事務所情報 | 出版物品 | 2005年9月
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台湾意匠創作性の審査原則

200533日経授智字第09420030140号経済部令(摘訳)

3.3
 創作性の審査原則 意匠法は、視覚を通して訴える創作を保護し、その創作内容とは物品外観の設計であって物品自体ではない。出願意匠の実質内容は、物品に結合された設計により構成されており、創作性の審査は図面で開示されている点、線及び面により構成されている出願意匠の全体設計を対象にして、容易に思いつくか否かを判断し、容易に思いつく場合その意匠は創作性を備えていないと判断しなければならない。意匠物品に関しては、出願された意匠物品と先行技術との差異のみを考慮し、意匠の物品自体の創作性を考慮する必要はない。 創作性を審査するときには、複数の引用例の全て若しくは一部の技術内容の組み合わせ、又は一引用例の一部の技術内容の組み合わせ、又は引用例の技術内容とその他の形式で既に公開されている先行技術内容との組み合わせにより、出願意匠の全体設計が容易に思いつくか否かを判断することができる。 3.4 創作性の判断基準 創作性を審査するときは、出願意匠の全体設計を対象にしなければならず、その意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者が出願日(優先権を主張している場合には優先日)前に存在する先行技術を基に当該意匠が容易に思いつくと判断したときには、その意匠は創作性を備えていないと判断しなければならない。また、出願人が補助的な証明資料を提供したときには、補助的な証明資料を参酌して判断することができる。出願意匠が創作性を備えているか否かを判断するときには、創作説明及び出願時の通常の知識を参酌して当該意匠を理解することができる。 出願意匠が創作性を備えているか否かは、通常以下のステップにより判断する。ステップ1:出願意匠の範囲を確定する。ステップ2:先行技術で開示されている内容を確定する。ステップ3:出願意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者の技術水準を確定する。ステップ4:出願意匠と先行技術との差異点を確認する。ステップ5:出願意匠と先行技術との差異点が、当該意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者が、出願前の先行技術及び通常の知識を参酌して容易に思いつくか否かを判断する。 3.4.1 基本原則 創作性を審査するときは、出願意匠の全体設計を対象としなければならない。つまり、全体設計を基本的な幾何学線又は平面等の設計要素に分解してから、設計要素が既に先行技術に現れているかどうかを調べるのでなく、審査の過程において、全体設計が視覚上、区画範囲の調査が既に先行技術又は公知設計において開示されているか否かを調べるとともに、全体設計が容易に思いつくか否かを総合的に判断しなければならない。一般のシャープペンシルを例にとると、押圧芯タンク部、ペンホルダー環、ペンホルダー、円柱形ペン本体、滑り止めが設けられたグリップ部、円錐状筆先端部等は全て視覚上区別することのできる範囲である。ここで注意しなければならないことは、すでに先行技術の引用例で開示されているものが多いほど、この全体設計は容易に思いつくと認定するべきでないという点である。 創作性を審査するときは、出願意匠と先行技術とを対比しなければならない。もし意匠の全体又は主要設計特徴が自然界の形態、著名な著作物を模倣したものであるかその他公知の先行技術を直接に転用したものであることが明白であるときに、その全体設計に何ら特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつき、創作性を備えていないと認定しなければならない。意匠の全体設計と先行技術とが同一でも類似でもなく、同一でも類似でもない部分が単にその他の先行技術の置換え又は組み合わせ等であるか、同一でも類似でもない部分が単に非主要設計特徴の局部設計の変更、増加、削減又は修飾等であり、特異な視覚効果を発生させない場合にも、当該意匠は容易に思いつくことができて創作性を備えていないと認定しなければならない。但し、同一でも近似でもない部分が全体設計に特異な視覚効果を発生させるときにも、当該意匠は創作性を備えていると認定しなければならない。 視覚効果が特異性を備えているか否かの判断は、出願意匠に含まれる形状、模様の新規特徴(即ち創新設計内容)、主体の輪郭タイプ(即ち外周基本型)、設計構成(即ち設計要素の配列レイアウト)、造形比率(例えば長幅比、造形要素の大きさの比率等)、設計イメージ(例えば剛柔、動静、寒暖等)、主題形式(例えば三国演義、八仙過海、緑竹、寒桜等)又は表現形式(例えば反復、均衡、対比、律動、統一、調和等)等の設計内容を先行技術と対比して行う。前述各項の設計内容は設計の実質内容の一部に属し、それを出願意匠が容易に思いつくか否かの参考事例のみとして判断する目的は、審査人員が万象を網羅している設計の実質内容が、当該意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者の多元化された観点に合致する創作性を備えているか否かを客観的に判断することにある。しかし、ここで注意しなければならないことは、審査では、各項の設計内容によりその創作性を探求するのではなく、各項の対比結果により全体設計が容易に思いつくか否かを総合的に判断するということである。 3.4.1.1 自然界の形態の模倣 自然界にある形態は予期することのできない成果であり、自然界にある形態を模倣することは意匠の創新に対して実質的な助けとはならない。そのため、出願意匠の全体又は主要な設計特徴は動物、植物、鉱物、虹、雲、太陽・月・星、山・川・海等といった宇宙の万物や万象等を直接に応用したものであり、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、容易に思いつくため創作性を備えていないと認定しなければならない。 3.4.1.2 自然物又は自然条件の利用 出願意匠の全体又は主要な設計特徴とは、自然物又は自然条件により構成されたランダム又は偶然に構成された形状又は模様であり、同一の設計手法で再現して大量に製造することができない場合、当該意匠には産業上の利用性がないと認定しなければならない(本章1.2「産業上の利用性の概念」を参照)。また、ランダム又は偶然につくられた形状又は模様は予期することのできない成果であっても、それが出願意匠の全体又は主要な設計特徴であり、当該意匠を工業工程により大量に製造することができる場合、当該意匠は創作性を備えていないと認定しなければならない。 ランダム又は偶然につくられた形状又は模様は出願意匠の全体又は主要な設計特徴ではないが、当該意匠の全体設計が特異な視覚効果を有する場合、当該意匠は創作性を備えていると認定することができる。例えば、インクをかけて偶然につくった模様を写真製版し、その製版により得られた模様を構成ユニットの一つにするとともに、その他の構成ユニットと組み合わせて準備し、全体の模様設計を完成させたとき、その全体設計が特異な視覚効果を有する場合、当該意匠は創作性を備えていると認定することができる。 3.4.1.3 著名著作物の模倣 出願意匠の全体又は要部の特徴が、当該意匠の属する技術分野における通常の知識を有するものが既に知っている著作物、建築物又は画像等の著名な著作物を模倣したものである場合、当該意匠は容易に思いつくと認定しなければならない。例えば張大千、朱銘、ミケランジェロ、ピカソ等の美術著作物、朱徳庸の漫画のキャラクター、ウォルトディズニーのキャラクター、総統府、プラミッド、関渡吊橋、パリのエッフェル塔等の全部又は局部を物品の外観へ表現して出願意匠の全体又は要部の特徴が構成されている場合、当該意匠は容易に思いつき、創作性を備えていないと認定しなければならない。ただし、例えば総統府の形がユニット構成の物品外観の全体模様であり、特異な視覚効果が発生されている場合等、著名著作物が修飾又は再構成された場合には、出願意匠には著名著作物が含まれ、当該意匠には創作性があると認定されなければならない。 3.4.1.4 直接転用 創作性を審査するとき、先行技術の分野は意匠請求範囲の主題の技術分野には限定されない。出願意匠の全体又は要部の特徴が、他の技術分野の先行技術を直接に転用したものである場合、当該意匠は容易に思いつくものであると認定しなければならない。例えば、出願意匠が自動車の設計を玩具に転用したものであったりコーヒーカップを筆立てに転用したものであったりした場合、当該意匠は容易に思いつくものであると認定しなければならない。物品を製造上又は商業上のニーズに合わせて、出願意匠の要部でない部分の設計特徴を再修飾し、全体設計に特異な視覚効果が発生しない場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。 3.4.1.5 置換え、組み合わせ 出願意匠の全体又は要部の設計特徴が、関連先行技術の要部設計を公知の形状又は模様、自然界の形態、著名著作物又はその他出願前に既に公開されている先行技術により構成されているか、その全体又は要部設計の特徴が前述の形状若しくは模様又は先行技術の要部設計を複数組み合わせたものにより構成されており、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつくものと認定しなければならない。例えば、公知の大同電気炊飯器の円錐形取っ手を公知の電気炊飯器の矩形枠形ハンドルへ置換えたり、スヌーピーの人形をサンタクロースの赤いコートと組み合わせただけの意匠は全て容易に思いつくものと認定しなければならない。製造上又は商業上のニーズに合わせて、物品を意匠の非主要設計特徴を再修飾しても、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。 3.4.1.6 位置、比例、数等の変化  出願意匠の全体又は主要な設計特徴が関連先行技術の設計における比例、位置又は数が変化されたものにより構成されていて、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつくと認定しなければならない。例えば、ティーカップとカップカバーの高度比を4:1から1:1へ変えたり、公知の電話機のキーと音声孔の位置を入れ替えたり、公知の横向配列の3ランプ式交通指示灯を縦向配列の5ランプ式交通指示灯へ変えたりしただけのものは、全て容易に思いつく意匠と認定しなければならない。物品の製造上又は商業上のニーズに合わせて当該意匠の主要でない設計特徴を再修飾し、全体の設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。 3.4.1.7 局部設計の増加、削減又は修飾 出願意匠の全体又は主要設計特徴が、関連先行技術の局部設計の増加、削減又は修飾されたものにより構成されているものであり、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつくと認定しなければならない。例えば、公知の4ランプ式吊り下げランプを、5ランプ式又は6ランプ式の吊り下げランプにして要素数を増加したり、公知の一体成形されたコーヒーカップの取っ手を削除したり、壁掛時計の単層円形表示板の修飾を多層円形に変えただけのものが、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。 3.4.1.8 公知設計の運用 出願意匠の全体が三次元空間又は二次元空間の公知の形状又は模様を利用しているものであり、基本的な幾何学、伝統的な画像、公知又は教科書、参考書等によく掲載されている形状又は模様等である場合、当該意匠は従来の設計を運用したものであると認定しなければならない。例えば、出願意匠が一つの要件であり、それが矩形、円形、三角形、卵形、梅花形、亜鈴形、螺旋形、星形、雲形、弓張月、雷紋、饕餮紋(古代伝説の悪獣)、龍形、鳳形又は仏、釈、道図像等の公知の平面、立体の形状又は模様を当該要素の設計とした場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。 出願意匠の全体が公知の形状又は模様を構成要素とし、左右、上下、前後、斜角、放射、碁盤式、等差級数及び等比級数等の基本構成タイプにより構成されたものであり、全体設計に特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。例えば、観音菩薩及び蓮花座形の灯具設計が、単に公知の観音菩薩像と蓮花座形とを結合し、上下垂直に配列して全体設計を構成したものであり、特異な視覚効果が発生していない場合、当該意匠は容易に思いつき創作性を備えていないと認定しなければならない。 理論上、全ての色は赤、黄、緑の三原色を異なる比率で混合することにより作り出すことができる。しかしながら、実務上は、既にある色彩体系から設計に必要な色を選択することもできる。出願意匠が僅か一色しか含んでいない場合、単にその色彩にとっては、色彩体系から一色を取り出して当該意匠に施しただけの場合、特異な視覚効果を発生させることは困難であるため、容易に思いつくものであると認定しなければならない。出願意匠に複数の色が含まれている場合、その設計には各色が用いられる色の空間、位置及び各色の分量、比率等の色彩計画が含まれ、まず色に用いられる空間、位置の一部に属しても、単にその色彩にとっては、色彩体系から色彩を選択して単に用いる色の空間、位置へ施したものが、全体設計に特異な視覚効果を発生させていない場合には、容易に思いつくものと認定しなければならない。 3.4.2 創作性の補助的判断要素(secondary consideration) 出願意匠が創作性を備えているか否かは、主に前述した基本原則により審査を行う。出願人が補助的な証明資料を提供してその創作性を証明するときには、一緒に参酌しなければならない。出願意匠により製造された製品が商業上成功しており、その成功が販売技術や広告宣伝によるものでなく、意匠の新規性の特徴によることを直接証明できる証拠を出願人が提出することができる場合、当該意匠は容易に思いつくことができないものの証拠とすることができる。 3.5 審査における注意事項 ()出願意匠が創作性を備えていないと認定するときは、原則として引用資料を添付しなければならない。しかし先行技術が、字典、教科書や参考書等で開示されている公知設計や広く利用されている情報である場合には、これに限らない。ただし拒絶理由は査定書に十分示されなければならない。 ()創作性を審査するときは、図面の説明で開示されている意匠から発生する「後見の明」のみで当該意匠は容易に思いつき、創作性を有していないと判断してはならず、出願意匠の全体設計を関連先行技術と対比して、当該意匠が属する技術分野において、通常の知識を有するものが出願時の通常の知識からの観点を参酌して、客観的に判断しなければならない。 

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