事務所情報 | 出版物品 | 2008年12月
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インターネット犯罪(Cybercrime)の管轄権に関する判決

インターネット犯罪の管轄権問題に関して、最近台湾高等裁判所は96年度(2007年)上易字第361号判決を言い渡した。この判決はインターネット犯罪地は伝統的犯罪地の認定とは相違であると認めている。蓋しインターネットは道路、言語、有線、無線放送など、あらゆる人類が過去に開発してきたシステムとは異なり、コンピューターによって国境を越えた快速にリンクするインターネットは一方各地に隔てられている人々又は組織・機関の連絡距離が短縮され、他方人類の生存領域が拡大され、新しいサイバースペースを発生している。従って、インターネット犯罪の管轄権問題に争いが生じている。しかし、伝統的犯罪地の概念ではインターネット犯罪の管轄権問題を認定することができない。

インターネット犯罪の管轄権の認定については、学説上広義説、狭義説、インターネット事件専門管轄裁判所説及び折衷說など四説がある。

1. 広義説:純粋にインターネットにウェブページを設け、情報を提供し、または広告を行い、或る所がコンピューターによってそのウェブページに繋がりさえすれば、そのところの裁判所は自ずと管轄権を有する。この説によれば、世界中至る所に犯罪地になる可能性がある。この説は既に世界各国の司法裁判権問題に関わっている上、当事者及び裁判所にとっても不便である。

2. 狭義説:行為者の居住所またはウェブホストの設置する位置ら伝統的管轄地を強調している。この説は硬直しすぎて実際の需要を満たすことができない。

3. インターネット事件専門管轄裁判所を設置する説:現在のところ、世界中にインターネット事件専門管轄裁判所を設置してある例は甚だ少ない。台湾にもまだ設置していない。故に、この説を採る実益は少ない。

4. 折衷說:現在世界中多くの国・地域では、インターネット犯罪の管轄権問題について通常折衷する見解を取っている。一方において現在刑事訴訟法の管轄権に関する伝統的規定を尊重し、当事者及び裁判所の困惑を避ける。他方においてその他具体的事情、例えばウェブページの設置所在地、電子メールホストの所在地、データ伝送ホストの所在地及びその他実際の取引地等関係事情を総合して認定するべきであると説いている。

係争事件の原審である台北地方裁判所では被告の住所、居所、所在地は共に嘉義にあり、犯罪地及び被告の使用する銀行口座も嘉義にある。しかし、ウェブページのサーバーはアメリカにあるため、台北地方裁判所は審判権がないとして管轄錯誤と言い渡された。これに対し、台湾高等裁判所では被告は中華電信、和信公司の機械室を通じて外部にリンクしており、そしてその提供した仮想ハードデスク(VHD)、関連するファイル及びサービスは共に中華電信、和信公司二社を通じている。この二社の機械室は共に台北市に位置している。さらにウェブを設置する場所がアメリカにあるが、リンキング及びデータ伝送ホストの設置場所は共に台北市にある故、台北地方裁判所は自ずと管轄権を有するべきであると判断した。また、その後の案件審理、資料調査、証人の呼び出し・訊問等について台北地方裁判所としてはより便利である。故に、台北地方裁判所には管轄権がある方が妥当である。台北地方裁判所は管轄錯誤として嘉義地方裁判所へ移送すべくと諭す判決は理不尽であると結んでいる。

 

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