P2P　音楽ファイル交換サイト｢ezPeer｣に対する刑事訴訟の一審判決は無罪 

ピアツーピア（P2P）のウェブサイト｢ezPeer｣において、ユーザに他人の著作物である音楽ファイルを公開伝達してダウンロードさせている行為に対し、台湾音楽業界は連合でezPeer社の代表者に対し刑事訴訟を提起した。2005年6月30日士林地裁は当該代表者に無罪判決を言い渡した。この判決は、アメリカ連邦最高裁判所が2005年6月27日に言い渡したP2Pのファイル交換で著作権を侵害する事件の結論（ファイルの交換ソフトを提供する業者は侵害行為に対して責任を負わなければならない）と全く正反対の判決であったため、輿論は騒然とした。また、この判決により知的財産権保護に対する台湾の評価は下がるのでないかと見られている。

士林地方裁判所の刑事法廷において被告が無罪となった判決の主な理由は、被告人自身は違法な公開送信及び複製行為を行っていない上、被告人は実際に公開送信及び複製を行った使用者との「共犯」関係が成立していないことである。そして、「刑法の最後の手段性」及び「罪刑法定主義」の原則により、ezPeer社の代表者に対して無罪が言い渡された。しかし、同裁判所は｢当該事件は刑事判決であり、被告人の会社が著作権侵害の民事責任を負うべきか否かについては、当該刑事訴訟事件の審理範囲内にない｣ことも同時に強調している。なお同判決を用途から見た場合、P2Pは一種の新型のインターネット通信ツールであると認められるため、合理的使用の空間があり、刑事処罰の免責条件があると認めている。しかも、同社は「刑法が許容しないリスク」をつくっておらず、当該ツールはインターネットのユーザに合法又は非合法な重要技術および手助けを提供しているが、台湾の法令にはインターネット業者が「内容を濾過する義務」を負うという規定が無いため本事件は犯罪を構成せず、今後発生する類似の事件も法改正しなければ解決できないと付け加えている。

これに対し知的財産局は以下のようにコメントしている。科学技術の中立という原則に基づき、ソフトウェアの開発者又は提供者は、研究開発や提供を行うことにより法律責任が当然に発生するのではなく、具体的な個々の事件において当事者がこれらの科学技術を如何に運用するかによって決定されるべきである。例えば、ソフトウェア業者がそのソフトウェアの提供行為によって利益を得ている場合、使用者の侵害の事情を知り、それをコントロールする権利や能力があるときには、やはり侵害と認定される可能性がある。一方、使用者にとっては、インターネットはどんなに遠い所にでも届けることができるため、他人の著作物をインターネットで公開送信及び複製をする場合、「合理的使用」が成立する余地は限られ、使用者がたとえ毎月いくらかの会費を特定のソフト会社に支払っているとしても、これらの行為が著作財産権者の同意を得ていなければ、やはり侵害を構成するおそれがある。

結論から言えば、著作権法第65条第1項において、著作物の合理的使用は著作財産権の侵害を構成しないと規定しているが、著作の利用が同法第44条から第63条までの規定に合致するか否かやその他合理的使用の事情があるか否かは、すべての情況を参酌して判断しなければならない。また、一般民衆は法に触れないように、他人の著作物をインターネットにより無断でダウンロードしたり交換したりしないようにしなければならない。上記ezPeer社の事件の使用者が許諾を受けずに複製した行為はアメリカ連邦最高裁判所の判決理由を引用した場合、ソフトウェア業者には事実上インターネット使用者を誘ってその提供されたソフトウェアを利用させており、著作権のあるファイルを不法にシェアさせたことを示す「不法な意図」の証拠が十分あるため、民事上の侵害行為を構成する。全体の環境について言えば、デジタル音楽は将来主な潮流となるため、判例によりインターネットによるダウンロードを禁止するよりもむしろ合法的に消費者がデジタル音楽をダウンロードできるようにした方が好ましい。そのため、行政機構は著作権の権利者と業者との協力を進めて「合法的な許諾使用システム」を作って、問題を徹底的に解決するべきである。