事務所情報 | 出版物品 | 2007年9月
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台湾知財裁判所設置後の知財訴訟手続きの一観察(その一、知的財産民事事件とは何か。)

台湾知財案件審理法、知財裁判所組織法は本年19日と35日にそれぞれ立法院で三読通過し、知財裁判所の設置発足は来年7月以後の見込み。

台湾知財案件審理法の規定の中、民事事件の審理手続きの変革がかなり多く、これらの変革は爾後知財裁判所の裁判官が知財案件審理過程中、如何に実施されるかは注目されるところである。司法院は積極的にいろいろな準備作業を取り進めている。現在『知財案件審理法の審理規則草案』の起草がすでに完了したほか、関係子法も徹底的に研究討議している。さらに、司法院民事庁から知財案件を処理する裁判官、弁護士を招いて共同で「知財民事事件暫時状態の処分を定める審理パターン」、「知財民事訴訟事件審理パターン」を研究起草し、本法施行後、知財事件を処理する裁判官に提供して参考させる。

以下は現在台湾の民事法廷の裁判官が知財事件を審理する方式、知財案件審理法関連規定が達成しようとする規範目的を参酌し、さらに民事庁が起草する上記審理方式の内容について簡単に説明する。その内容は(一)知的財産民事事件とは何か。(二)暫時状態の処分を定める審理手続き。(三)本案訴訟の審理手続きに分けて紹介する。今回は(一)知的財産民事事件とは何かについて例を挙げて説明する。

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案例]
A
という会社(台北県に位置する)は2006101日にBという会社(台中市に位置する)と商標使用許諾契約書を締結し、B社がその所有する甲商標をA社に2年間使用許諾し、A社は契約期間満了したとき、優先して2年間契約を継続する権利があると約定している。その後、A社は当該契約の期間がすぐ満了するとして、若しB社が契約の継続を拒み、使用許諾の設定登録を拒否し、甚だしきに至っては系争商標を処分し、または他人に使用許諾した場合、A社がこのとき、契約を継続する権利を失うばかりでなく、彪大な在庫商品が使用する商標がない窮地に立たされてしまう。従って、A社は裁判所に訴えを提起し、B社はA社とさらに2年間の使用許諾契約の締結を請求するつもりでいる。この場合、A社はどの裁判所に訴えを提起するべきか。(以下の案例を申し立てる時点または訴えを提起する時点はすべて知財裁判所設置発足後であると仮定する。知財裁判所は約20088月に発足する予定。)

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研究分析]
知的財産案件審理法(以下『知財案件審理法』または『審理法』と称す)第7条に、知的財産裁判所組織法(以下『知財裁判所組織法』または『組織法』と称す)第3条第1号、第4号に規定されている民事事件は、知的財産裁判所が管轄すると規定されている。そして知的財産裁判所組織法第3条第1号、第4号に規定されている知的財産裁判所が管轄する案件は以下の通り。

専利法、商標法、著作権法、光ディスク管理条例、営業秘密法、集積回路の回路配置保護法、植物品種および種苗法または公正取引法によって保護される知的財産権によって発生した第一審および第二審の民事訴訟事件。(第1号)その他の法律の規定によりまたは司法院の指定を経て知的財産裁判所が管轄する案件。(第4号)

ご承知のように、知財裁判所は知財案件の特殊性に応じて設置し、知財案件を審理する専門の裁判所である、しかし、本案例の中、両方当事者が商標権の実質的専門部分については争いなく、たんに使用許諾契約を締結すべきか否かに関する争いであり、また、このような事件は知財裁判所が管轄するべきか否か。なお、本法は管轄部分の規定については専属管轄であるか否か。合意管轄または擬制合意管轄の適用があるかないか。などはすべて当事者の権益、訴訟手続の進行と深く関係している。

知財案件審理法第7条、知財裁判所組織法第3条第1号の規定からみれば、知的財産民事事件の範囲は下記のものを含むことができるように思う。

①権利帰属の紛糾事件:知的財産権またはその出願権(特許を受ける権利、商標出願権)の帰属紛糾事件、被雇用者、被招聘者の発明の権利の帰属または報酬紛糾事件、知的財産件共有紛糾事件、発明者または創作者の資格の紛糾事件を含む。
②契約紛糾事件:知的財産権またはその出願権の讓渡、質権の設定、信託、登録の同意、契約紛糾事件、使用許諾契約、特許実施契約紛糾事件を含む。
③侵害紛糾事件:知的財産権権利侵害紛糾事件、知的人格権の侵害紛糾事件、補償金、ローヤルティーまたは使用料紛糾事件を含む。
④公正取引法で知的財産権益に関する事件。
⑤証拠保全及び保全手続き事件。

審理法第7条の規定は専属管轄の規定であるか否か?専属管轄の多くは公益性を有し、または事件の性質により、かつ、若し専属管轄の規定に違反する場合、民事訴訟法第469条第3号の判決が当然に法令違反に属するため、また、民事事件は知的財産事件に属するか否かの判断は容易でないために、組織法管轄に関する規定は専属管轄でないと認めるべきである。それから、「知的財産裁判所組織法第3条第1号、第4号に規定されている民事事件は知的財産裁判所が管轄する。」「知的財産案件の審理はこの法律の規定による。この法律に規定がないときは、それぞれ民事、刑事または行政訴訟手続が適用すべき法律による。」とはそれぞれ審理法第7条及び第1条に規定されている。さらに、審理法第1条の説明欄にもまた「本法は知的財産案件の審理に適用すべき手続の特別法であり、本法に規定されていないものはそれぞれ民事訴訟、刑事訴訟または行政訴訟手続に適用すべき法律による。」と明記されている。故に、本法管轄に関する規定は専属管轄以外の民事訴訟法の管轄に関する特別規定である。従って、若し当事者が提起したい訴訟が知的財産民事事件に属する場合、知的財産裁判所へ提起するべきである。若し普通裁判所へ提起した場合、普通裁判所は民事訴訟法第28条の規定により、裁定でもって知的財産裁判所へ移送しなければならない。本法この部分の規定に関し、司法院は知的財産裁判所を準備設立する前にすでに広く宣伝教育し、新聞雑誌媒体もまた幅広く報道し、かつ、知的事件訴訟に従事する弁護士、当事者の多くは知的事件に遭遇するときに、知財裁判所へ提起すべきことをすでに知っているため、本法管轄に関する位置づけが当事者にとって言えば、不便な情況がないはずである。本法の主な目的は知的財産権の保護にあり、知的財産権に関する事件を専門知識及び能力を有する知的財産裁判所によって管轄することができることは当たり前であるが、若し当事者双方が知的財産裁判所を捨てて、普通裁判所によって管轄することを合意したときもまた当事者の意思を尊重すべく、その合意を以って定めた普通裁判所を管轄裁判所とすることを許可すべきである。また、原告が管轄権のない裁判所に訴えを提起して被告が裁判所に管轄権がないことを抗弁することなく、本案の口頭弁論をしたときは、その裁判所を管轄裁判所とする黙示的合意があるに等しく、その裁判所を管轄裁判所と擬制してもまたよろしい。しかし、普通裁判所がこの類の事件を受理するとき、裁判官は被告が口頭弁論をする前、両方当事者に当該事件は知的財産民事事件に属し、わが国はすでに知的財産裁判所を設立してあり、その事件はやはり普通裁判所によって管轄するか否か、を先に説明することができる。若し両方当事者が普通裁判所によって管轄したいと表示したとき、または被告が裁判所に管轄権がないことを抗弁することなく、本案の口頭弁論をしたときは、その事件はやはり普通裁判所によって管轄する。このようにすれば、訴訟当事者の権益に対する保護は、さらに周到完全である。

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