事務所情報 | 出版物品 | 2006年6月
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台湾専利法における進歩性の概念並びに進歩性の審査原則 

2006627日、中国専利(発明、実用新案、意匠)の出願件数は300万件を突破したと国家知識産権局(SIPO)が発表された。

中国専利法は198541日に施行してから2000年の始め頃までの15年近い期間に専利(発明、実用新案、意匠)の出願件数は100万件を突破した。その後42ヶ月を経過したあと、専利の出願件数は200万件を突破した。また、23ヵ月を経過したあと、専利の出願件数は300万件を突破した。前の二つの100万件と比べると、三つ目の100万件は以下の特徴を見せている:

専利出願の成長スピードが極めて迅速で猛烈である。発明専利の出願量の増加幅は極めて顕著である。三種類の専利の出願件数は6年連続で年平均成長率が20%を越えている。その中の発明専利の年平均成長率が25%を越えている。2005年度受理された三種類の専利の出願総件数は47.6万件に達している。前年度と比べると、34.6%成長した。その中、発明専利の出願件数は17.3万件に達しており、世界の第三位になった;20061月から5月まで、三種類の専利出願件数は20.4万件に達し、前年度と比べると30%成長した。その中、発明専利の出願件数は約8万件、33%成長した。

三種類の専利出願の構成は明らかな変化を見せている、専利出願の品質は穏健に向上している。最初の二つの100万件の中、発明専利出願比率はそれぞれ27.6%と32.4%、実用新案と意匠専利の出願比率は72.4%と67.6%、三つ目の100万件の中、発明専利の出願が占める比率は37.2%、実用新案および意匠専利出願の比率は合計62.8%。発明専利の出願比率がだんだん高まっている。この三つの100万件の専利出願の中、発明専利の内外国出願の構成も比較的大きい変化を見せている。その中、国内の発明専利出願が占める比率はそれぞれ47.7%、50.8%、53.1%となっている。

国内の職務出願の比率がさらに高まり、国内企業の専利出願の積極性が絶えず増強している。中国で受理されたこの三つの100万件の専利出願の中、国内の職務出願が国内出願に占める比率は31.3%、39%、41.2%の順になっている。国内の職務出台湾専利法第22条第4項において、「発明は第1項に記した事情がない場合でも、その属する技術分野における通常の知識を有する者が出願前の従来技術に基づいて容易に完成することができる場合、本法により発明特許を受けることができない。」と、特許の進歩性に関して規定している。

以下は、台湾智慧財産局が2004年7月1日に改正公布した特許審査基準の第二篇「発明特許実体審査」の第三章特許要件の第三節「進歩性」に関する箇所から進歩性の概念及び進歩性の審査原則を翻訳整理したものである。

3.2
進歩性の概念について
 
特許出願の発明が先行技術と異なっていても、当該発明の全体を当該発明の属する技術分野の通常知識を有する者が出願前の先行技術に基づいて容易に完成することができる場合には、当該発明は進歩性を備えない。
 

進歩性は特許発明を取得するための要件の一つであり、特許出願の発明が進歩性を備えているかどうかの判断は、新規性(新規性の喪失の擬制を含む)を有する特許出願に対して行うべきであり、新規性を有さないものには進歩性の判断を行う必要がない。

3.2.1その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者
 
「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」とは、その発明の属する技術分野における通常の知識及び通常業務、実験を行う普通の能力を有する者が、出願日(優先権を主張しているものは優先日)前の先行技術を利用して理解できる者を想定したものである。ここで「通常の知識(general knowledge)」とは、当該発明の属する技術分野における既に知られた普通の知識のことであり、それは公知または一般に利用されている情報および教科書または辞書類に記載されている情報、又は、経験則から知られている事を含む。解決しようとする課題が、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に、他の技術分野において課題を解決する技術手段を求めさせることができる場合、それは他の技術分野における通常の知識及び通常業務、実験を遂行する普通の能力を有するということである。

3.2.2
先行技術
 
進歩性を審査する際の先行技術とは、専利法第22条第1項の第1号及び第2号に記載されているように、出願前既に刊行物に記載された技術か、公然実施或いは公然知られた技術のことである。ここで「先行技術」とは、出願日前(出願日を含まない)に公衆が利用できるようにされた(available to the public)全ての情報を含み、国内外の場所、言語、或いは、例えば書面、電子、インターネット、口頭、展示または使用などを含む形式だけに限定されない。「公衆が利用できる」とは、公衆が接触できるようにされて実質的な内容を知ることができるようになった状態を指す。守秘義務を負うものだけが知っている状態の技術は先行技術でない。守秘義務の約束または暗黙の了解に違反して技術が漏らされ、当該技術の実質的な内容が公衆に知られた場合、当該技術は従来技術の一部を構成する。反対に、当該技術が機密状態に保たれて、公衆が接触してその実質内容を知ることができないときは、当該技術が出願前に既に存在していて守秘義務を負うものだけが知っていたとしても、先行技術ではない。守秘義務とは、明文規定された守秘義務だけを指すのではなく、社会観念上または商業習慣上、守秘義務の責任を負うべきであると暗黙に了解されている守秘義務も含まれる。例えば、会社に属する職員が会社の事務に対して通常負うべき守秘義務である。

当該先行技術には出願日及び出願日の後に公開或いは公告された技術は含まれず、専利法第23条に規定されているように、先に出願されて後願の出願後に公開又は公告された先願は含まれない。ここで注意しなければならないことは、原則上、進歩性を審査するときの先行技術は当該発明が属する技術分野か関連する技術分野に属さなければならないが、関連しない技術分野の先行技術と特許出願の発明とに共通する技術特徴がある場合にも、当該先行技術を適用することができる。

3.2.3
容易に完成できることと自明性
その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、一又は複数の引用例に開示されている先行技術を基に、出願時の通常知識を参酌して、先行技術を転用、置換え、改変又は組合せ等の方法により特許出願を完成した発明は、当該発明の全体が自明性に属し、容易に完成できる発明と認定しなければならない。自明性とは、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、先行技術を基にして、ロジック分析、推理又は試験を通して特許出願の発明が予期できることをいう。自明性は容易に完成できるという概念と同じである。

3.2.4
引用例
進歩性を審査するとき、特許出願の発明が特許要件を具備しているかどうかの判断にする引用例の関連規範は、第3章2.2.2の「引用例」に記載されている内容を準用することができる。ここで注意しなければならないことは、実質上含まれている内容が、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が出願時の通常の知識を参酌して、直接且つ正常に知り得る内容を指すということである(新規性を審査するときには引用例が公開されたときの通常の知識により判断しなければならない)。

3.3
進歩性の審査原則
 
進歩性を審査するときは、請求項ごとに記載された発明全体を対象として、当該発明が解決しようとする課題、課題解決の技術手段及び先行技術の効果とを比較して全体を考慮して、請求項ごとに判断しなければならない。各請求項を審査する際の原則は、第3章2.3.1「請求項ごとの審査」に記載された内容を準用すること。

 進歩性を審査するときは、複数の引用例の全部或いは一部の技術内容を組み合わせるか、一の引用例の技術内容の一部を組み合わせるか、引用例の技術内容とその他の形式により既に公開されている先行技術内容とを組み合わせることにより、特許出願された発明を容易に完成することができるかどうかを判断する。ただし、前述の技術内容の組み合わせは、請求項の出願日(優先権を主張するものはその優先日)に、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、自明(obvious)の場合にのみこれを行うことができる。

 技術内容の組合せが、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であるかどうかは次の事項を参照して決定すること。

(1)発明が解決しようとする課題に関しては、引用例の技術内容により当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に、開示された技術内容を一緒に組み合わせさせたものかどうか。二つの技術内容により開示された必要な技術特徴が元々互いに相容れない場合、その技術内容の組合せは自明でない。

(2)技術分野に関しては、引用例の技術内容が関連する技術分野に属するものかどうか。もしそれら二つの技術が関連しない技術分野に属する場合、その技術内容の組合せは通常自明でない。

(3)組合せの動機に関しては、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、一文書に記載された複数の技術内容を組み合わせる合理的な動機を有する場合、その技術内容の組合せは自明である。例えば、先行技術と教科書又は辞典類に開示された技術内容との組合せ、或いは、一文書及びその内容が既に明確に記述されている別の一文書、或いはその他の形式により明確に公開開示されている技術内容の組合せ、或いは、一文書と当該分野の通常の知識との組合わせたものである。

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