事務所情報 | 出版物品 | 2009年9月
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間接侵害を台湾特許法改正草案から外す

台湾知的財産局は元来米国、EU、日本及び韓国の立法例に倣い、「間接侵害」の制度を特許法改正案に導入すると考えているが、2009720日にドイツ、米国、日本など諸国内外の専門家、学者を招き、台北で「特許間接侵害国際シンポジューム」を開いた。知財局では特許権の保護拡大の狙いにより特許間接侵害制度を導入しようとしていたが、国内の関連業界では急に間接侵害を導入すると、濫りに訴訟を起こし、産業にリスクを高めさせる恐れがあるとの危惧の声が高い故、結局、知財局は慎重を期すため、間接侵害を特許法改正草案から外された。

特許侵害について各国の立法では共に特許の全要件を侵害して始めて成立すると規定されているが、しかし実務上常にある核心的要件(essential element)をのみ侵害しているが、侵害に成らず、さらに他の要件と結合して始めて侵害になることを発生している。この類の行為について民法には共同侵害に関する規定があるが、構成要件は比較的に寛大である嫌で、特許保護をさらに完全させるため、知財局は間接侵害制度を導入しようと考えていた。

所謂間接侵害には三つの要件と合致しなければならない。まず第一に、権利者は間接侵害者が自分の産品が将来侵害を招くことを「明らかに知っている」ことを立証しなければならない。第二に、製造メーカーの侵害物の製造・使用により利益を獲得した疑いがあって悪性が重大であること。第三に、間接侵害によって侵害されたのは核心的技術(essential element)である。核心的技術であるか否かはケースバイケースで認定しなければならない。

例を挙げて説明すると、例えばメーカー甲が取得している特許要件にA+Bがある。他のメーカー乙が、Aのみを製造しているが、その製品説明書にはBと組み合せて使用することができると使用者に提示している場合は、甲の特許を侵害することになる。その中、Aを提供する行為が「侵害の補助」で、製品説明書にBと組み合せて使用できることを使用者に提示することは「侵害の誘引」である。両者は共に間接侵害である。産業の実態から言えば、親工場がAを生産し、協力する衛星工場が製品のパーツの生産を提供する。若し親工場が侵害を避けるためにAのみを提供し、取引商に自分の協力する衛星工場からBを取得するように要請して、そして衛星工場が取引商に製品のパーツBを提供してAと組み合せて使用した場合侵害になることを明らかに知りながら敢えてパーツBを提供した場合、ABのいずれの行為も間接侵害になる。

国内の業界が間接侵害制度の導入に反対する主な理由は台湾メーカーの多くは大量なIT産品のOEM工場であり、大量な部品、組立品を生産している。若しこれらの部品、組立品を第三者に売却してそのほかの要件と組み合せて使用させて特許権侵害になった場合は業者のリスクを大々的に高める。若し部品、組立品の生産のオーダーを引き受ける前に、まず産品の関連技術を理解して他者の特許権を侵害するか否かを判断すべきことを業者に要請する場合、業者にとっては余計な負担になる。そして間接侵害制度を導入した場合、将来OEM業者は常に侵害の容疑があるとの警告状を受け取る可能性があるので紛争が絶え間なく続く心配がある。

一方、日本、韓国ではなぜ間接侵害制度を特許法で明文に規定させているかというと、この両国の法律では共同侵害をもって侵害の発生を阻止することができないから、明文で特許権者に侵害排除を請求する権利を与えたのである。台湾の民法にはすでに共同侵害の規定があり、知財裁判所もすでに200871日より公式に運営している以上、知財裁判所にさらに多くの時間を持たせ、実際の判決例を積み重ねさせて台湾知財案件の実務の充実に寄与させるべきであろう。
以上に述べた理由により、知的財産局は既に原稿作成と当局の内外検討会、公聴会に長時間にかけた特許法改正草案が間接侵害の条文を一つだけで論争を引き起し、草案の検討を遅らせることを免れるため、間接侵害の規定を見送りすることになった。

 

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