事務所情報 | 出版物品 | 2011年3月
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商標法改正草案に商標の保護範囲を拡大する

現行の商標法は2003528日に公布し、同年1128日より施行されてきて、今日に至っているが、商工業の迅速な発展並びに交易形態の益々の活発化・多元化に対応すると共に、商標流通の国際性及び商標法に関するシンガポール条約(The Singapore Treaty on the Law of Trademarks, STLT)の正式発足に鑑みて、台湾知的財産局は2008年から6回の公聴会及び6回の学識専門家によって構成された諮問委員会を開いて各方面の意見を統合した後、現行の商標法に対して改正の作業を進めてきた。

行政院では20101123日にすでに商標法改正草案の審査を完了している。今回の改正は国際的トレンドに順応し、商標法に関するシンガポール条約を参考して、非伝統的商標を商標法の保護客体に加えることにした。それは動き標章(Motion Marks)及びホログラムマーク(Hologram Marks)を含む商品又は役務の出所を十分に識別できる標識である場合は、共に商標法の保護を受ける客体になる。改正条文第18条には商標とは文字、図形、記号、色彩、立体形状、動き標章、ホログラムマーク、音声ら若しくはそれらの結合から構成することができると定めている。

商標法の改正要点は下記の通り。

1. 保護客体(改正条文第1条、第2条)

商標権、証明標章権、団体標章権、団体商標権。

2. 商標使用行為の態様を明確に規範する(改正条文第5条)

国際的立法形式に倣い、商標の使用行為を定め、販売の目的に基き、デジタル映像音声、電子媒体、インターネット又はその他の媒体方式で商品又は役務を所持・陳列・販売・輸出又は輸入するものは、共に商標の使用行為になる。

3. 商標の保護客体を拡大する(改正条文第18条及び第19条)

国際的トレンドにあわせて商品又は役務の出所を十分に識別できる標識は全て商標登録の保護客体になる。また、登録出願する商標見本がクリア、明確、完全、客観的、丈夫で長持ち及び理解されやすい方式で表現されなければならない。

4. 展覧会優先権を増設(改正条文第21条)

知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)第2条の規定により、パリ条約第11条博覧会優先権に関する規定を導入する。

5. 商標見本の非実質的変更の情況を設ける(改正条文第23条但書)

国際立法例に倣い、商標見本が非実質的変更である場合、登録出願後でも変更することができる。

6. 商標登録出願事項及び登録事項錯誤の訂正規定を増設

商標登録出願事項及び登録事項が商標の同一性に影響しない若しくは指定商品又は役務の範囲を拡大しない条件の下、出願人が錯誤の訂正申請をすることができる。(改正条文第25条及び第38条)

7. 商標の共有を増設(改正条文第7条、第28条及び第46条)

産業界のニーズに応じるため、一つの商標を二人以上が共有できることを定め、合せて商標共有の出願、移転、放棄、分割、減縮、使用許諾及び質権の設定ら関連規定を増設。

8. 商標不登録事由を改正(改正条文第30条)

(1)        商標登録の積極的要件及び消極的要件を二つの条文に分けて定める。(改正条文第2条及び第30条第1項)

(2)        商標が商品又は役務の説明、通用標章又は名称、若しくはその他識別性を有さない標識のみによって構成するものは登録することができない。このほか、機能性を有する商標が登録できないものは商品又はその包装容器の立体形状、色彩、音声等その他非伝統的な商標に限らず、それらにも機能性の問題があるので、よってそれを改正する。(改正条文第29条第1項第1号、第2号、第3号及び第30条第1項第1号)

(3)        パリ条約第6条の3により、世界貿易機構(World Trade Organization, WTO)会員国の紋章、国璽又は国の記章;各国間政府組織の記章、旗、その他記章、イニシャル又は名称及び各国が品質管理に用いる若しくは検査マークを表示する国の標識又は印章、記号を保護するために改正(改正条文第30条第1項第2号、第5号及び第6号)

(4)        商標併存登録制度を認め、同一商標をもって同一商品又は役務に指定することを明文で排除する現行法の規定のほか、なおそのほか明らかに不当の情況がある。周到を期するため、商標の併存登録は明らかな不当の情況がないことを前提とすべきであることを増設。(改正条文第30条第1項第10号但書)

(5)        審査の効率を高めるため、商標が識別性を有さないまたは機能性を有さない部分については出願人が単にその部分が商標権の範囲について疑問を発生する虞があるときに、初めて専用しないことを声明すべきである。若し声明をしなければ、その商標が登録できない。(改正条文第29条第3項及び第30条第4項)

9. 登録料の納付期間を守らないときの権利回復規定を増設(改正条文第32条第3項)

商標法に関するシンガポール条約(The Singapore Treaty on the Law of Trademarks, STLT)の精神を参考して登録料の納付期間を守らないときの権利回復規定を増設。一方、権利の安定性を維持すると共に、権利の回復によって混同を発生する商標の併存現象を避けるため、権利回復できない例外規定を設ける。

10. 登録料を二期に分けて納付する規定を削除

現在登録料を二期に分けて納付する規定では使用サイクルが短い商品の商標を淘汰する立法宗旨に達成できない上、かつ商標権者が第2期登録料の納付遅延によって商標権を失うリスクを増加するため、現行条文第26条登録料を二期に分けて納付する規定を削除する。

11. 合理的使用規定がカバーする指示的合理的使用状況を改正(改正条文第36条第1項第1号)

商標の合理的使用は記述的合理的使用及び指示的合理的使用の二種類をカバーするが、後者は第三者が他人の商標を表示することによって自分の商品又は役務の品質、性質、特性、機能などを現す。例えば比較式広告又はメインテナンスサービス、若しくは自分の部品、組立品製品が商標権者の製品と相容れるものは、すべて商標として使用するものでなく、商標の効力に拘束されない。周到完全を期するため、外国の立法例を参考して商品又は役務の「性質」又は「特性」を表示する情況をカバーすることを増設。

12. 専用使用権及び非専用使用権の設定に関する規定を増設(改正条文第39条)

商標法に関するシンガポール条約(The Singapore Treaty on the Law of Trademarks, STLT)を参考して専用使用権の設定の定義及びサブライセンスの関連規定を増設。また、専用使用権者の権益を保護するため、専用使用権者が権利を行使する規定を増設。

13. 商標の無効審判又は廃止(取消審判請求)に請求者が引用商標の3年間の使用証拠の提出要件を増設(改正条文第57条及び第67条)

無効審判請求又は廃止(取消審判請求)を提起するときに基いた引用商標の登録が既に3年満了した場合、請求者は引用商標の無効審判若しくは廃止(取消審判)請求前3年間の使用証拠、又は不使用について正当な事由がある証拠を提出しなければならない。

14. 商標権侵害に関連する規定を改正又は増設

(1)        侵害行為の態様を明確に規範する。商標権の排他範囲を明確にするため、商標権者が他人の商標権の侵害行為を排除できることをはっきりと規定する。(改正条文第68条)

(2)        商標権侵害責任の主観的要件をはっきりさせる。商標権侵害の排除及び防止は行為者が主観的に故意又は過失あることを必要としない。損害賠償については行為者が主観的に故意又は過失があることを必要とする。(改正条文第69条第1項及び第3項)

(3)        「商標権侵害と見なす」規定を改正(改正条文第70条)。

a.「商標権侵害と見なすもの」は単に実際に著名商標の識別性又は声誉を減損する虞があることを立証すれば良いと改正し、著名商標に対する保護の不周到を避ける。

b.商標権を侵害する虞があることを知りながら、商品又は役務とまだ結びついていないラベル、ステッカー、タグ、包装容器若しくは役務と関連する物件を製造、所持、陳列、販売又は輸入する行為は商標権侵害と見なす行為であると増設。

(4)        輸出及び輸入品の水際措置について職権による差押え及び侵害物品情報提供の規定を増設;税関が職権による差押えの法的根拠を増設;差押え物品の機密資料の保護を損なわない情況の下、申請人又は被差押え人の申請に基いて税関の許可を得てから差押え物品検査をさせて商標権を侵害する物品であるか否かの確定に協力すると共に侵害物品に関する情報を権利者に提供する。(改正条文第75条及び第76条)

15. 証明標章及び団体商標の関連規定に関する改正

(1)        証明標章の定義を改正し、産地証明標章の定義を増設;その出願申請に関する規定を改正。(改正条文第80条ないし第83条;第88条ないし第90条)

(2)        産地団体商標の定義ら関連規定を増設し、並びにその出願申請及び産地証明標章に準用する規定を定め、その適用に資する。(改正条文第88条、第89条及び第90条)

16. 証明標章権を侵害する刑罰規定を増設(改正条文第96条)

証明標章が商標より高い公益性を有し、証明標章権の侵害が社会公衆に対する損害が商標より大きい可能性があることに鑑み、証明標章権侵害の刑罰規定を増設。また、証明標章権を侵害する虞があることを知りながら、販売又は販売の意図をもって他人の登録された証明標章の標識と同一又は類似するラベル、包装容器又はその他物件を製造、所持、陳列するものは、証明標章権を侵害するばかりでなく、公益にも危険を及ぼすから、明文で禁止する。

17. 侵害商品であることを知りながら電子媒体を通じ、又はネット方式で販売、意図販売する刑事処罰規定を増設(改正条文第97条)

電子商取引及びネットの発達による経済発展のトレンドに対応するため、電子商取引を通じ、又はネット方式で販売、意図販売の行為は共に商標権侵害する行為になる。

18.この改正条文の施行前に動き標章(Motion Marks)、ホログラムマーク(Hologram Marks)或いはその結合式で登録出願したものは、改正条文の施行日をその出願日とする(改正条文第108条)

この条文は増設。今回の法改正はあらゆる識別性を有する標識がともに商標登録出願ができるようになっているが、現行法ではまだ受理できない動き標章、ホログラムマークは改正条文が施行された後、初めて受理できる。よってこの改正条文の施行前に出願された場合の経過措置を増設して、出願の公平性を保つ。

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