事務所情報 | 出版物品 | 2013年3月
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侵害行為及び損害賠償に関する改正特許法の若干規定

 台湾改正特許法はすでに201311日から施行し始めた。今回の改正法で特許権の侵害について特に注意すべき点は損害賠償の請求は侵害者に主観的に故意又は過失を必要とすることである。従って、特許侵害が発見されて裁判所に訴訟を提起する前に、まず侵害者に警告状を発信するべきである。発信後侵害が続けられている場合は、侵害者が主観的に故意又は過失を有することを証明することができる。
 改正特許法が特許侵害に対する民事救済は、「損害賠償」及び「侵害の除去ないし防止」の二大類型に分けている。「損害賠償」類型は民法の規定により、行為者が主観的に故意又は過失が必要であり、「侵害の除去ないし防止」類型は、性質において物上請求権(物権的請求権)である妨害除去及び妨害防止請求権に類似している。従って、客観的に侵害事実又は侵害の虞があれば足り、行為者の主観的要件を要さない。改正前特許法第84条第1項の適用における疑義を避けるため、改正法第96条の第1項、第2項に特許権侵害の除去、侵害防止の請求並びに損害賠償請求に分かれて定めている。
 次に、損害賠償の計算方法について、改正前特許法第85条第1項第2号には「総売り上げ説」を採っている。侵害者がそのコストまたは必要経費について証拠を挙げられないときは、当該物品を販売した時の全部収入を得られる利益とするとはっきり定めている。ただし、改正法第97条第1項第2号には上記文字を削除して、単に「侵害者が侵害行為で得た利益による」と定めている。これは主に侵害者が得た利益は第3者の競合産品及び市場利益による可能性があることを考慮してこの部分の利益を賠償範囲から除外されたためである。
 改正特許法にもう一つのポイントは「相当する権利金(ロイヤリティー)」である。改正特許法第97条第1項第3号に、「その発明特許の許諾実施で得た所得から受け取った権利金(ロイヤリティー)に相当する金額を受けた損害とする」を増設している。つまり、権利者の受けた損害について法的にミニマムの補償額を設けている。同時に、権利者の挙証責任を適度に免除している。然るに、こういう規定に反論する議論がある。即ちこういう規定は侵害行為を鼓舞するに等しい。権利金はあくまでも損害賠償を計算するベースに過ぎず、別に訴訟費用その他費用を加えなければならないからである。
 この他、改正前特許法第85条第3項に定めた「懲罰的損害賠償」(侵害行為が故意に属する場合は、損害額の3倍)以内にとの規定が削除されたことに対しても反対する議論が多い。削除された理由は懲罰的損害賠償は英米法コモン・ローの損害賠償制度であり、その特徴は賠償の金額が実際に損害された程度を超えている点である。しかも、この規定は我が国の一般民事損害賠償で採られている損害の補填とは異なり、我が国の損害賠償体制に合致するために削除されたとのことである。しかし我が国一般民事損害賠償が損害の補填を採っているとはいえ、公正取引法の32条並びに証券取引法の157条の1など特別法に、懲罰的損害賠償の規定も見られたので、我が国の損害賠償体制にも懲罰的損害賠償があると批判的コメントもある。

 最後に、特許物品に特許番号の表示をしなくても条件付きで損害賠償を請求することができることである。改正前特許法第79条に、特許権者は特許物品またはそのパッケージに特許証書番号を表示しなければならない。その表示を付加していない場合に、原則として損害賠償を請求することができないとされている。改正特許法第98条に、「表示しなかった場合は、損害賠償を請求するときに、侵害人が明らかに特許に係るものであることを知っていること、もしくは知りえることを挙証で証明しなければならない」と明文化した。無条件で侵害者の故意又は過失を推定できることではない。

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