事務所情報 | 出版物品 | 2006年12月
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台湾商標法における商標稀釈(dilution/ダイルーション)の 実務上の取り扱いについて

台湾商標法第23条第1項第12号後段および同第62条第1号は商標稀釈化(dilution/ダイルーション)に関する規定である。第23条第1項第12号の本文には「他人の著名な商標または標章と同一または類似しており、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあり、または著名商標または標章の識別性または信誉・名声に損害を生じさせるおそれがあるものは、登録することができない」とあります。この号の規定の内容から前段の規定は関連する公衆に商品または役務の出所についての誤認を防止することにあり、後段の規定は著名商標の自身の識別性または信誉・名声を保護して減損または稀釈させないことにあることが分かる。同項第13号および第14号にいう「同一または類似の商品または役務」の構成要件と比較するとき、第12号には前段または後段の規定を問わず、「同一または類似の商品または役務」という文字がなく、厳格な文義解釈によれば、第12号の規定は商品また役務が同一または類似しているか否かを問わず、ともに適用がある。

商標法の改正施行して以来、実務上、第12号前後の規定に該当するかどうかの判断に関し、系争商標が他人の著名商標と同一または類似しており、系争商標の登録をして「関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがある」の構成要件に該当するかどうかを判断するとき、経済部知財局が公告された「混同誤認の虞れ」の審査基準に挙げられている諸関連する参考要素を参照して、その中の両方の商標が類似を構成するとともに引用商標が著名商標であることの二つの要素はその号の規定によれば必ず具備されなければならない要件であり、その他の参酌要素は個別の案件の中で存在されているか否かによって斟酌すべきである。従って実務上第12号前段規定の適用は両方の商品または役務が同一または類似を構成することを前提要件としないと認めているようである。しかしながら、商標法の改正施行して以来、とくに施行した最初の時期、第90条の規定のせいで実務上改正前の商標法で混同誤認の虞れと稀釈を区別しない概念を踏襲していたため、そのなされた幾つの関連する処分はたとえ両方の商品または役務がまったく類似しなくてもやはり第12号前段規定の適用があると認定している。然るに、消費者がまったく同じくない商品または役務について出所混同を生じさせる可能性がないため、12号前段の規定は単に両方商標の商品または役務が同一または類似を構成する案件に適用することに限るべきである。ただし、第12号前段「関連する公衆に混同誤認を生じさせる虞れがある」の構成要件を判断するとき、混同誤認の虞れの諸参考要素の間に相互作用関係を有するため、若し或るまたは幾つかの参考要素の合致程度がとくに高いとき、その他の参考要素の合致程度がたとえ比較的に低くても、やはり混同誤認の虞れの事情があると認められやすい。例えば、両方商標の類似程度がかなり高くて、かつ引用商標が相当な著名性を有するとき、たとえ商品または役務の類似程度が比較的低い場合でも、やはり混同誤認を生じさせる虞れがあると認められやすい。こうして、類似と非類似商品または役務の適用する境界線の区別を難しくする。ただし、混同誤認の虞れの諸参考要素の間に本来相互作用関係を有し、或るまたは幾つかの参考要素の合致程度がとくに高いとき、その他の参考要素の合致程度に対する要求を低くすることができる。従って、商品または役務の類似程度は比較的に低い場合であっても、やはり両方商標の商品または役務が類似を構成する前提要件と合致している。しかし、類似商品または役務の範囲は無限に拡大することも出来ず、若し両方商標の商品・役務がまったく競合関係を有せず、市場の隔たりがあり、かつ、営業利益の衝突情況が顕著でない場合、やはり両方商標の商品または役務が類似商品または役務の範疇に属すると認めることが難しい。故に、第12号の前段の規定の適用がない。若し第12号後段規定の適用範囲をアメリカ連邦最高裁判所及び欧洲裁判所と同一の見解を採り商品または役務が同一または類似であるか否かを問わず、ともに適用があると解釈された場合、却って第12号前段と後段の適用境界線の不明確を発生させる。

上記厳格な文義解釈によって発生する矛盾と適用上の不明確および困難を避けるため、伝統的混同の虞れの理論および商標の稀釈の原理から第12号の規定を解釈すべきで、第12号前段規定を単に同一または類似する商品または役務に適用し第12号の後段規定を単に非類似の商品または役務に適用すると解釈されなければならない。

また、第62条第1号は「他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら、その同一または類似の商標を使用し、或いは当該著名商標に構成される文字を自らの会社名、商号名、ドメイン名またはその他の営業主体または出所の標識とし、著名商標の識別性または名声に減損を生じさせるとき、商標権を侵害するとみなす」と規定している。これを同条第2号の規定:「他人の登録商標であることを明らかに知りながら、当該商標に構成される文字を自らの会社名、商号名、ドメイン名またはその他の営業主体または出所の標識とし商品または役務に関連する消費者に混同誤認を生じさせるとき、商標権を侵害するとみなす」とを対照してみる。第62条の規定が第23条第1項第12号の規定と同様、ともに「同一または類似する商品または役務」の文字がない。しかし、第62条第2号に規定する「商品または役務の関係する消費者に混同誤認を生じさせる」の構成要件から見た場合、その号の規定もまた単に同一または類似する商品または役務に適用し、そして第62条第1号の規定は上記に述べた如く、上記商標稀釈化概念の原理に基づき、同様に単に非類似の商標または役務に適用すると解釈されなければならないだろう。 


 

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