決定した。
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