事務所情報 | 出版物品 | 2007年9月
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台湾知財裁判所の設置に伴う法制上の対応措置

2.1.2.1 著名商標として認定する参酌要素
著名商標の認定は個別案件の情況について、下記著名と認定しうる参酌要素等を総合して判断しなければならない。

1. 商標識別性の強弱。
識別性が強いほど商標が消費者に与える印象が深刻になり、より関連事業又は消費者に周知される著名商標になりやすい。例えば識別性が比較的に強い創意性商標が、任意性商標よりもっと容易に広く関連事業又は消費者に周知される著名商標になる。

2. 関連事業または消費者に知られる又は認識される商標の程度。
関連事業又は消費者が知っている又は認識している商標の程度は関連証拠によって証明されることができる。若し市場調査及び意見調査資料がある場合、関連事業または消費者が知っている又は認識している商標の程度の証拠とすることができる。

3. 商標を使用する期間、範囲及び地域。
商標の使用期間、使用範囲及び使用地域の証拠資料の提出によって商標が関連事業または消費者が周知される著名程度になったか否かを推論することができる。その重点は商標権者が実際に従事する商業活動にある。一般的に言えば、商標が使用する期間が長ければ長いほど、使用範囲及び使用地域が広ければ広いほど、その商標が関連事業または消費者に周知される著名程度に達する可能性が高い。

4. 商標を宣伝・広告する期間、範囲及び地域。
商標の宣伝・広告期間が長ければ長いほど、範囲及び地域が広ければ広いほど、その商標が原則として関連事業又は消費者に周知される著名程度に達する可能性が高い。ただし、若し商標の宣伝・広告の程度が非常に密集し広汎である場合、例えば広告、宣伝物品又は電子媒体(インターネットを含む)を通じて全国にわたって密集して掲載しまたは放送した場合、仮令商標の宣伝期間が長くなくても、その商標はやはり関連事業又は消費者に周知される著名程度に達する可能性がある。

5. 商標が出願されたか否かまたは登録されたか否か、及びその登録、出願登録された期間、範囲と地域。
著名の認定に関しては、争いに引用された商標権者が通常引用商標の実際の使用証拠を提出するほか、内外の関連登録資料をも添付して補助証拠としている。商標が世界各地で出願したか否か。または登録したか否か。及びその登録の数量、期間は、その商標が著名であるか否かを認定する参酌要素の一つとすることができる。商標が世界各地で出願または登録した数が多ければ多いほど、期間が長ければ長いほど、その商標が市場における広汎に使用されている補助証拠とすることができ、そしてその商標がすでに関連事業又は消費者に周知される著名程度に達すると認定されることに寄与する可能性が高い。

6. 商標がその権利を執行して成功した記録、特に行政又は司法機関により著名と認定された情況。
商標が、その権利を執行して成功した記録とは、例えばかつて異議申立審定書、審判決定書、訴願決定書または裁判所判決書等により著名と認定された情況。また、この要素を考量するとき、その権利を執行して成功した時点に注意しなければならない。著名商標の著名性は時間の経過によって変動するため、若しその権利を執行して成功した時点が処分したときを離れてから久しい場合、例えばかつて行政又は司法機関により著名商標と認定された時点が処分したときを離れてすでに3年間オーバーした場合、このとき、依然著名商標であるか否かはその他関連証拠を参酌して判断しなければならない。

7. 商標の価値。
原則として、商標の価値が高ければ高いほど、その商標が関連事業または消費者に周知される可能性が高い。

8. その他著名商標として十分に認定される要素。
上記著名商標と認定する諸参酌要素は、著名であるか否かを認定する例示であり、列挙する要件ではなく、かつ個別のケースでは必ずしも上記あらゆる参酌要素を現すのではなく、個別のケースで具体的な情況について十分に著名であると判断される参酌要素を考量しなければならない。

2.1.2.2 著名商標として認定する証拠
上記著名として認定される参酌要素の判断に当り、下記証拠をもって証明することができる。

1. 商品/役務の販売インボイス、販売証憑、輸出入証書及びその販売額、市場占有率、販売統計の明細等資料。

2. 内外の新聞、雑誌またはテレビ等マス・メディア広告資料、広告の版面のサイズ、金額、数量、広告放送依頼書、テレビ広告放送監視記録表、客車内外の広告、バス停、MRTの駅、高速道路の広告及び店の看板、立て看板等証拠資料。

3. 商品/役務の販売拠点及びその販売チャンネル、販売場所の配置情況。例えば百貨店、チェーンストアまたは各地のテナント・コーナーを設ける情況及び時間等証拠資料。

4. 商標が市場における評価、価格鑑定、販売額のランキングまたはその営業状況等資料。例えば、内外に公信力のある新聞雑誌で行ったグローバルトップブランド100ランキング、台湾で最も価値あるブランドトップテン、各類商標商品に対する消費者の満足度調査または中国語のネットディスカッション及びネット友達評価等証拠資料。

5. 商標の創造・使用時間及びその継続使用資料。例えば会社の歴史沿革及び簡単な紹介、広告看板の架設日日等証拠資料。

6. 商標が海外における登録資料。例えば登録証又は世界各国登録リストなど。

7. 公信力ある機構が出された関係証明または市場調査報告等資料。

8. 行政又は司法機関が作成した認定書類。例えば異議申立審定書、審判決定書、訴願決定書または裁判所判決書など。

9. その商標が著名であると証明する資料。例えば内外における展覧会、展示会で商品を展示し又は役務を販売促進する等の証拠資料。
なお、上記商標の使用証拠には、商標及び日日の表示又はその使用する商標及び日日を識別できる補佐資料がなければならない。かつ、その資料は国内のものに限らない。但し国外の証拠資料は国内関連事業または消費者がその商標を知りうるか否かをもって判断しなければならない。さらに、かつて著名商標として認定された具体的証拠を挙げている場合は、同一の証拠を提出して立証させることを商標権者に要求しないことができる。但し、個別案件の審査の必要上、商標権者に再び関連証拠を提出することを要請することもできる。例えば前案を後案と比較するとき、後案の両方商標の類似程度が比較的に低く、または商品/役務の類似程度が比較的に低い場合、その著名性を要求する程度は前案より高いはずではじめて混同誤認の虞があると認定される可能性が比較的ある。この場合、商標権者にさらに多くの関連使用証拠の提出を要求することができる。

2.2 関連する公衆に混同誤認を生じさせるを有することを判断する参酌要素
上記に述べたように、23112号前段と同項13号の規定は、共に「混同誤認するおそれ」を規範することにある。その立法趣旨は関連消費者に商品または役務の出所について混同誤認する虞を生じさせることを避けることにある。従って、23112号前段の規定を適用するとき、混同誤認するおそれの有無を判断する参酌要素及び各参酌要素の内容に関して、例えば商標識別性の強弱、商標が類似するか否か及びその類似する程度、先権利者の多角化経営の情況、関係消費者が各商標に対する熟知の程度などは、同項13号の規定と同じ、共に前記「混同誤認する虞に関する審査基準」を援用することができる。

このほか、混同誤認する虞の理論は、混同誤認する虞を判断する各参酌要素の間に、相互作用の関係があり、例えば商標の著名度が高ければ高いほど、仮令商品/役務の類似程度が比較的に低い場合、やはり混同誤認する虞を生じやすい。

さらに、その規定は同項13号の規定と同様、ともに商標類似の要件を言及しているが、しかし、商標の類似もまた混同誤認する虞を判断する参酌要素の一つであり、条文が特にこの項の参酌要素を構成要件として挙げているのは、商標の類似が混同誤認する虞を導く蓋然率が極めて大きいからである。しかし、これは絶対必然的ではなく、その他重要な要素の存在する可能性があるからである。例えば、二商標が市場においてすでに相当な時間に併存しており、ともに商品又は役務の関連消費者によく知られ、区別できる故、混同誤認する虞がない。従って、混同誤認する虞の判断はなるべく存在している関連要素を考量して総合的に判断して始めて比較的正確に混同誤認する虞の有無を判断することができる。

3. 23112号後段の規定の適用
2003
年改正商標法で23112号に「他人の著名商標又は標章の識別性又は信用・名声に損害を生じさせる虞がある」ものは、登録することができないと増設した。以前にも述べたように、この増設は実務上著名商標の識別性又は信用・名声に対する損害を保護する明文化である。故に、その趣旨は著名商標の識別性又は信用・名誉に対する損害を受けることを防止することにある。蓋し伝統的混同誤認する虞の理論の範囲は先に出願された商標と賛助関係、従属関係または連帯関係の連想があるまでに拡大してきているが、しかし、係争商標の登録に対して関連消費者に混同誤認を生じさせる虞がないが、著名商標自体の識別性又は信用・名誉に対する損害を生じさせる可能性がある情況、国外の立法例を参酌し、ともにダイルーション(dilution)の理論範疇に属しており、国際的に軌を一つにするため、特に混同する虞の理論とダイルーション(dilution)理論の体系を整理して明らかにする。原則として著名商標自身の識別性または信用・名誉に対する損害を保護することは、著名商標に対するより高い標準の保護であるので、他人が同一又は類似する商標をもって出願して、関連する消費者にそれが同一の出所に由来し若しくは同一の出所ではないが、関連がある出所に由来すると誤認させるときに、23112号前段の規定を適用すれば十分であり、同号後段の規定を適用する必要がない。

以下は商標のダイルーション(dilution)の意義と類型、商標のダイルーションの保護を適用する商標及び商標のダイルーションのおそれの有無を判断する参酌要素について23112号の後段の規定の適用を説明する。

3.1 商標のダイルーション(dilution)の意義及び類型
23
112号後段の規定する「著名商標又は標章の識別性または信用・名誉に損害を生じさせる虞がある」という文字から商標法の規定する商標のダイルーションの類型は、「著名商標の識別性に損害を生じさせる虞」と「著名商標の信用・名誉に損害を生じさせる虞」との二種類で、以下それぞれその意義を説明する。

3.1.1 著名商標の識別性に損害を生じさせる虞
いわゆる著名商標の識別性に損害を生じさせる虞とは、著名商標の識別性に損害を生じさせる可能性があることを言う。言い換えると、著名商標が特定の商品又は役務に使用されたとき、元来単に人にある特定のソースを連想させるだけであったが、しかし、許諾使用を取得していない第三者による使用行為が、当該商標が曾て単一ソースの特徴及び吸引力を強烈に指示することをだんだん弱める又は分散するとき、最後になって曾て単一ソースを強烈に指示した商標が二種または二種類以上のソースを指示する商標になる可能性が極めて高い。若しくは当該商標を社会大衆の心の中に、単一連想又は独特性の印象を残らせない。例えば消費者がCoca Colaの文字を見たまたは聞いた後、すぐその商標で販売されている飲料商品を連想する。若し第三者が同じ「Coca Cola」商標を異なる商品に使用され、市場で一定期間に販売されていた後、消費者が「Coca Cola」の文字を見た又は聞いた後、その文字は単なる元来の「Coca Cola」飲料を指すばかりでなく、第三者の「Coca Cola」商品をも指す可能性があるので、このとき、曾て単一ソースを強烈に指示した「Coca Cola」商標が二種または二種類以上のソースを指示する商標になり、若しくはその商標を社会大衆の心の中に、単一連想または独特性の印象を残せない可能性がかなりある。従って、その「Coca Cola」商標の識別性はすでに稀釈または弱化された可能性がかなりある。

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