事務所情報 | 出版物品 | 2007年12月
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台湾知財裁判所設置後の知財訴訟手続きの一観察(その二、仮の地位を定める仮処分の審理手続き)

〔案例〕
甲という会社(台北縣芦洲市に位置する)は薬品のデベロッパーメーカである。その研究開発した技術「A」がすでに経済部知的財産局から発明特許証書を発給されている。有効期間は西暦20191010日までとなっている。その技術範囲の一部を薬品「B」に用いられ、心臓病の治療に使用されている。治療効果が非常に良い。その後、甲社がマーケットに乙という会社(台北市大安区に位置する)が製造及び販売する品名が「C」という、治療内容がやはり心臓病の薬品であることを発見された。甲社が或る鑑定機構に依頼して侵害の鑑定対比を行わせた。鑑定した結果、薬品「C」がすでに上記技術「A」の特許範囲に入っていることを確認された。甲社は乙社が継続的に薬品「C」を販売し続ける行為が債権者、即ち甲社に対して将来補うことができない厳重な損失をもたらす可能性があるために、下記内容の仮の地位を定める仮処分を申立てた。

1. 相手方がその品名が「C」という薬品またはその他すべて申立人の第100003号発明特許権を侵害する薬品を直接または間接で、自分でまたは第3者をして製造、販売の申し出、販売、使用若しくはそれらの目的のために輸入する若しくはその他すべて関連する権利侵害行為をしてはならない。

2. 相手方が直接または間接で、自分でまたは第3者をして品名が「C」という薬品を陳列または散布させ、若しくはその他すべて申立人の第100003号発明特許権を侵害する薬品の広告、カタログ、ラベル、説明書、価格表またはその他販売促進する宣伝的性質を有する文書を陳列または散布してはならない。若しくは新聞雑誌またはその他いかなるマスメディア(mass media)で広告の行為を行ってはならない。

〔研究分析〕
知的財産民事事件の保全手続きは知的財産案件審理法(以下『知財案件審理法』または『審理法』を称す)第22条に規定されている。その中、仮の地位を定める仮処分に関する規定の影響及び変化は最も大きい。知的財産事件に関し、実務上権利者は常に侵害被疑者による継続的製造、販売行為の禁止について仮の地位を定める仮処分を申立てる。而して知的財産権の産品、とくに半導体等ハイテック産業で、その産品の市場におけるライフサイクルが甚だ短く、商売のチャンスはすぐ逃がされ、一旦裁判所により継続的製造、販売行為の停止を命じられた場合、本案の判決の確定を待たずに、産品はすでに淘汰され、製造販売者をして市場から追い出される不利な結果を来たしてしまい、その影響は甚だ重大である。その発生した損害もまた事前に押し測ることが難しい。知的財産事件の特性に基づいて、審理法は第22条第2項から第7項まで、仮の地位を定める仮処分の申立てについて特別の規定を設けた。

審理法第22条第2項の規定によると、仮の地位を定める仮処分でその釈明が足りないときに、裁判所は申し立てを却下しなければならない。これは本法の特別規定である。従って、申し立て人が申し立てを提出するとき、特許証書、特許公報(特許請求範囲及び明細書を記載する)、相手方が侵害を構成する事実を釈明できる証拠(例えば、鑑定報告)を提出しなければならない。かつ、提出する証拠を提出して重大な損害の発生を防止するまたは緊迫な危険または類似する情況を避ける。若し裁判所が本件の申し立てを否准した場合、受けることが可能である重大な損失を具体的に釈明しなければならない。若し申し立て人の釈明が不足しているとき、裁判所はその申し立てを却下しなければならない。裁判所は受理した後、申し立て人が補正すべき部分について、申し立て人を命じて補正させるとともに、申し立て状の謄本を相手方に送付しなければならない。若し相手方が外国人または外国法人である場合は、実務上外国への送達期間を余計に考慮に入れなければならない。さらに、裁判所は書状の交換手続きを進行することができ、申立人が担保に提供すべき金額および相手方が仮の地位を定める仮処分を免がれられるか否か、もしくは仮の地位の仮処分を定めるに提供すべき担保金額を免がれられるか否か、または取り消すことができるか否かについて、両方当事者を命じて意見を述べさせるとともに、関連する事実証拠を提出して釈明させることができる。両方当事者が書状交換完了後、指定された技術審査官を命じて意見を提供させる。書状交換完了後、必要があると認めるとき、期限を定め、両方当事者を命じて法廷に出頭させ、またはテレビ会議方式で意見を述べさせる(この部分の手続きは裁判所が申立人の申立を許可するか否かにとって影響が甚だ重大である)ことができる。両方当事者が陳述を行うほか、裁判所はいわゆる重大損害の発生を防止するまたは緊迫な危険を避けるため、保全する必要な事実があることについて、下記の点を審酌しなければならない。

1. 異議申立人が将来勝訴する可能性。権利の有効性(権利に明らかな瑕疵があるか否かを審酌することを原則とする。例えば、相手方が若し形式審査を採用した後に許可された実用新案について権利有効性の争いを提出したときに、申立人が実用新案技術書またはその他の事実証拠を提出してその権利が有効に存在していることを釈明するか否か。)および権利が侵害された事実を含む。

2. 裁判所が若し仮の地位を定める仮処分を否准したとき、申し立て人が補うことができない損害を受けられるか否か。

3. 両方当事者利益の衡平。
公衆の利益(例えば医薬の安全または環境問題)にとって如何なる影響を与えられるか。前記手続きを経過した後、若し裁判所に心証を得られ直ちに決定を行うことができ、若し心証を得られなければ、必要のとき、やはり両方当事者を命じて意見を陳述させ、裁判所の心証をして成り立たせやすい。かつ、申立人が期限を定めて起訴し決定の送達を回避して本案訴訟の提起を遅らせる不当な情況の発生を避けるために、審理法第22条第5項に上記許可の決定が申立人に送達した日から30日以内に、申立人がまだ訴えを提起しないとき、裁判所は相手方の申立によるほか、なお、職権によって上記決定を取り消すことができる。また、裁判所が上記取消決定の送達できないことによって相手方仮処分の解除を遅らせることを避けるために、本法第22条第6項に上記決定は公告しなければならず、その決定が公告するときに直ちに効力を発生すると規定されている。ともに現行民事訴訟法の規定とは異なる。

 

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