台湾意匠新規性の審査原則 -2005年3月3日経授智字第09420030140号経済部令(摘訳)- 2.3 新規性の審査原則 出願意匠の新規性を審査するときは、図面の説明で開示されている意匠と一先行技術とを対比しなければならず、出願意匠は、複数の引用例の全て若しくはその一部の技術内容の組み合わせ、又は一引用例の一部の技術内容の組み合わせ、又はその他の形式により既に公開されている先行技術の内容と組み合わせて対比してはならない。 また、出願意匠の新規性を審査するときは、図面の説明に開示されている意匠と一先行技術で既に開示されている対応する意匠とを対比しなければならない。例えば、出願意匠の主題が形状であり、先行技術により開示されているものが形状及び模様のときは、形状の部分のみを単独で対比して同一又は類似しているか否かを判断しなければならず、出願意匠の形状を先行技術の形状及び模様と対比してはならない。反対に、出願意匠の主題が形状及び模様であり、先行技術により開示されているものが形状のみの場合にも、先行技術では模様が開示されていないため、両者の形状が同一又は類似であるとしても、両意匠を同一又は類似であると認定してはならない。例えば、出願意匠が腕時計のバンドであり、先行技術においてバンドを有する腕時計が開示されている場合、二つの腕時計はバンドのみを単独で対比して同一又は類似であるか否かを判断しなければならず、腕時計のバンドと腕時計とを対比してはならない。反対に、出願意匠はバンドを備える腕時計であり、先行技術に腕時計のバンドのみが開示されている場合、先行技術には腕時計本体が開示されていないため、両者の腕時計のバンドが同一又は類似であっても、両意匠を同一又は類似であると認定してはならない。 2.4 新規性の判断基準 新規性の審査は、図面の説明に開示されている出願意匠の全体を対象としなければならない。もし出願意匠が引用例にある一先行技術に開示されている設計と同一又は類似し、設計が施された物品と同一又は類似である場合、同一又は類似であり新規性を備えていないと認定しなければならない。 同一及び類似の意匠には以下の四態様があり、そのうちの一態様に属する場合、新規性を具備しないとする。 (1)同一物品に応用された同一の設計は、同一の意匠である。 (2)同一物品に応用された類似の設計は、類似の意匠である。 (3)類似物品に応用された同一の設計は、類似の意匠である。 (4)類似物品に応用された類似の設計は、類似の意匠である。 2.4.1 判断主体 専利法第117条第2項では、意匠内容を理解する者とは当該意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者でなければならないと規定している。そのため、出願意匠及び先行技術の実質内容を認定するときには、当該意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者を主体としなければならない。 専利法第110条第1項では新規性を審査する判断主体が規定されていないか、他人が消費市場において登録意匠の剽窃又は模倣行為を排除するため、専利制度が出願人に与える排他的独占権の意匠権の権利範囲には同一及び類似の意匠が含まれている。そのため、意匠の同一又は類似を判断する際、審査人員は市場消費形態を模擬し、当該意匠の物品が属する分野における通常の知識及び認知能力を備えた消費者(本章では、以下「一般消費者」とする)を主体としなければならない。そして、商品を選択購買する観点から見て、出願意匠を引用例の先行技術と対比して同一又は類似しているか否かを判断する。一般消費者は物品の属する分野における専門家又は専門の設計者ではないが、物品の属する分野により異なるレベルの知識又は認知能力を備えている。例えば、日常用品の一般消費者は一般大衆であり、医療器材の一般消費者は病院のバイヤー又は専門の医師である。 2.4.2 物品の同一及び類似の判断 同一の物品とは用途又は機能が同一の物を指す。類似物品とは、用途が同じで機能が異なるものと用途が相似しているものとを指す。例えば、腰掛けと背もたれ椅子との場合、背もたれ椅子には背もたれ機能が付加されているため、両者は用途が同じであるが機能において異なる。万年筆とボールペンとの場合、両者は筆記するという用途において同じであるが、インクを供給する機能において異なるため、類似物品に属する。またダイニングテーブルと学習机とのように、両者の用途が相似したものも類似物品に属する。 例えば、自動車と玩具の自動車とのように、用途が同一でも相似でもない物品同士は、同一でも類似でもない。例えば、万年筆とペンキャップとのように、物品同士の関係が完成品と構成部品との関係である場合、両者の用途及び機能は同一でないため、それらは同一でも類似でもない。 出願意匠が施された物品を認定するときは、物品名称を基準としなければならず、その際には創作説明に記載された用途及び図面において開示されている使用状態又はその他の補助図面を参酌することができる。物品の同一及び類似を判断する際、特に用途が相似している物品は、商品の生産販売又は実際の使用情況を考慮しなければならず、「意匠の国際分類(International Classification for Industrial Designs)」を参酌することもできる。 2.4.3 設計の同一及び類似の判断 設計の同一及び類似を判断するには、出願意匠及び引用例の先行技術の実質的な内容を先ず認定してから、下記の2.4.3.2「判断方式」を用いて、出願意匠と引用例の先行技術との差異を対比し、両者の意匠が同一又は類似しているか否かを総合的に判断しなければならない。 2.4.3.1 判断原則 新規性を審査する場合、審査人員は一般消費者が商品を選択購買する観点を模擬し、出願意匠が引用例で開示されている一先行技術と同一又は類似しているか否かを対比・判断しなければならない。商品の選択購買経験を基に、一般消費者に出願意匠を先行技術だと誤認させる視覚印象を与え、混同する視覚印象を発生させると判断した場合、出願意匠は先行技術と同一又は類似していると判断しなければならない。 2.4.3.2 判断方式 2.4.3.2.1 全体観察 出願意匠は、図面により開示されている点、線、面により構成された意匠の三次空間の全体設計であり、その設計の同一及び類似を判断するときは、図面により開示されている形状、模様、色彩から構成された全体設計を観察及び判断の対象にしなければならず、各設計の要素や細部の差異には拘泥せずに機能設計を排除しなければならない。また、設計の同一及び類似を対比するときは、出願意匠の全体設計は引証例で開示されている先行技術と対比しなければならず、両者の六面図を図面ごとに対比してはならない。 以下の三点は行政法院の判決要旨であり、意匠設計の同一及び類似を判断するには全体の設計を対象にしなければならない。 (1)意匠は新規性を有する創作でなければならない。即ち、全体的に観察したときの主要特徴が、現在ある製品と同一又は類似であってはならない。(74年判字第520号判決) (2)意匠の要部の造形特徴が引用例の主要な造形特徴と同一であり、両者の全体外観を比較し、隔離して全体観察しても、その差異が識別できないときは、類似が構成される(74年判字第456号判決)。 (3)物品造形が異なるとき、意匠権を取得することができる(74年判字第113号判決)。 2.4.3.2.2 総合判断 審査人員が設計の同一及び類似を判断するときには、一般消費者が商品を選択購買する観点から模擬しなければならない。そして、この観察及び対比を行うときは、全体設計を対象としなければならず、商品の局部設計を対象としてはならない。そのため、審査の際には各局部設計を対比した結果を考慮して、主要な設計特徴を重点にしてから、その他の補助的設計特徴から構成された出願意匠の全体設計が統合された視覚効果を総合して、先行技術と同一又は類似するか否かを客観的に判断する。 設計の同一又は類似を判断するときには、出願意匠の全体設計を対象にする場合であっても、その重点は主要設計の特徴にある。主要設計の特徴が同一又は類似であり、補助的設計特徴が異なる場合、全体設計は相似であると原則上認定しなければならない。これと反対に、主要設計特徴が異なる場合、補助的設計特徴が同一又は類似であっても、全体設計は同一又は類似でないと原則上認定しなければならない。 2.4.3.2.3 主要設計特徴を重点とする 主要な設計特徴とは、一般消費者の注意を引き付け易い設計特徴を指す。例えば、自動車の設計の主要な設計特徴は車体底部以外の外観輪郭及び設計構成等であり、表面局部の形状修飾又は小パーツの増減ではないため、車両の外観輪郭及び設計構成が同一又は類似である2台の自動車は、その内の1台にエアスポイラーを増設したとしても類似の意匠に属する。また、簡単な幾何形状であるティーカップの主要な設計特徴は、表面の模様デザインにあり、全体の外観輪郭又は設計構成でないときに、外観輪郭又は設計構成が同一である2個のティーカップのうちの1個に特異な模様が施されている場合、両者は同一又は類似の意匠とはならない。 主要設計特徴には、新規性の特徴、視覚正面又は使用状態下の設計という以下の三類型がある。 (1)新規性の特徴 新規性の特徴とは、出願意匠を先行技術と対比し、客観的に見て新規性、創作性等の専利要件を備えた創新内容を指し、それには視覚を通じて訴える視覚性の設計が含まれており、機能性の設計は含まれていない。 図面の説明に記載された新規性の特徴とは、出願人が主観的に認知した出願意匠の創新内容であり、先行技術の検索を通して、出願意匠と先行技術とが同一でも類似でもなく、創作性等の意匠要件を備えている場合にのみ、当該意匠の新規特徴を客観的に認定することができる。審査の際には、先ず創作説明に記載された内容を基礎として、検索により出願意匠と先行技術とを対比した後にのみ、審査人員は認定した新規特徴を主要設計特徴とすることができる。 (2)視覚正面 意匠は、六面図により開示されている図形構成物品の外観からなる設計であり、一般に立体物の場合、六面図の各図は全て重要であるが、ある物品の六面図は一般消費者の注意を引く部位ではない。このような物品の場合、一般に物品特性により、一般消費者が商品を選択購買又は使用するときに注意を引く部位が視覚正面である。例えばクーラーの操作パネルや冷蔵庫のドア等が視覚正面となる。このような意匠を審査するときは、視覚正面及びそれにより開示されている新規特徴を主要設計特徴とし、その他の部位に特殊設計が施されていない場合、一般には同一及び類似の判断には影響を与えない。 (3)使用状態下の設計 商業競争、消費者及び運送等に対する様々な要求に応えるため、物品の設計形態は多元的に発展しており、例えば文具の組み合わせは若干の部品の組み合わせからなる若干の形態からなってもよい。折畳み式物品は使用状態に伸ばしたり収納状態に折畳んだりすることもできる。変形ロボット玩具は、若干の異なる形態に変換することもできる。このような意匠を審査するときは、使用状態における設計とそれにより開示されている新規特徴を判断対象としなければならない。例えば、折畳み式物品を伸ばした後の使用状態と折畳むことのできない物品とが同一又は類似の設計の場合、折畳んで収納する状態の設計が異なっていても、出願意匠は先行技術と同一又は類似の設計であると判断しなければならない。 2.4.3.2.4 肉眼による観察、直接又は間接対比 設計の同一及び類似の判断は、一般消費者が商品を選択購買する観点の模擬であるため、肉眼をもって観察することのみを基準としなければならず、一般消費者が類似した設計を類似しないものと混同することを防ぐため、機器の助けにより意匠細部の差異を観察してはならない。 一般消費者が商品を選択購買するときは、売り場近くにある商品を並べて直接観察して対比する以外に、商品の選択購買の経験により発生する視覚印象のみにより、異なる時間と場所において商品を隔離して間接的に観察及び対比を行う可能性もある。そのため、出願意匠と先行技術とを並べて、肉眼で直接観察して対比し、一般消費者に視覚効果の混同が発生する場合、出願意匠は先行技術と同一又は類似した設計と判断しなければならない。もし直接対比観察した結果、視覚効果に混同を発生させず、間接対比観察した結果が一般消費者に視覚効果の混同を発生させる場合には、出願意匠は先行技術と同一又は類似すると判断しなければならない。行政法院71年判字第399号及び第877号の判決要旨では、二つの意匠物品の主要設計特徴を隔離観察して、混同又は誤認を発生させる虞がある場合、その付属部分の外観を僅かに変更しても、類似しないということはできないと指摘している。 2.4.3.2.5 その他の注意事項 (1)設計の類似範囲の広さ 世界で初めて作られた電子腕時計の外観設計等といったパイオニア発明の設計や、1960年代に宇宙船のデザインが導入された自動車設計の新しい潮流の設計等といったパイオニア的トレンドを有する設計は、関連物品において唯一無二の創作である。そのため、このような物品は改良された既有物品とを比べても、市場における競争商品は少なくて設計空間が広いため、比較的高い創造性と多くの開発資源が必要となる。創作を奨励するため、その設計の請求範囲は既有物品を改良したものよりも広くなければならない。また、パイオニア的設計の出願意匠を審査する時は、引用例を検索することが比較的困難である。 (2)透明物品の内部を見通すことのできる設計と物品本体の光学効果とを考慮 意匠は物品外観に適用される設計であるが、物品表面の透明材料を通して物品内部を観察することができたり、物品の全体又は局部が屈折や反射により光学効果を発生させたりすることができるときには、その外観設計のみを審査対象にしてはならず、その外観設計及び図面により開示されている内部視覚の設計又は物品の光学効果と合わせて、総合的に対比・判断しなければならない。 (3)機能性設計は対比・判断の範囲ではない 設計の同一及び類似の判断とは、出願意匠が視覚を通して訴える設計と先行技術とが混同されているか否かの判断である。物品の構造、機能、材質又はサイズ等は、物品上の機能設計に通常属し、意匠の審査範囲には属さないため、外観に現れていても、対比・判断を行う内容とすることはできない。