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台湾特許法改正草案の要点

台湾特許法は1944年に制定して以来、8回の改正を行い、現行法は200326日に公布し、200471日より施行した。グローバルトレンドに応じ、国際的規範と調和し、産業の革新と研究開発を奨励し、バイオテクノロジー、グリーンエネルギー、精密農業等重要産業の発展を推進し、特許審査の質及び国の全体的競争力を高めるため、台湾知的財産局は2006年より陸続として15回の公聴会を開き、特許改正のトピックスを重ねて討論し、各界の意見を調整してから「特許法改正草案」を作成して200983日に経済部へまわして審査を仰ぐ。改正の要点は下記の通り。

1. 発明、実用新案、デザインは共に創作の類型であると定義する。
創作は発明、実用新案及びデザインの上位概念である。発明を、創作と並列して創作は単に実用新案及びデザインのみを指しているような誤解を避けるため、表現を変えて発明、実用新案及びデザインを創作の類型として並列する。(改正条文第1条)

2. 意匠特許の名称を「デザイン特許」に変更する。
産業界及び国際的にデザインに対する保護の通常概念と一致するとデザイン保護の客体を明確に表現するため、米国、EU、豪州等の立法例を参考にして現行の用語「意匠特許」を「デザイン特許」に改正する。(改正条文第2条及び第123条)

3. 発明、実用新案及びデザインの「実施」を定義する。
「実施」には「製造、販売の申し出、販売、使用又はこれらの目的のために輸入する」行為を含むが、「使用」の上位概念に属している。しかし、現行特許法には「使用」と「実施」の用語が一致せず、解釈上の混乱を生じている故、「実施」の定義を増設すると共に関係条文中「実施」と「使用」の用語を改正した。(改正条文第22条、第58条、第89条、第124条及び第138条)

4. 猶予期間(Grace Period)の適用範囲を進歩性に拡大するとともにその事由を増設。
猶予期間の適用事由の行為主体は「出願人」であると規定する。実在の出願人及びその前権利者を包括する。己の意によって刊行物に発表されたものは猶予期間を主張する事由とすることができると新設すると共に欧州特許条約(EPC)及び日本特許法の規定を参考にして猶予期間の適用範囲を進歩性まで拡大し、即ち新規性及び進歩性(デザイン特許は創作性)を包括するように改正する。(改正条文第22条及び第124条)

5. 特許請求の範囲(クレーム)及び要約書を明細書の中から独立する。
現行特許法にいう明細書には「特許請求の範囲」を含むが、日本特許法、欧州特許条約(EPC)、実質的特許法条約(Substantive Patent Law Treaty, SPLT)草案、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty, PCT)及び中国大陸の特許法の規定を参考にして、特許請求の範囲は共に明細書の中から独立している故、「特許請求の範囲」及び「要約書」を明細書の中から独立するように改正した。(改正条文第23条及び第25条)

6. 動植物特許の出願を開放する。
動植物に関連する発明は特許の保護を受けられるか否かについては各国の規定はまちまちで、国内のバイオ産業の発展を促進するため、米国、日本、韓国、豪州の立法例を参考にして、動植物を発明特許の客体として全面的に開放すると決定し、よって現行条文第24条第1号を削除する。

7. 明細書、特許請求範囲及び図面は外国文本を提出する場合の関連規定を増設する。
外国文本を提出した場合、その外国文本を修正することができないと共に誤訳訂正制度の規定を導入する。さらに、外国文本の種類の限定及びその記載すべき事項に関する弁法の制定を授権する。(改正条文第25条、第43条、第44条、第69条、第108条、第112条、第127条、第135条、第141条及び第147条)

8. 優先権を主張する声明事項及び証明書類の提出期限を改正する。
パリ条約の規定を参考にして、優先権を主張する声明事項に「外国における出願番号」を増設する。而して出願人が提出する優先権証明書類の期限は、日本特許法、欧州特許条約施行規則の規定を参考にして、「出願日から4ヶ月以内」を「最初の優先権日から16ヶ月以内」に改正すると共に外国政府の受理証明を添付すべくと改正。(改正条文第29条)

9. 権利回復規範を導入する。
創造革新を奨励し、研究開発の成果を保護するため、出願人又は特許権者が若し故意によらず出願時に優先権を主張しなかった場合は優先権を主張しないとみなし、又期限内に特許年金を納付せずに権利を失った者は、その権利の回復申請を許す制度を増設。また、特許権を回復する効力は元来の特許権消滅後から特許権回復の許可公告まで、善意で実施し、またはすでに必須の準備を完成した者には及ばないと増設。(改正条文第29条、第52条、第59条及び第72条)

10. 発明、実用新案で「一特許二出願」の処理方式を増設。
同一の創作に特許権を重複に付与してはならない。若し同一の人が同一の創作について同日に発明と実用新案を出願し、発明が許可決定する前にすでに実用新案特許権を取得した場合、出願人は期限内に出願を一つ選択しなければならず、さもなければ発明特許を付与しない。(改正条文第32条)

11. 分割出願時点の制限を緩和する。
発明特許許可後の分割制度を採用し、出願人が初審許可査定後30日以内に分割出願を申請できる規定を増設。(改正条文第34条)

12. 審査中の訂正制度を完備する。
「補充、修正」の用語を統一に「修正」(amendment)に改正すると共に出願人が自動的に修正を提出するときの時間的制限を削除。審査日程の遅延を避けるため、日本特許法を参考にして「最終通知」制度を増設。出願人は特許専門機関が最終通知した後、特許請求の範囲の修正を申請するときに、単に特定の事項についてなすことを許す。違反したときに、特許専門機関は直ちに査定することができる。(修正条文第43条)

13. 医薬品又は農薬の特許権期間の延長に関する規定を改正。
医薬品又は農薬の特許権期間の延長規定を緩和し、許可証を取得するために発明を実施できない期間が公告されてから2年間以上の期間を要する制限規定を削除するほか、特許権期限満了前なお延長を許可されない時は、その特許権の効力は元来特許権期間満了の翌日からすでに延長したと見なす規定を増設。発明特許権期間の延長を許可される範囲は、許可証に記載された有効成分及び用途に限定された範囲に及ぶ。(改正条文第53条、第54条及び第56条)

14. 国際消尽の原則を明確に採用する。
TRIPS
の規定では会員が自ら特許権の消尽の原則を採用するか否かを決定することができるとなっている。現行特許法第59条第1項第6号の規定は国際消尽の原則を採っているが、第2項では販売地域は裁判所によって事実に基いて認定すると規定している。実際、権利消尽は国際消尽又は国内消尽を採るかは立法政策に属するため、裁判所によって事実に基いて認定することができない。故に、国際消尽の原則を明確に採用する。(改正条文第59条)

15. 特許権の効力が及ばない事項を増設。
商業目的によらない未公開行為を増設。特許権者が特許法第72条第2項の規定により特許権の効力を回復してから公告されるまで、善意で実施し、又はすでに必須の準備を完成したとき、薬事法に規定される薬物試験登記許可を取得する又は国外薬物販売許可を目的として行う研究、試験及びその必要行為は共に特許権の効力が及ばない事項。(改正条文第60条)

16. 生物材料権利消尽及び植物繁殖材料特許権効力に関する規定を新設。
生物材料発明特許権の権利消尽原則を新設。EU等諸国の立法例を参考にして権利消尽を主張できる生物材料の範囲を規定する。並びに植物繁殖材料の特許権効力の制限を増設。(改正条文第62条、第63条)

17. 排他的実施許諾の関連規定を明確に規定する。
実施許諾は排他的実施許諾又は非排他的実施許諾にすることができると規定し、排他的実施許諾の定義並びに排他的実施許諾及び非排他的実施許諾の再実施許諾について規定する。(改正条文第64条及び第65条)

18. 無効審判請求関連規定を改正。
職権による審査制度を廃止。無効審判を請求できる事由を改正。無効事由は許可査定時の無効審判規定によって行うと規定。しかし本質的要件に属するなら、許可査定時の無効審判事由が規定されていなくても、やはり行うことができる。また、手続の規定部分について、部分的請求項について無効審判請求できる。無効審判の審査について職権による探知、無効審判請求と訂正審判請求の合併審査、合併査定及び無効審判決定前取り下げできる規定を増設。職権による訂正通知の規定を削除。現行条文第71条第1項第3号を削除。(改正条文第73条、第75条、第77条及び第80条から第84条まで)

19. 特許特別許可実施の規定を改正。
「特別許可実施」の用語を「強制許諾」に改正し、その関連規定をも改正する。申請事由、要件を含み、なお強制許諾処分を作成するときに、同時に補償金を査定しなければならないと規定する。(改正条文第89条から第91条まで)

20. 公共衛生問題の規定を増設。
世界貿易機関(WTO)が開発途上の国及び低開発国家に協力して需要の特許医薬品を取得させてその国内の公共衛生の危機を解決するため、需要の医薬品の生産を強制許諾すると共に本メカニズムを適用して強制許諾の申請を適用する範囲を規定する。(改正条文第92条及び第93条)

21. 特許侵害の関連規定を改正。
特許侵害の主観的要件を規定し、「侵害の排除」と「侵害防止の請求」という二大類型を定める。侵害の主張は行為者が主観的に故意又は過失あることを必要としない。損害賠償の請求については行為者が主観的に行為又は過失があることを必要とする。並びに損害賠償額の計算及び特許表示の方式を改正。(改正条文第98条から第100条まで)

22. 実用新案特許制度重点的に改正。
実用新案の訂正は明らかに出願時の明細書、特許請求の範囲又は図面を超えるときは特許を付与しない事由とする。実用新案特許の技術報告内容に基く実用新案特許権の行使規定を改正。実用新案特許の訂正は形式審査制を採用。但し、無効審判請求事件と合併審査する時は、実質審査並びに合併査定する。(改正条文第114条、第119条、第120条)

23. デザイン特許制度を全体的に改正。
部分意匠、Computer-Generated Icons (Icons、アイコン)、Graphical User Interface(GUI、グラフィカルユーザインターフェース)及び組物の出願を開放する。派生意匠制度(Derivative Design)を新設すると共に連合意匠制度を廃止する。現行条文第109条第2項、第110条第5項及び第6項を削除。(改正条文第123条、第129条及び第131条)

24. 経過措置の条文を増設
今回の改正要点は動植物特許の開放、猶予期間主張できる事由を増設、発明特許初審許可査定後分割出願できる、実用新案特許の単純な訂正申請は形式審査を採用、無効審判請求、訂正及びデザイン特許の関連規定を増設改正する等、いずれも特許制度の重大な変革であるので、新旧法の経過措置を詳しく規定して適用に資する。(改正条文第151条から第160条まで)

25. 本法の施行日は行政院がこれを定めると規定する。
今回の法改正は特許法全般的改正で、実務作業手続もまた併せて調整改正しなければならず、なお、多くの特許制度の重大な変革事項を増設する故、十分な準備と対応する時間が必要。さらに各界に十分な理解及び法改正後の制度の運営に適応させる必要があるため、改正特許法の施行日は行政院がこれを定めると規定する。(改正条文第162条)

 

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