事務所情報 | 出版物品 | 2009年3月
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「NOKIA」と「nocria」が類似商標と認められ、台湾知財裁判所は「nocria」商標を取消す初審判決を下した

台湾知財裁判所第二法廷は20081126日にフィンランド商・NOKIA CORPORATION社が日商・株式会社富士通ゼネラルの登録第1196169nocria商標に対する異議申立不成立事件で経済部が2008528日になさった異議申立不成立の処分を維持する経訴字第9706107410号訴願決定に不服して提起した行政訴訟事件に関し、訴願決定及び原処分を取り消すとともに台湾知財局は登録第1196169nocria商標を取消す査定を行わなければならないとの判決主文を言い渡された。

事実概要:株式会社富士通ゼネラルは200537日に「nocria」商標を商標法施行細則第13条に定められている商品及び役務分類表第11類の「空気調節装置、冷房機、空気循環機、通風機、空気浄化機、扇風機、冷蔵庫、湯沸かし器、空気調節機用濾過器、冷凍機」商品を指定して台湾知財局へ登録出願し、許可されて2006216日に登録商標第1196169号として登録された。その後、NOKIA CORPORATION社はその登録が商標法第23条第12号、第13号の規定に違反するとしてこれに対し異議申立を提起し、台湾知財局で審査を経て20071231日に中台異字第G00950634号商標異議申立審定書をもって「異議申立不成立」の処分をした。NOKIA CORPORATION社が不服で、訴願申立を提起し、経済部で2008528日に経訴字第09706107410号訴願決定書で却下されて、NOKIA CORPORATION社はつい台湾知財裁判所へ行政訴訟を提起した。訴の声明は上記処分及び訴願決定を取消すとともに係争登録商標「nocria」を取消さなければならないことである。

NOKIA CORPORATION社はこのように主張している。「nocria」商標には創造性に欠く、ただair conditionerの前半部であるairconを逆の順序で並べて「nocria」になり、識別性が薄く、外観から見ればNOKIAとは近似し、容易に消費者に混同誤認させる。しかも市場で「nocria」商標が「NOKIA」商標と長年並存使用されている事実がないと主張している。

株式会社富士通ゼネラル社は下記のように抗弁している。「nocria」商標が「NOKIA」商標とは外観上及び読音において共に類似せず、引用商標NOKIAの指定商品であるラジオ、テープレコーダー等通信器材は「nocria」商標の指定商品である空気調節機、冷房機等とは材料、製造ソースから販売チャンネルないし消費者まで共に異なるため、両方商品は実に非類似である。また、「nocria」商標が2003年に日本で商標登録を取得している。一方、NOKIA商標が1988年に日本で登録されている。両商標は日本で併存登録し、継続的に3年以上使用してきているにも拘わらず、消費者の間に混同誤認を発生することがない。さらに、NOKIA商標は携帯電話だけで著名商標であるが、空調設備等商品はまったく知名度がない。その代り、富士通ゼネラル社は冷房空調設備で有名なメーカーで、nocria商標は既に日本、タイ、スイス、ノルウェーなど欧州12ヶ国で登録を取得している。さらに、台湾で販売されていて消費者の好評を得ている。関連消費者に混同誤認させる又はNOKIA商標の識別性を減損する虞がない。
台湾知財裁判所はこのようにコメントしている。

1.「同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるものは、登録することができない」とは商標法第23条第1項第13号本文に規定されている。所謂「関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるもの」とは、両商標が同一又は類似を構成し、関連する消費者に同一商標と誤認させ、又は両商標が同一商標と誤認させないが、両商標の商品又は役務が同一ソースに由来する系列商品又は役務であると誤認させ、若しくは両商標の使用者の間に関係企業、授権関係、加盟関係又はその他類似関係が存在していることを言う。而して混同誤認する虞があるかないかは、商標識別性の強弱、商標の類似及び商品又は役務の類似等関連要素の強弱程度、相互影響関係及び各要素等を参考にしてすでに関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞に達しているか否かをまとめて認定しなければならない。

2.NOKIA」と「nocria」とを比較すると、両者とも前の二文字「NO」と「no」が同じ、後の二文字「IA」と「ia」が同じであるが、真ん中の「K」と「cr」が異なり、その読音も違う。故に、両商標が時と所とを異にして隔離観察した場合、外観及び読音において類似する程度が比較的に低い。

3.nocria」商標の指定商品は「空気調節装置、冷房機、空気循環機、通風機、空気浄化機、扇風機、冷蔵庫、湯沸かし器、空気調節機用濾過器、冷凍機」である。これに対し、NOKIA CORPORATION社の登録第520889NOKIA商標の指定商品は「テレビ、ラジオ、テープレコーダー、通信器材」で、登録第885299号商標の指定商品は「通信基地局、アンテナ、交換機、ケーブル、電話、無線電話、衛星電話、ファックスマシン、知恵型携帯電話、公共電話、モニター、キーボード、テレビゲームマシン、カメラ、マイク、スピーカー、イヤホン、車両用充電器、CDLD…など。」両方指定商品は類似しない。しかし、登録第909592NOKIA商標が指定する「インターネット設備及び装置(例えば携帯電話の基地局)の乾燥、通風、空調設備、冷却装置、加熱処理装置、通風換気、冷房設備」等商品を見れば、NOKIA CORPORATION社はすでに多角化経営をする計画があることを十分に知ることができ、かつ、一般社会通念及び市場取引状況によれば、その原料、用途、機能、製造者等要素は共通及び関連する所があり、同一又は高度類似する冷房空調類商品に属する。

台湾知財裁判所で審理した結果、下記の通り判決した。提出された関連証拠によって明らかにされたところ、NOKIAnocria両商標は日本で併存登録しているが、台湾の消費者は最初に「nocria」商標と接触したときは20056月であり、即ち「nocria」商標が台湾において登録査定になった時(2005216日)、両商標は併存して使用された事実がない。NOKIAnocria商標の類似程度が比較的に低いが、両方の指定している冷房空調類商品が高度類似している上、NOKIA社の多角化経営の要素を取り入れてまとめて考量すると、消費者が極めて容易に両商標が表示する商品が同一のソース又は同一ではないが関連を有するソースに由来すると誤認しやすく、若しくは両社の間に関係企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他類似関係があると誤認して混同誤認を引き起す虞があり、商標法第23条第1項第13号の規定に違反するとしてNOKIA CORPORATION社の主張と声明を認め、訴願決定及び原処分を取消すべきと共に台湾知財局は登録第1196169号「nocria」商標の審定の取り消しをしなければならないと言い渡された。

「商標識別性審査基準」200911日から発効
台湾経済部は20081231日に経授智字第09720031750号令をもって「商標識別性審査基準」を定め、200911日より発効すると公告した。また、20081231日に経授智字第09720031751号書簡をもって19971122日に公告された「商標識別性審査要点」を廃止し、同じく200911日より発効すると発布した。
今回から上記審査基準から比較的重要と思われる箇所を摘訳して掲載させていただく。

2.識別性の意義
商標が商品または役務のソースを指示し、他人の商品又は役務と区別する特性をいう。故に、識別性の判断は必ず商標と指定商品又は役務との関係を根拠とし、指定商品又は役務から離脱して単独になすことができない。

商標の識別性には先天的識別性と後天的識別性とがある。前者は商標自身そのものに固有するものを指し、使用することによって識別力を取得する必要がなく、後者は標識が元来識別性を有しないが、市場における使用によって結果として関係消費者にそれが商品又は役務のソースであることを認識させられる標識である場合は、即ち商標識別性を有するのである。このとき、当該標識が元来の原始的意味合いを有するほか、なお、識別のソースである新しい意義を発生するから後天的識別性を第二の意義ともいう。以下一々説明する。

2.1先天的識別性を有する標識
特定の商品又は役務に使用される標識が先天的識別性があると認められるのは、消費者にとって言えば、その標識が商品又は役務のソースを指示する機能があるためであり、商品または役務自身またはその内容に関する情報を伝達する機能ではない。競争者の角度から言えば、もし一つの標識がその他善意の同業競争者が一般取引過程において、商品又は役務自身、またはその品質、効用又はその他特性に関する説明を表示するに必須の可能なものでない場合、即ちその標識が先天的識別性を有する。先天的識別性を有する商標はその識別性の強弱によって独創的商標、任意的商標及び暗示的商標に分けることができる。

2.1.1 独創的標識
「独創的商標」とは知的創造力を利用してできたものを指す。既存の語彙、言葉または物を襲用することなく、その自身は在来特定の意義を有せず、その標識創作の目的はそれをもって商品又は役務のソースを区別することにある。それが全く新しい創造的アイデアである故、消費者にとって言えば、如何なる商品又は役務に関する情報を伝達することなく、単にソースを指示及び区別する効用である故、その識別性が最も強い。競争の角度から言えば、この類の標識は同業競争者が商品又は役務自身を表示する又はその他関係説明を表示するに必須又は通常用いられるものでないため、排他的専属権を与えても同業の公正競争に影響することがなく、自ずと登録を許すことができる。

許可例・「GOOGLE」―サーチエンジンの役務に使用される。
PROTON」―テレビ、音響製品に使用される。
「 」―自動車製品に使用される。

2.1.2 任意的標識
「任意的標識」とは現有の語彙または物によって構成するが、指定商品又は役務自体またはその品質、効用またはその他特性とは全く関係がないものをいう。この形態の標識が指定商品または役務の関連情報を伝達していず、商品又は役務を説明する意義がなく、消費者が直接それをソースを支持及び区別する標識と見なす。競争の角度から見れば、その他同業競争者が取引過程において、これら商品又は役務と全く関係ない語彙または物を使用する必要がないので、排他的専属権を与えても同業の公正競争に影響するがないため、登録を許可することができる。

許可例・「リンゴApple」「Blackberry」―コンピューター。
「データプロセーシン」マシン商品に使用される。
「わに図形」―衣服類商品に使用される。

2.1.3 暗示的標識
「暗示的標識」とは隠喩の方式で商品又は役務の品質、効用またはその他成分、性質に関する特性を暗示するもの。比較的に消費者に記憶されやすいが同業競争者が商品又は役務の説明に必ず又は通常に使用する標識でないもの。暗示的記述は商品又は役務の直接的記述とは異なり、消費者がある程度の想像、思考、感受または推理力を運用して始めて標識と商品又は役務との関連性を理解することができる。この類型の標識は同業競争者が商品又は役務の特徴の説明に必ずまたは自然に選択する標識ではなく、通常その他比較的に直接的な説明文字又は図形の使用できるものがまだある。従って排他的専属権を与えても同業の公正競争に影響することがないため、登録を許可することができる。

許可例・「快訳通」―電子辞典商品に使用される。
「一匙霊」―洗剤に使用される。
「足爽」―香港脚の軟膏に使用される。

2.2 先天的識別性を有しない標識
商品又は役務に関する説明を表示する記述的標識、指定商品又は役務の通用標章又は名称及びその他ソースを指示及び区別ができない標識は、ともに先天的識別性を有しない標識である。先天的識別性を有しない標識は記述的標識、通用標章または名称及びその他先天的識別性を有しない標識並びに後天的識別性を取得した標識に分けて説明することができる。

2.2.1 記述的標識
「記述的標識」とは商品又は役務の品質、効用又はその他成分、産地等に関する特性を直接、明白に記述標識で、消費者が容易にそれを商品又は役務の説明と見なしやすく、ソースを識別する標識ではない。所謂商品又は役務の説明とは、一般社会通念によれば、若し商品又は役務自身の説明で、または商品又は役務自身の説明と密接な関連があれば、即ち登録できず、一般に当該商品又は役務を提供するものが共同に使用することを必要としない。例えば「記憶」を枕、マットレスに使用される、「焼烤」をレストランの役務に使用される、「HID」(High Intensity Discharge)を車のライト商品に使用されるなど。また、業者が常に商品又は役務の優良品質を表示する用語及び表示または消費者が好む商品又は役務の特性の記述、例えば金牌図形、頂級(トップクラス)、極品、特優、良品、正宗、鮮、低脂、deluxebesttopextrafreshlight等用語も記述的標識に属する。

競争の角度から見れば、その他同業競争者が取引過程においてこれら標識を使用する可能性も相当高く、若し一人に排他的専属権を与えたら、まさに市場の公平競争に影響し、明らかに公正に欠くので、必ず記述的標識が既に後天的識別性を取得した証拠証明があって始めて登録できる。

拒絶例・「植物素材」―乳液、精油商品に使用される。
「推理式」―参考書、試験問題集商品に使用される。
「機能補給」―飲料商品に使用される。

若し標識が商品又は役務の性質、品質又は産地等重要な特性に関する記述ではあるが、その記述が事実でなく、かつ、消費者が誤認誤信の可能性があり、その購買する意欲に影響する場合なら、商標法第23条第1項第11号の規定する商標が「商品又は役務の性質、品質または産地について公衆に誤認、誤信を生じさせる虞があるもの」に属する。例えば「LEATHER」を合成皮家具に使用された場合、容易に関係消費者にその家具は皮革製であると誤認して買わしめる場合、または「梨山」(台湾中部にある梨の栽培で有名な地名)を梨山に産出するものでない果物に使用される場合、消費者をしてその果物が梨山に産出するものであると誤認誤信して買わしめる可能性がある場合は、消費者の権益を保護する立場から考量する場合、この種の標識が商標登録を取得することができない。

若し標識の記述が事実でないが関係消費者に商品または役務の性質、品質または産地について誤認誤信させる虞がなく、また消費者の購買意欲に影響しないときは、任意的商標に属する。例えば「LEATHER」をアルコールを含有しない飲料に使用される場合、消費者はこれによってその飲料は皮革で製造したことを信じないとき、または「北極」をバナナに使用される場合、消費者はそのバナナは北極に産出したことを誤認しないときは共に任意的商標で、登録を許可することができる。

中国で企業名称と商標権が
衝突するときに紛争解決の三つの参考要素
台湾全国工業総会が経済部知的財産局の委託を受けて調査した結果明らかにされたところによると、台湾と中国大陸との経済、貿易の往来の頻繁に従って、台湾企業が中国大陸で企業名称と商標権が衝突するケースはますます増えてきていることが確認された。この紛争は知財紛争の中に最もよく見られる状況である。中国大陸では商標権及び企業名称は各々の法律に基づいて登録されたため、商標権者及び企業主が異なることが多く、企業名称と商標権との紛争が絶え間なく起きている。

企業名称と商標権との衝突に関して、全工総が実例によって下記三つの紛争の要点をまず理解しておく必要があると指摘している。即ち1.衝突が発生する原因。2.解決の法的根拠。3.司法機関がこの衝突について管轄権があるか否かである。

中国大陸では商標登録が先にあり、企業名称が後にある場合の衝突を解決する法的根拠は民法通則中誠実信用原則のほか、主に商標法、商標法実施条例、反不正当競争法、企業名称登記管理規定、著名商標認定及び保護規定などがある。

台湾和成公司と上海和成潔具公司を例として説明する。この紛争は民法通則中の誠実信用原則及び企業名称管理登記規定によって解決された例である。
そもそも台湾和成欣業は199011月に中国大陸で「和成」商標を登録し、有効期間は200011月まで、その後更新を許可され、有効期間は201011月までとなっている。一方、上海和成潔具は19991月に上海市工商行政管理局の登録許可を得て設立した公司であり、その事業範囲は和成(中国)と類同している。

和成(中国)と上海潔具との紛争は2000年に上海和成潔具がその産品目録に和成(中国)の清潔用具の写真を載せているほか、なお、「上海和成」の文字が印刷されていることによって消費者をして上海和成潔具は即ち和成(中国)であると誤信させることから端を発した。

和成(中国)は上海市浦東新区人民法院へ提訴し、上海和成潔具が直ちに「和成」を使用した企業名称及び「SHHCG」商標の使用の即時停止の判決を請求した。同人民法院で審理した結果、国家工商行政管理局によって発布した「工商企業管理条例施行細則」の中に、企業名称に対する保護規定、即ち「許可を経て登記された企業名称に保護を与えなければならない。若し誤認または混合するものがある場合、時宜にかなった調査処置をしなければならない」という規定に基づいて判決をつくった。判決文によると、和成(中国)は1993年に社名登記を許可された後、ずっとこの社名を使用し、社会に対してずっと「HCG」「和成」と宣伝広告しており、市場及び消費者の中に一定の知名度に達している。

上海和成潔具公司は和成(中国)と同一業務でより遅く設立した公司で、明らかに「和成」が和成(中国)が使用権を有する登録商標と商号で、和成(中国)はこれに関し、先使用する権利があるとして上海和成潔具は明らかに故意にフリーライドすることと誠実信用原則に違反すると認めて上海和成潔具公司の敗訴と判決を言い渡した。

 

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