事務所情報 | 出版物品 | 2010年6月
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立法院第一読会で審議されている台湾特許法改正草案の要点

台湾特許法の改正に関し、2006年より陸続として15回の公聴会を開き、20092月から更に8回の公聴会を開いている。2009123日に行政院で通過した改正条文の草案が同年1211日に立法院へ送られ、現在第一読会で審議されている。その改正案の要点は下記の通り。

1.創作の位置付けを明確に定める。

創作は発明、実用新案及びデザインの上位概念である。創作は「実用新案」又は「デザイン」であるとの誤解を避けると共に現行法に「創作」が広義、狭義の異なる意義を解決するため、発明、実用新案及びデザインを併せて創作の類型とする。(改正条文第1条)

2.意匠特許の名称を「デザイン特許」に変更する。

産業界及び国際的にデザインに対する保護の通常概念と一致するとデザイン保護の客体を明確に表現するため、国際的立法例を参考にして現行法の用語「意匠特許」を「デザイン特許」に改正する。(改正条文第2条及び第123条)

3.発明、実用新案及びデザインの「実施」についての定義を増設。

「実施」には「製造、販売の申し出、販売、使用又はこれらの目的のために輸入する」行為を含むが、「使用」の上位概念に属している。しかし、現行特許法には「使用」と「実施」の用語が一致せず、解釈上の混乱を生じている故、「実施」の定義を増設すると共に関係条文中「実施」と「使用」の用語を改正した。(改正条文第22条、第58条、第89条、第124条及び第138条)

4.猶予期間(Grace Period)の適用範囲を改正すると共にその事由を増設。

事実発生後6ヶ月以内に発明及び実用新案特許の猶予期間の適用範囲を現行法の新規性に及ぶのみを新規性及び進歩性(デザインパテントにおいては創作性)を含むと改正し、猶予期間の適用範囲を拡大するほか、猶予期間を主張できる事由は己の意によって刊行物に発表されたものを増設。(改正条文第22条及び第124条)

5.特許請求の範囲(クレーム)及び要約書を明細書の中から独立する。

国際的立法趨勢に従い、現行特許法の明細書に含まれている「特許請求の範囲」及び「要約書」を明細書より独立するように改正。(改正条文第23条及び第25条)

6.動植物特許の出願を開放する。

国内のバイオ産業の発展を促進するため、動植物を発明特許の客体として開放する。(改正条文第24条)

7.明細書、特許請求の範囲及び図面は外国文本を提出する場合の関連規定を増設。

外国文本を提出した場合、その外国文本を修正することができないと共に誤訳訂正制度の規定を導入する。更に、外国文本の種類の限定及びその記載すべき事項に関する規則の制定を授権する。(改正条文第25条、第44条、第69条、第108条、第112条、第127条、第135条、第141条及び第147条)

8.権利回復規範を導入する

創造革新を奨励し、研究開発の成果を保護するため、出願人又は特許権者が若し故意によらず出願時に優先権を主張しなかった場合は優先権を主張しないとみなし、又期限内に特許年金を納付せずに権利を失った者は、その権利の回復申請を許す制度を増設。また、特許権を回復する効力は元来の特許権消滅後から特許権回復の許可公告まで、善意で実施し、またはすでに必須の準備を完成した者には及ばないと増設。(改正条文第29条、第52条、第59条及び第72条)

9.分割出願時点の制限を緩和する。

発明特許許可査定後の分割出願制度を採用し、出願人が初審許可査定書の送達後30日以内に分割出願を申請できる規定を増設。(改正条文第34条)

10. 審査中の補正制度を完備する。

「補充、修正」の用語を「修正」(amendment)に改正すると共に出願人が自動的に修正を提出するときの時間的制限を削除。審査日程の遅延を避けるため、「最終通知」制度を増設。出願人は特許専門機関が最終通知した後、特許請求の範囲の修正を申請するときに、単に特定の事項についてなすことができる。違反したときに、特許専門機関は直ちに査定することができる。(改正条文第43条)

11.医薬品又は農薬の特許権期間の延長に関する規定を改正。

医薬品又は農薬の特許権期間の延長規定を緩和し、許可証を取得するために発明を実施できない期間が公告されてから2年間以上を要する現行法の制限規定を削除するほか、特許権期間満了時に、まだ査定されていないとき、その特許権期間は既に延長したと見なす規定を増設。発明特許権期間の延長を許可される範囲は、許可証に記載された有効成分及び用途に限定される範囲に及ぶ。(改正条文第53条、第54条及び第56条)

12.特許権の効力が及ばない事項を増設。

商業目的によらない未公開行為を増設。特許権者が特許法第72条第2項の規定により特許権の効力を回復してから公告されるまで、善意で実施し、又は既に必須の準備を完成したとき、薬事法に規定される薬物試験登記許可を取得し、又は国外薬物販売許可を目的として行う研究、試験及びその必要行為は共に特許権の効力が及ばない事項。また、権利消尽の原則は国際消尽又は国内消尽原則を採るかは立法政策に属するため、裁判所によって事実に基いて認定することができないので、今回の改正は明確に国際消尽原則を採用する。(改正条文第59条及び第60条)

13.排他的実施許諾の関連規定を明確に規定する。

実施許諾は排他的実施許諾又は非排他的実施許諾にすることができると規定し、排他的実施許諾の定義並びに排他的実施許諾及び非排他的実施許諾の再実施許諾について明確に規定する。(改正条文第64条及び第65条)

14.無効審判請求の関連規定を改正。

職権による審査制度を廃止。無効審判を請求できる事由を改正。無効事由は許可査定時の無効審判規定によって行うと明確に規定。しかし、分割、出願変更又は補正が出願時の開示された範囲を超え、又は補正が実質的に公告時の特許権範囲を拡大又は変更したとき、これらは共に本質的事項に属するから、許可査定時の無効審判事由に規定されていなくても、やはり無効審判を行うことができる。また、手続きの規定部分について、部分的請求項について無効審判請求を提起できる。無効審判の請求にについて職権による斟酌、合併審査、合併査定及び無効審判決定前に取り下げできる規定を増設。並びに職権による補正通知の規定を削除。(改正条文第73条、第75条、第77条及び第80条から第84条まで)

15.特許特別許可実施の規定を改正。

「特別許可実施」の用語を「強制許諾」に改正し、申請事由、要件を含み、その関連規定をも改正。なお、強制許諾処分を作成するときに、同時に補償金を査定しなければならないと規定する。(改正条文第89条から第91条まで)

16.公共衛生議題に関する規定を増設。

世界貿易機関(WTO)が開発途上の国及び低開発国家に協力して需要の医薬品を取得してその国内の公共衛生の危機を解決することに合わせて、需要の医薬品の生産を強制許諾と共に本メカニズムを適用して強制許諾の申請を適用する範囲を明確に規定する。(改正条文第92条及び第93条)

17.特許権侵害の関連規定を改正。

権利者の民事救済請求権の性質に基いて損害賠償請求権及び侵害排除・防止請求権を規定する。損害賠償請求は侵害の行為者が主観的に故意又は過失があることを必要とする。合理的権利金をもって損害賠償計算の方式とすることができることを増設。権利者の損害について法律上合理的補償の最低限度を設けると共に挙証責任の負担を適度に免除する。なお、特許表示規定の目的をはっきりさせるため、表示をしていないものについて損害賠償請求できない規定を削除。(改正条文第98条から第100条まで)

18.実用新案特許制度の全体的な配合規定を改正。

同一人が同じ日に同じ創作をもって別々に発明及び実用新案特許を出願したものについて、発明が許可査定前に一つを選択する通知規定を増設。発明を選択した場合、その実用新案特許は始めから存在しない、実用新案を選択した場合、その発明は特許を与えない。実用新案の修正が明らかに出願時の範囲を超えるものを、特許を与えない事由とすると増設。実用新案の特許権者が権利を行使するときに注意すべき義務を改正。実用新案特許の修正について形式審査制度を採るが、無効審判と合併審査する時は、実質的審査を採用すると合併査定を行う。(改正条文第32条、第114条、第119条及び第120条)

19.デザイン特許制度の全体的な配合規定を改正。

デザイン特許制度に関して、部分意匠、Computer-Generated IconsIcons、アイコン)、Graphical User InterfaceGUI、グラフィカルユーザインターフェース)及び組み物の出願を開放する。派生意匠制度(Derivative Design)を新設すると同時に連合意匠制度を廃止する。(改正条文第123条、第129条及び第131条)

20.経過措置の条文を増設。

今回の改正要点は動植物特許の開放、猶予期間主張できる事由を増設、発明特許初審許可査定後分割出願できる、実用新案特許の単純な訂正申請は形式審査を採用、無効審判請求、補正及びデザイン特許の関連規定等事項を含む。いずれも特許制度の重大な変革であるので、新旧法の経過措置を詳しく規定して適用に資する。(改正条文第151条から第160条まで)

21.本法の施行日は行政院がこれを定めると規定する。

今回の法改正は特許法全般的改正で、実務作業手続もまた併せて調整改正しなければならず、なお、多くの特許制度の重大な変革事項を増設する故、十分な準備と対応する時間が必要。さらに各界に十分な理解及び法改正後の制度の運営に適応させる必要があるため、改正特許法の施行日は行政院がこれを定めると規定する。(改正条文第162条)

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