事務所情報 | 出版物品 | 2009年6月
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著作権法改正立法院で三読通過

台湾立法院は48日に著作権法改正草案を初審で通過し、421日に三読を通過した。改正法の中、影響の比較的大きいポイントは二つ。一つは所謂「三振条項」であり、もう一つはISP業者の「通知/取下」(Notice & Takedown)原則である。以下上記二つのポイントについて説明する。

1.「三振条項」:
ISP
Internet Service Provider/インターネットサービスプロバイダー)業者を長い間頭を痛めさせる問題は不法なネット使用者がウェブで他人の著作を任意にポストをし、他人の著作権を侵害してISP業者を著作権侵害と告訴されたことである。今回の著作権法改正はこの問題についてこの所謂「三振条項」を提出した。即ちISP業者は将来ネット使用者と締結した定型化契約の中、次のように約定しなければならない。即ちネット使用者が若し著作権者に3回(又は3回以下、著作権法の規定より厳しいと約定しても違法でない)権利侵害と発見されたときに、ISP業者はネット使用者の全部又は部分的サービスを停止する権利がある。例えばコネクションの中止又は使用者のアカウントを削除するなど。

今回改正法の条文内容は非常に完備し、近い将来新法実施開始した後、ISP業者とネット使用者が新しい定型化契約を締結することができる。この契約によってネット使用者を拘束することができる。仮にネット使用者が仮令侵害行為があったとしても、ISP業者に処罰を受けさせることがなく、ISP業者をして著作権侵害と告訴されるリスクを有効的に下げることができる。このことはネット産業の発展に寄与する。アメリカは台湾著作権法の改正内容及び審査スピードについて非常に重視している。今回著作権法の改正はアメリカが台湾を包括通商法第301条(スーパー301)の観察リストからはずされた原因の一つである。

ISP業者はこのようにコメントをしている。多くのネット侵害者は本当は悪意ではない。例えば学生がコンピュータクラスの授業に出ているとき、インターネットをブラウシングして好きな歌謡曲、映画を他のネット使用者とファイルを交換する故、誤って法の網に引っ捕かった。今回法改正後、なおネット使用者に知的財産権の保護の観念を多いに宣伝して教え導いていって始めて本当に法律を実行することができる。

2.「通知/取下げ」(Notice & Takedown)原則
「通知/取下げ」原則はネットの権利侵害を食い止め、不法情報をネットに伝送することを阻止するために、ISP業者に対する責任の限定である。この条文の規定は主にISP業者に手続責任の負担を要請することにある。つまり、ISP業者は一旦著作権者からあるウェブページに侵害行為を生じているように通知を受けたとき、ネット使用者に速やかに通知する義務があると同時にウェブページを取下げなければならない。若しISP業者がこの「通知/取下げ」責任を尽くさなかったら、まさに「民事幇助者」の責任を課する。但し刑事責任を取らせない。若しISP業者が「通知/取下げ」原則を守る場合、著作権侵害の幇助者とされない。

一方、ネット使用者がISP業者の通知を受けたあと、若し侵害していないと認めた場合、ISP業者にそういう旨(侵害していない旨)を「通知回答」すれば、著作権者は10日間以内に法的行動を取った証明を提出しなければならない。若し著作権者は提出できなかったとき、ISP業者は14日間以内にウェブページを回復することができ、もってネット使用者の権益を保障する。

「通知/取下げ」原則は三方ともメリットある規定である。なぜかというと、ネット侵害の拡張スピードがすごく速く、ISP業者は単に権利者及びウェブページ使用者の指示を受ける責任を負えば良く、侵害になるかならないかについて判断を行う必要がなく、有効的に時間を稼ぎネットの権利侵害を食い止めることができる。仮令著作権者又は第三者がISP業者に対し、侵害通知を出してから侵害事実がないことがわかったとき、ウェブページの内容はすでに除去された場合、改正法はISP業者は「善意」によるため、いかなる責任も負わないと規定している。但し著作権者は故意又は過失により不実の通知をしてウェブページの資料がよって除去されたなど権益の損害を受けた場合、通知を行った著作権者は損害賠償の責任を負わなければならない。

著作権法改正通過後、ISP業者に対する影響は大きく、いかに執り行うかはなお観察しなければならない。例えばYahoo Taiwanはこの法改正前からずっと「通知/取下げ」原則を取り続けてきたといっている。これに対し、中華電信(Chunghwa Telecom Co., Ltd., CHT)はこのように語っている。改正法によると一般の民衆はISP業者の経営するウェブサイドで違法にビデオファィルをアップロード、ダウンロードすることについてウェブページを取下げることは難しくないが、問題はISP業者のサーバー室を賃貸するコンテンツ会社、例えばYahoo、新浪など、理論的にISP業者は違反するウェブページを閉鎖することができるが実際にいかに執り行うかははっきりしない。

企業のホームページに社名の主要部分を表示することは商標の使用ではないと台湾知財裁判所が判示企業のホームページに社名の全称を使用せずに単に社名の主要部分を表示することは一体社名の表示であるか、又は商標の使用であるか、今まで実務上見解が分かれている。

台湾知的財産裁判所は2008123日に97年度民商上字第3号民事判決でもって上記問題に関して判決を言い渡された。次はその摘要である。

一、事実
上訴人(原告)米国インテル株式会社(Intel Corporation、以下インテル社と称する)は台湾で下記商標登録を持っている。

Intel商標

出願日

出願番号

登録日

登録番号

類別

CENTRINO

2002.12.3.

091050986

2003.10.16.

01061005

9

迅馳

2002.12.31.

091055130

2004.12.16.

01131081

9

2005.12.7.

094059399

2006.9.16.

01229526

38


被上訴人(被告)迅馳科技股份有限公司(英文社名:CENTRIN TECHNOLOGY CO., LTD.、以下迅馳公司と称する)は2003年6月16日に設立登記し、「迅馳」、「CENTRIN」、「CENTRINO」を自社の商標の一部分とすると共に自社の中国文社名及び英文社名の主要部分としている。

上訴人の請求権の根拠:(1)侵害の排除-商標法第61条第1項、公正取引法第30条(2)損害賠償請求-商標法第63条第1項第3号、民法第184条第1項後段(3)被告人会社と代表者が共同責任を負う-会社法第23条第2項、民法第185条。

二、争点

1. 被上訴人迅馳公司は自社のウエブサイドで「迅馳科技」を商標として使用し、その提供する商品の側に「ブランド-迅馳科技」と表示している。一体これは会社名称の表示であるか、又は商標の使用態様であるか。

2. 被上訴人の上記使用方式は公正取引法に違反するかどうか。

三、判決の要旨

1. 会社名称は会社の組織及び種類を表彰し、事業の主体を識別し、会社がその事業で提供する商品又は役務の商標の使用とは異なる概念である。単に会社のホームページの左上に産品の写真の側に会社名称の主要部分「迅馳科技」を表示することは会社名称の表示であり、販売の目的でその会社の名称の主要部分をいかなる商品、役務又は関連する物件又は媒介物に使用して十分に関連消費者をしてその会社の名称の主要部分が商標であると認識させるので、迅馳公司は「迅馳科技」を使用する方式は商標法又は公正取引法にいう商標の使用ではなく商標侵害の問題を生じない。

2. 次、商標法第62条に商標権の侵害と見なす規定として「一、他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながらその同一又は類似の商標を使用し、或いは当該著名商標に構成される文字を自らの会社名、商号名、ドメイン名又はその他の営業主体の出所標識とし、著名商標の顕著性又は名声に減損させるとき。二、他人の登録商標であることを明らかに知りながら、当該商標に構成される文字を自らの会社名、商号、ドメイン名又はその他の営業主体の出所標識とし、商品又は役務に関連する消費者に混同誤認を生じさせるとき」としている。この規定から商標権を侵害する行為は必ず商標登録後に発生することが分る。本件被上訴人迅馳公司は2003616日に設立登記したので、明らかに商標法第62条の適用がない。

3. 被上訴人迅馳公司が設立登記するとき、上訴人インテル社の上記商標はまだ「関連事業又は消費者が普遍的に認知されている商標」になっていない。かつ、迅馳公司が「迅馳科技」を使用する方式は商標を使用する態様でなく、公正取引法第20条第1項第1号の要件とは合致しない。而して公正取引法第24条の規定の趣旨は事業が「取引の秩序に影響するに足る欺瞞又は明らかに公正を失う行為」を有することを禁止することにある。迅馳公司はインテル社の商標登録以前に既に会社登記をしていた故、「迅馳科技」を商標として使用していることがなく、「上訴人の著名商標を高度に剽窃する」ということが言えない。

(注)1. 商標法第61条第1
商標権者はその商標権を侵害した者に対して損害賠償を請求することができ、かつ、その侵害の排除を請求することができる。侵害の虞があるときは、これを防止することを請求することができる。

2. 商標法第63条第1項第3
押収された商標権侵害にかかる商品の小売り単価の500倍から1500倍までの金額。但し、押収された商品が1500個を超えたときは、その総額をもって賠償金額を定める。

3. 民法第184条第1項後段
故意又は過失によって不法に他人の権利を侵害した者は、損害賠償の責任を負う。故意に善良風俗に反する方法で他人に損害を与えた者もまた同じである。

4. 民法第185
数人が共同で不法に他人の権利を侵害したときは、連帯して損害賠償の責任を負う。数人中いずれが加害者であるかを知ることができないときもまた同じである。

5. 公正取引法第20条第1項第1
関係する事業又は消費者が普遍的に認知している他人の氏名、商号又は会社名称、徵商標、商品容器、包装、外観又はそのほか他人の商品を明示する表をもって同一徵又は類似の方法で使用するため、他人の商品と混同させる若しくは当該表を使用した商品を販売、運送、輸出又は輸入するとき。

6. 公正取引法第24
本法に別段の規定があるときを除いて、事業がその他取引の秩序に影響するに足りる欺瞞又は明らかに公正に欠ける行為をしてはならない。

7. 会社法第23条第2
会社責任者が会社の業務執行について法令に違反して他人に損害を与えたときは、その者に対して会社と連帯して賠償の責を負わなければならない。

権利侵害損害賠償が権利者の失った利益を補填するものである場合は所得税を源泉徴収しなければならない「損害賠償は、法律に別段の規定があるか、又は契約に別段の定めがある場合を除いて、債権者の受けた損害及び失った利益を補償することを限度とする。」「通常の事情又は既定の計画、設備その他の特別の事情によって予期することができた利益は、失った利益と見なす。」とは台湾民法第216条第1項、第2項に規定されている。

台湾財政部は上記条文を引用して次のように解釈している。いわゆる「受けた損害」とは即ち積極的損害であり、いわゆる「失った利益」とは消極的損害である。積極的損害又は消極的損害を問わず、損害賠償で実質的に「代替的予期する利益」の性質を有するものは新しい財産を取得した利益に等しく、所得税を徴収すべきである。

従って、台湾の現地法人が法に違反して外国企業の所有する特許権又は商標権を侵害したことによって外国企業の「失った利益」を補填するために支払った損害賠償は台湾所得税法第8条第11号にいう中華民国内において取得した源泉所得に属するので、台湾の現地法人は損害賠償金を支払うときに所得税を源泉徴収しなければならない。

例えば甲は台湾A社の代表者で、A社が2009年度に外国企業B社に支払う特許訴訟の和解金は和解協議書の記載によると、外国企業B社の失った利益を補償するもので、A社がB社に損害賠償金を支払うときに、若し所得税法第88条の規定により源泉徴収をしなかった場合、所得税法第114条に規定する源泉徴収義務の違反として国税局から補税を通知され、源泉徴収の義務違反の過料を処される。

注意すべきことは、若し損害賠償は「受けた損害」を補償するものである場合、その性質は上記例の状況とは異なり、このとき所得税の納付を免除される。即ち訴訟当事者双方が和解するときに、侵害行為の損害賠償金について一体「受けた損害」を補償するものか、又は「失った利益」を補償するものかをまずはっきりしておかなければならない。若し「受けた損害」の補償に属するものである場合は損害賠償の性質に属するので所得税の納付を免除される。ただし「受けた損害」を補償するものに属さない部分については所得税法第14条に言うその他所得に属するため、法によって所得税を徴収しなければならない。源泉徴収義務者は和解金などを支払うときに、源泉徴収に関する規定をとくに留意しなければならない。

「商標識別性審査基準」200911日から発効(その二)
暗示的商標は先天的識別性を有する標識であるのに対し、記述的標識は先天的識別性を有さない標識に属するので、後天的識別性を取得したことを証明できなければ、登録することができない。両者の区別は法律上の重要な意義がある。但し「直接的説明」と「暗示的記述」との区別は容易でなく、判断するキーポイントは後天的識別性の取得を証明する必要がなく、すぐ直接に登録を許可する場合、同業競争者にとって公平であるか否かである。
個別の案件で判断するとき、下記諸要素を参酌することができる。

1) 消費者が想像力を運用する程度
記述的標識は直接かつ明白に商品または役務の品質、効用、特性、内容等要素を伝達し、消費者はほとんど何ら想像、思考をする必要がなくて即ぐそれが商品または役務に関する説明であることを理解できる。そして暗示的商標では消費者が比較的多い想像、思考があって始めてそれが商品又は役務との関連を理解できる。

2) 辞典の定義
辞典における字または詞の定義は一般の人々が受け入れられる。従って、辞典における定義は一般の人々の目では当該標識の説明性の程度を判断することができる。

3) 新聞、雑誌またはインターネットの使用
広く流通されている新聞または雑誌における使用情況を参考すれば、消費者が特定の語彙または物に対する認知を理解することができる。インターネットは本日すでに普遍的に使用されている情報伝達のツールになり、インターネットで提供している情報量は既に伝統的媒体のそれを凌駕している。故に審査するとき、インターネットにおける特定な語彙または物の使用方式を参考することができる。しかし、インターネットは公衆が自由に使用する環境にあるから、インターネット資料は正確性及び客観性の問題の存在する可能性がある故、慎重に判断して使用しなければならない。

4) 競争者が使用必要の可能性の程度
同業競争者が同じ語彙又は物を指定商品又は役務の品質、効用またはその他特性で説明する可能性の程度もまた記述的及び暗示的商標を区別する重要な考慮要素の一つである。一般的に言えば、商品又は役務が直接、明白に説明する用語であればあるほど同業競争者が使用する必要の可能性が大きい場合、即ち記述的標識に属する。記述が間接、明白でない場合、同業競争者が使用する必要の可能性が比較的小さい場合、即ち暗示的商標に属する。

2.2.2 通用標章又は名称
通用標章とは業者が特定の商品又は役務について共同使用する標識である。通用名称とは業者が通常商品または役務の表示に用いられる名称である。通用名称はその略称、短縮形[語]及び俗称を包含する。関係消費者にとって言えば、通用標章又は名称はただ一般消費者が商品又は役務を表示又は指示するものに使用する自身であり、ソースを識別する機能に欠く。例えば「赤、青、白三色の回転ネオンライト」は理容院の通用標章であり、「開心果」はピスタチオナッツの俗称で、「Arabica/阿拉比卡」はコーヒーの木の品種名で、消費者がこれをもってソースを識別することができないばかりでなく、一人によって排他的専属権を取得して公平競争に影響することを避けるべきであり、又は訴訟で他人による当該用語の使用を干渉邪魔することを避けるべきである。故に特定の人によって登録専用させてはならない。

拒絶例:
・ 「楼蘭磚」は一種の中国古代のタイルを模倣するタイルで、タイル商品の通用名称である。
・ 「雪花石」は一種の石材であり、人造石、天然石材商品を指定する通用名称である。
・ 「TAPAS」は一種のスペインの伝統的居酒屋又は食前の小皿に盛った簡単な料理又は酒の肴であり、レストラン、ビアホール、バーの役務自身または役務内容を指定する通用名称である。

2.2.3 その他先天的識別性を有さない標識
この基準に挙げられている単一のアルファベット(4.2.1)、モデルナンバー(4.2.4)、単純な数字(4.3)簡単な線(ライン)または基本的な幾何図形(4.4.1);装飾図案(4.4.2)、姓氏(4.6.1)、肩書と姓氏の結合(4.8.3)、会社名(4.9.1)、ドメイン名(4.9.4)、習見の宗教上の神々、用語と標識(4.10)、スローガン(4.11.1)、習見の祝賀用語、吉祥語、流行語と成語(4.11.2)など、若しソースを指示する機能に欠いたときもまた識別性を有さない標識に属し、登録を許さない。

拒絶例:
・ を札入れ、カバン、財布等商品に使用される場合、消費者が容易に商品の飾り模様と認めやすいから、識別性を有さない。
・ 「13」をドライアイス、汚れ取れ機、ドライアイス汚れ取れ機のノズル商品に使用される場合、単純な数字であるから、識別性を有さない。
・ 「分享簡単 幸福延伸」を冷熱飲料店、飲食店に使用される場合は一般の広告用語であるから識別性を有さない。

2.3 後天的識別性を取得できる標識
先天的識別性を有さない標識は必ずしも商標登録を取得できないとは限らない。若し出願人はその標識が市場で使用した後、関係消費者が既にそれを一定のソースを指示及び区別する標識と見なしたことを証明できるとき、その標識が商標の機能を有するので登録を許可することができる。この識別性は使用によって取得したもので、標識自体に固有するものでないため、後天的識別性と称し、また「第二の意義」とも称するのである。「第二」とは副次的なまたは従属的意味ではなく、ただその意義の出現の時間は元来の固有の意義の後で、元来識別性を有さない標識が後天的識別性を取得した後、消費者にとって言えば、その標識の主要な意義が既にソースの指示に変更して消費者がその標識に対する主な認知になった。商標法第23条第4項:「第1項第2号に規定する状況があり、または第5条第2項の規定と合致しない状況があるとき、若し出願人の使用により取引上既に出願人の商品又は役務であることを識別できる標識となっているときは、この規定を適用しない」との規定は、即ち標識が「後天的識別性」を取得して登録を許可できる規定である。

許可例:
・ 「787」は単純な数字で元来識別性を有さない。しかし、出願人が長期に亘って商標として飛行機及びその部品、航空器及びその部品、ヘリコプター及びその部品等商品に使用してきてすでに相当数の関係消費者にそれが商品のソースを識別する標識として十分認識させた場合、後天的識別性を取得した。
・ 「4810」はヨーロッパの最高峰Mont Blancの高さであり、元来識別性を有さないが、出願人が長期に亘ってそれを商標として万年筆、ボールペン、鉛筆、サインペン、ボールポイントペン等商品に使用し、かつ大量に広告媒体に使用して後天的識別性を取得した。
・ 「V50」は自動車、トラック及び多目的車等商品に使用されている。消費者に与えた印象は指定商品のモデルナンバーであり、元来識別性を有さないが、出願人の使用により自動車などの消費者はすでにそれがソースを識別できる標識であることを認識して後天的識別性を取得した。

3. 識別性の判断要素
商標が識別性を有するか否かは個別案件の事実及び証拠を考量すべきで、商標と指定商品又は役務との関係、同業競争者が使用する状況及び出願人が使用する方式及び実際の取引状況等客観的参酌要素をまとめて判断しなければならない。

1)商標と指定商品又は役務との関係
商標が識別性を有するか否かを判断するには、まずその標識と指定商品又は役務との関係を理解しなければならない。一つの標識がある程度商品又は役務に関する情報を伝達するとき、消費者はその標識に対する理解はただ商品又は役務の説明だけであり、それをソースを識別する標識としない。これに反し、標識が商品又は役務に関するいかなる情報を伝達していないとき、消費者は非常に容易にそれがソースを識別する機能を有することを理解し、それを商標とする。
例えば「林檎」をコンピューター商品に使用されることは指定商品と全く関係がなく、特定商品のソースを指示及び区別する識別性を有する。但し、「林檎」二文字を林檎商品に使用されるとき、「林檎」即ち指定商品の名称であるため、消費者はそれが特定のソースを指示する標識であるとは認めない故、識別性を有さない。

2)競争同業者が使用する状況
記述性語彙または物は常に商品又は役務の品質、効用又はその他特性の表示に用いられ、競争同業者もそれを使用して自己の商品又は役務を説明する必要があり、尚且つ記述の程度が高ければ高いほど、競争同業者が使用する必要の可能性が高いので、競争同業者が市場における使用の頻度は特定語彙又は物の記述性程度の判断に用いられることができる。若し市場において既に一定数量の競争同業者が特定語彙又は物を商品又は役務の説明に使用されているとき、当該産業の通用する程度に達する必要なく、直ぐその語彙又は物が商品又は役務を説明する性質を有することを推断することができる。社会公益の角度から見れば、純粋に商品又は役務情報を提供する説明的語彙又は物は特定の人に保留して専用させてはならない。かつ、業界の公正競争のために、一人によって独占使用させてその他の競争同業者をして自由にその語彙又は物を使用できないことは宜しくない。

ある語彙又は物がたとえまだ競争同業者の使用がなくても、当該語彙又は物は商品又は役務の品質、効用又はその他特性の説明でないことを意味することではなく、関係消費者が理解する一般的、直接的意義は商品又は役務に関する説明であれば、即ち識別性を有さない。

3)出願人が使用する方式及び実際取引状況
出願人が使用する方式及び実際の取引情況によれば、もし単に出願する商標を商品又は役務の関係説明とするなど、例えばしゃぶしゃぶ料理店はそのメニューに「一人一鍋」と標示してその実際の使用では単にその店内の消費の形態を説明するだけ、即ち一人につきワンセットの鍋を使用する安全性、衛生さを強調するだけであるなら、関係消費者は自ずとそれは特定ソースを表示する標識であるとは認めない。

商標が識別性あるかないかはわが国の関係消費者の認識を基準とすべきである。いわゆる「関係」する消費者とは特定商品又は役務を購買又は使用した経験がある実際の消費者を指すと将来当該特定商品又は役務を購買又は使用する可能性がある潜在的消費者を指して言う。例えば日常用品は一般大衆が日常の生活に使用される商品であって、一般大衆を関係消費者とすべきであり、これに対し、専門者の間に流通される商品又は役務は専門者の観点によって判断しなければならない。商標が識別性あるかないかを判断するときもまた関係消費者の注意程度を考量しなければならない。一般に言うと、消費者がより高く、より専門的又は耐久財商品例えば贅沢品、ハイテック産品、医薬産品等に対して、その注意程度は日常生活用品に対する注意程度より高い。

「中国国家工商行政管理総局著名商標認定作業細則」公布施行
中国国家工商行政管理総局は2009424日に「国家工商行政管理総局著名商標認定作業細則」(以下「細則」と称する)を公布し、即日より施行する。「細則」は1.総則。2.著名商標認定申請の審査及び査定。3.再審査及び許可査定。4.監督及び法律責任。5.付則等5章から成り、計33条。

「細則」には著名商標の認定に考慮すべき要素と証拠資料、商標管理手続及び商標異議申立手続の審査、商標異議申立の再審査、商標争議手続の審査及び裁定等を挙げられている。その中、公衆に影響の比較的大きい規定は著名商標の認定に当り下記の要素を考慮しなければならないことである。ただし当該商標は下記全部の要素を満たすことを前提としない。即ち1.関係のある公衆がその商標に対する周知の程度。2.その商標が継続的に使用する期間。3.その商標の宣伝活動を継続する期間、程度及び地理範囲。4.その商標が著名商標として保護を受ける記録。5.その商標が著名であるその他要素。との規定である。

「細則」の規定に対応するため、最高人民法院は2009426日に「著名商標の保護の民事紛争案件の審理における法律適用に関する若干問題の解釈」(以下、「解釈」と称する)を公布し、200951日より施行する。
「解釈」に定義されている「著名商標」とは中国国境内に関係ある公衆に周知されている商標となっている。

「細則」に挙げられている著名商標の認定に考慮すべき要素について「解釈」第10条に留意しなければならない規定がある。即ち「原告が被告に類似でない商品に原告の著名な登録商標と同一又は類似する商標又は企業名称の使用を禁止する請求をするときに、人民法院は案件の具体的状況に基き、下記要素をまとめて考慮してから裁判をしなければならない。即ち1.著名商標の顕著性の程度。2.その著名商標が告訴された商標又は企業名称を使用する商品の関係のある公衆における周知程度。3.著名商標を使用する商品と告訴された商標又は企業名称が使用する商品との間における関連程度。4.その他関連する要素。

なお、最高人民法院知的財産権審判法廷の裁判官の分析によると、「解釈」の中、「著名商標」の定義には「商標の市場における声誉」の要素を含まず、「商標の市場における声誉」を著名商標を認定する事実の一つとしている。「解釈」第5条第1号第5項に「当事者がその商標の著名を主張する場合、案件の具体的状況に基いて下記証拠を提供して商標権が侵害されたことと告訴されたとき又は不正競争行為が発生するときにその商標が既に著名であることを証明しなければならない。即ち1.その商標を使用する商品の市場におけるシェア、販売地区、税金貢献度等。2.その商標を継続的に使用する期間。3.その商標の宣伝又は販売促進活動の方式、継続期間、程度、資金投入及び地域範囲。4.その商標が著名商標として保護を受ける記録。5.その商標が市場において享有する声誉。6.その商標が既に著名であることを証明するその他事実。」と規定している。

最高人民法院の説明によると、当事者が単に著名商標の司法による認定を獲得することを防止するため、司法の実務上、商標の著名が商標権侵害と告訴されたことを構成する法律要件の事実又は不正競争行為を構成する法律要件の事実であるとき、始めて著名商標を認定する必要がある。従って、著名商標の司法認定は個別案件の中、著名商標を保護する必要上行う法律要件事実の認定である。著名商標であるか否かは事実認定の範疇であり、法律問題ではないとのことである。

長い間中国大陸が著名商標に対する認定がずっと乱れているため、今回「解釈」第13条に「著名商標の保護に関る民事紛争案件中、人民法院が著名商標に対する認定は単に案件の事実及び判決の理由とし、判決の主文には記載しない。調解方式で審理終結する案件は調解書の中に商標の著名事実を認定しない」と規定している。これは当事者が司法手続による著名商標の認定を利用してその他不当な利益を追求することを避けるためである。

 

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