事務所情報 | 出版物品 | 2008年5月
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最近の5年間(2003~2007年)台湾の特許・商標出願・争議案件統計

2008121日付台湾知財局のインターネットの掲示より)
知識経済と知的財産権が大々的に謳歌されている昨今、特許と商標出願件数の統計データは現在の産業発展のトレンドへの理解に役立つほか、景気を観察する指標にもなる。このため、台湾知的財産局は最近の5年間(20032007年)台湾特許及び商標出願並びに争議案件の統計件数を公布し、各界の参考とさせている。

2007年の特許(実用新案と意匠を含み)新規出願件数は81,820件に達しており、連続3年平均年8万件位の水準を維持しており、毎年約12%成長している。20042005年の年間10%の成長率と比べると、成長幅が緩和されている。また、特許の類別によって出願件数の消長を分析すると、発明特許の出願件数は最近二年間微幅の成長を見せている。毎年約34%の成長を維持している。また意匠出願件数はやや減少して、年出願量は約7,500件。

また、2007年特許(実用新案を含む)再審査請求件数は2,607件で、2006年の2,545件に比べて62件ふえ、2%の増加。2007年特許無効審判請求件数は1,159件で、2006年の1,294件に比べ135件減少した。下げ幅は10.43%。かつ、最近の3年間ともに下がり続けている。その最たる原因は実用新案の審判請求件数は大幅に減少したためである。実用新案は200471日より形式審査に切り換えたあと、出願が実質的審査を経ることなく、権利を行使するとき、別に実用新案技術報告書を提出しなければならなかったため、自動的に他人の実用新案権の取消審判を提起する意欲を大いに減少させた。よって実用新案の取消し審判請求件数も大幅に減りました。而して発明特許の審判事件はハイテック産業業者間でその侵害訴訟事件がますます増えたことによって成長のトレンドを見せている。

なお、各類特許出願の審査完了の件数の中、当知的財産局の行政処分に不服して訴願(不服申立)を提起した事件は、2006年よりはじめて1000件以下に下がり、2007年にさらに低い記録を更新した。約686件で、2003年の1,412件と比べて、下げ幅は50%に近い。このことから、本局は特許審査の質においては既に明らかな上昇を表し、局外からかなり良い評判をされている。(表一、最近5年間各類特許案件出願申請数量統計表参照)。

商標の部分については、2007年商標登録出願件数は最近5年間始めての減少を見せた。総出願件数76,332件(類別に基づく)、昨年の受理件数より3,435件(類別に基づく)減少し、4.31%のマイナス成長だったが、やはり最近5年間の年平均受理件数より1,804件(類別に基づく)多い。成長率が2.42%。また、2007年に拒絶査定を受けて訴願申立を提起した案件は合計586件で、2006年より34件の増加で、成長率は6.16%であるが、訴願申立で原処分を取消された件数は僅か12件のみ、取消率は2.05%で、最近5年来の最低を記録し、商標出願の審査品質もまたかなり高められたことを十分に証明している。

このほか、2007年登録を許可された商標52,569件の中、審査結果に不服して異議申立を提起した件数は1,195件で、2006年度の異議申立件数1,637件より442件減少し、27%のマイナス成長だった。無効審判請求件数は438件で、前年度の493件に比べて55件減少し、11.2%のマイナス成長だった。廃止(取消)請求事件は357件、前年度の453件に比べて96件減少し、21.2%のマイナス成長だった。以上2007年の争議案件は合計1,990件で、22.96%のマイナス成長だった。また、争議事件で本局の処分に不服して訴願申立を提起した事件は合計587件で、2006年より33件減少し、5.32%のマイナス成長だった。かつ、訴願申立で原処分を取消されたものは僅か66件、取消比率が11.24%のみ、最近5年来の一番低い記録をつくった。このことから、本局商標争議事件の審査の質もまたかなり高められたことを示している(表二、最近5年間商標登録出願及び争議案件統計表参照)。

台湾の特許出願は成長が緩和され、商標出願はマイナス成長を示していることの原因は、中国大陸の市場の拡大によるか、台湾自体景気低迷の影響によるかであろう。いずれにせよ、上記関係統計数値は極めて参考する価値があり、また深く思わさせられると共に重視されるべきである。本局は将来やはり審査の質の向上を高め、完全な知的財産の法制度及び審査環境を建立し、進んでわが産業の国際競争力を強化しなければならない。
台湾特許法改正草案の要点

台湾知財局は2008422日に業務座談会を開き、特許法改正草案の改正内容について説明を行い、その改正要点を以下の通り要約する。

1. 改正の進み具合。
改正草案の中、動植物特許の開放、試験研究の責任免除、公共衛生の議題、実用新案制度の検討、デザイン特許及び実務作業部分に関する改正はいずれも草案の公聴段階に入っている。2008年末草案内容を完成する予定。而に再審査の争議の審議及び特許権侵害の二大議題については関わり合いが広いため、なお、条文を検討作成中。

2. 実務作業の改正要点。

1) 優遇期間の適用範囲を改正する。新規性のほか、進歩性(意匠については創作性)にも拡大する。

2) 国際的立法趨勢に応じるため、現在の特許明細書は特許請求範囲及び摘要を含めているが、改正草案ではこの二つを明細書から独立させるつもり。即ち特許明細書には特許請求範囲及び摘要を含ませないようにする。

3) 特許明細書は、外国文本をもって出願し、かつ知財局の指定期間内に中国文の訳本を補正した場合は、外国文本の提出した日を出願日とする。但し前項指定期間を越えて処分前に補正した場合、その出願案は補正日をもって出願日とするか。若しくは直接その出願案を取り下げたと見なすかは、未だに決まっていない。

4) 特許は外国文本で出願した場合、若し出願時に外国文本には特許請求範囲がないときに、出願日を取得することができるか否かにつき、なお争いがある。

5) 外国における特許出願日及びその出願を受理された国(名)が出願書類に記載されている場合、すぐ優先権を主張することができる。出願書に記載されているものを限りとしない。

6) 国際優先権の証明書の補正期限は「出願日から4ヶ月以内に」から「最初の優先権日から16ヶ月以内に」補正すると改正する。

7) 出願人は故意によるものでなく、特許出願と同時に国際優先権を主張する場合、最初の優先権日から16ヶ月以内に優先権の回復を申出することができる。

8) 国内優先権を主張する時点を緩和する。現行法では若し先出願案が発明特許である場合、初審の査定前に主張しなければならず、若し先出願案が実用新案である場合、形式審査の処分前に主張しなければならない。改正草案では以下のように緩和する。若し先出願案が発明特許である場合、許可査定後公告前にまたは再審査特許を与えないと査定される以前に主張することができる。若し先出願が実用新案である場合、許可処分後公告前または形式審査で特許を与えないと処分される前に、主張することができる。

9) 国際優先権に関して、先出願案を取下げの時点と見なすように改正する。現行法では先出願案がその出願日から15ヶ月満了したときに取下げたと見なすと規定しているが、改正草案では後出願案の出願日から取下げしたと見なすと改正する。

10) 特許請求範囲の改正に関して、知財局が二回以上の通知をされた後、単に請求項を削除し、特許請求範囲を減縮し、誤記/誤訳の訂正、不明瞭の記載を釈明することができると改正。出願人が自発的に修正を提出するには現行法では時間的制限を受ける。改正草案では時間的制限を削除した。

11) 誤訳の訂正は修正の事由とすることができる。改正草案では誤訳の訂正は出願時元来の外国文本が掲示された範囲を越えることができないと新設、外国文本自体も修正することができない。中国文の訳本は、出願時元来の外国文が掲示された範囲を越えることができない。如何なる情況を誤訳と認められるかについては将来審査基準の中に、定義を明確にして争いを避ける。

12) 改正草案は国際消耗の原則を明確に採用する。

13) 公告後の更正に関して改正草案では請求項の削除、特許請求範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、不明瞭記載の釈明のみをすることができると規定されている。その中、誤訳の訂正は出願時元来の外国文本が掲示された範囲を越えることができず、更正は公告時の特許請求範囲を実質的に拡大または変更することができない。

14) 優先権主張、証書費用及び第一年目の年金、第二年目以後の年金の納付は法定期間を越えるとき、若し故意によるものでない場合は、権利の回復を申出することができる。但し権利回復の効力は元来の特許権が消滅してから特許権の回復を許可するまでに、その特許権を善意で実施する第三者には及ばない。
発明特許と実用新案を一案で二出願する問題に関し、各界においてはなお多くの議論があるため、知財局は各国の法制度を参考したあと、いかに改正すべきかを決める。

台湾知財裁判所設置後の知財訴訟手続きの一観察
(その三、本案訴訟の審理手続き)

前記その二に掲載された案例を受けて若し原告が訴えを提起して下記の通り請求する。被告が中華民国の第100003号発明特許を使用し、また、中華民国第100003号発明特許の方法で製造した「C」を使用し、販売の申し出、販売および輸入してはならない。並びに、被告が原告に新台湾ドル300万元および法定遅延利息を支払うことを請求する。而して被告が下記の通り答弁する。原告の特許権に取消するべき原因があり、被告の産品が原告の特許範囲に入っていない。若し裁判所は被告が原告特許権を侵害する事実があると認めているが、しかし、原告はその損害を証明する証拠を挙げていない、かつ、その請求する損害賠償の金額も高すぎて、原告の訴えを却下する等。

〔研究分析〕

まず、説明しておかなければならないことは小額訴訟手続きおよび簡易訴訟手続きは、知的財産の民事訴訟には適用しない。かつ、第一審の知的財産事件は裁判官1人が単独で審判を行う。知的財産事件の第一審裁判に対して知的財産裁判所に上訴しまたは抗告をすることができ、その審判は合議でこれを行うことになっている(審理法第6条、第19条参照)。

知的財産の本案訴訟中、若し被告が手続の抗弁(例えば原告が裁判費を納付しない、原告訴訟代理人の代理権に欠陷があり、原告は外国人であって訴訟費用の担保を提供すべく等(民事訴訟法第249条第1項、第96条参照)を提出した場合、裁判所は手続き争点について書状の交換を命じまたは準備手続き(開廷方式またはテレビ会議方式で行い)を行い、その後に中間裁判を行うことができ、若し原告の訴えが却下された場合、本案事件は終結する。若し原告の訴えを却下されなかった場合、実質的審理に入らなければならない。実質審理の過程中、まず1回または2回の書状を先に行い、裁判所は両方当事者を命じて両方当事者が第1回の口頭弁論期日以前に、民事訴訟法第266条の規定により、事実上および法律上の争点、理由および証拠を提出するとともに、調査する証拠を提出し、或しくは当事者または第3者を命じて文書、物件の提出を申立て、第1回の口頭弁論期日に審理計画の制定に利する。かつ、当事者が若し提出すべき文書が営業秘密にかかわっていると認めた場合、本法知的財産案件審理法第11条および第12条の規定に基づいて秘密保持命令(審理法第11条から第15条まで参照)の発出を申立てることができる。

上記手続き準備が完了した後、裁判所は第1回の口頭弁論期日を定めることができ、口頭弁論期日の中、裁判所の主な任務は両方当事者の争点を整理するとともに審理計画を制定する。その具体的内容は下記の通り。

1. 民事訴訟法第268条の1により、争点を整理するとともに争点の簡略化について協議する(例えば、権利の有効性、権利を侵害するか否か。または損害賠償額計算についての争い等。)若し当事者が特許権に取消すべき原因があると主張または抗弁する場合、必要である時、決定でもって知的財産専門機関、即ち経済部知的財産局を命じて訴訟に参加させることができる(審理法第17条参照)。

2. 簡略化した争点について、証拠調査方法および順序を確立するとともに審理期日を定める。

3. 当事者または第3者を命じて一定期間内に文書または物件を提出させる。以前民事訴訟法第349条の規定によれば、第3者が正当な理由なくて文書提出命令に従わないときに、裁判所は過料を科しまたは強制処分を命ずることができる。而して検証の場合も同法第367条の規定により、上記規定を準用することもできる。ただし、訴訟当事者が裁判所の文書または検証目的物を提出する命令に従わないときに、上記規定を引用することができず、単に民事訴訟法第345条第1項の規定により、情況を審酌し、他方当事者が当該証拠に関する主張または当該証拠によって証明すべき事実が真実であることを認定することができる。しかし、裁判所は一体如何なる程度で真実を認定されるべきかは確かでない。若し証拠がなお存在するとき、むしろ直接的または間接的にそれを強制し、訴訟の中に明らかにさせる方がより有効である。とくに知的財産民事事件において侵害の事実およびその損害が及ぼす範囲の証拠について訴訟当事者の間に明らかにその一方の当事者に存在している情況がある。若しその証拠を裁判所に提出させることを促すことができない場合、裁判所は事後情況を審酌し、他方当事者が証拠に関する内容を認定するとともにその根拠とする証明の侵害事実および損害範囲が真実であると信じられるか否かはなお相当な困難である。よって、文書または検証物の所持者、当事者及び第3者を含み、正当な理由がなく裁判所の文書および検証物の提出命令に従わないときは、裁判所は過料を科することができると必要なときに、強制処分を命ずることができると規定して当事者を促して裁判所に協力して適正な裁判を行わせる(審理法第10条参照)。

裁判所は第1回の口頭弁論の期日中、両方当事者の争点を整理した後、被告が原告の特許権に取消すべき原因がある、被告の産品が原告の特許範囲に入らないと抗弁するので、若し裁判所は被告が原告の特許権を侵害する事実があると認めているが、しかし、原告がその損害を証明する証拠を挙げられず、かつ、その請求する損害賠償額も高過ぎる等場合、裁判所は三つの段階に分けて審理することができる。(しかし、各段階の審理をしてより能率があることにさせるため、両方当事者は次回の口頭弁論期日に弁論を進行しようとする争点、使用する証拠方法について、30日以内に、全部裁判所に提出すべく、さらに謄写本を相手当事者に送付しなければならない。)思うに、民事訴訟法第267条第1項、第2項に「…若しすでに口頭弁論の期日を指定したときは、遅くともその期日の5日前になさなければならない」と規定されている。第3項に、「…もしすでに口頭弁論の期日を指定したときは、遅くともその期日の3日前になさらなければならない」。ここに、以下の通り説明する。

1. 特許有効性の審理:裁判所は原告の主張または被告の抗弁理由の有無について自ら判断を行わければならず、さらに行政訴訟法第12条、特許法第9条第1項(第108条、第129条第1項準用)、民事訴訟法第182条第2項、訴訟手続きの停止に関する規定によって審判停止の決定を行うことができる。また、裁判所が審理した後、若し原告の特許権に無効の原因があると認めた場合には、直ちに原告の訴えを却下する判決を行うことができる。ただ、原告の特許権が有効であると認められたとき、はじめて継続的に次の段階の審理を行う。この部分は現在の審理方式の変更を期待したい。本案例について言えば、いままで裁判官の多くは三つの段階を全部調査完了するとしていたが、心証は最後判決するとき、はじめて判決書に記載するため、後の二つの段階の訴訟手続きの浪費をもたらして訴訟経済原則に違反する。

2. 権利侵害になるかならないかについての審理:このとき両方当事者が特許範囲の解釈について争いがあるとき、裁判所は両方当事者を諭して弁論させなければならない(審理法第8条参照)。さらに、被告が権利侵害する事実の有無について調査を行う(例えば、原告が鑑定報告を提出して書証とすることが可能;または双方当事者が或る鑑定機関に鑑定を依頼することに合意;または裁判所が証人、専門家証人より尋問を行うなど);調査完了した後、若し被告の物品が原告特権範囲に入らない(即ち権利侵害しない)と認められたとき、原告の訴えを却下する判決を行うことができる。ただ被告の物品が原告特許範囲に入っている(即ち権利侵害がある)と認められたとき、はじめて継続的に次の段階の審理を行う。

3. 損害賠償額についての審理:このとき、原告が会計資料などを提出してその損害額を提出することができる。被告が貨物販売記録、帳簿、損益計算書を提出して抗弁することができる。裁判所は両方当事者が提出した証拠について判断を行ったあと、判決を制作して本案を終結する。

この部分は極めて重要な変革である。その立法理由は「知的財産に関する民事訴訟中、被告が知的財産権が存在しないと主張して行政争いを提起したとき、または第3者が知的財産権の有効性について無効審判、取消審判および行政争いを提起したとき、もし民事訴訟が第182条第2項の規定により審判手続きを停止した場合、その権利の有効性および権利の侵害事実は同一の訴訟手続きで一次に解決することができない。当事者は往々にしてこれをもって民事訴訟手続きを遅らせ、知的財産権者をして迅速な保護を得させない。つぎに、知的財産権はもともと私権に属し、その権利有効性の争点は自ずと私権の争いであり、民事裁判所によって民事訴訟手続きにおいて判断するのは理論上不当ではない。とくに知的財産裁判所の民事裁判官はすでに知的財産権の有効性を判断する専業能力を備えているため、その訴訟を終結するに認定しなければならない権利の有効性の争点については、自ずと行政争いの結果が出るのを待つ必要がないのである。よって、第1項の規定を設け、知的財産訴訟を審理する民事裁判所をして、訴訟手続き中商標権または特許権について取消または廃止されるべき原因の有無の争点について、実質的判断を行わせるとともに、行政訴訟法、民事訴訟法、商標法、特許法、植物品種および種苗法またはその他法律で訴訟停止に関する規定の適用を排除して、紛争の一次的解決を期することによって迅速に訴訟当事者の権利保護を実現する。

 

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