台湾知的財産裁判所案件審理情況の分析
台湾知的財産裁判所は2008年7月1日に設立して以来、審判の効率が極めて高い。2009年9月末まで、案件の受理及び審理完結の情況は下記の通り。
訴訟の種類
|
新受件数
|
既済件数
|
未結件数
|
既済比率(%)
|
民事第一審
|
特許
|
193
|
97
|
96
|
50.26
|
商標
|
45
|
27
|
18
|
60.00
|
著作権
|
58
|
45
|
13
|
77.59
|
民事第二審
|
特許
|
103
|
52
|
51
|
50.49
|
商標
|
44
|
27
|
17
|
61.36
|
著作権
|
54
|
32
|
22
|
59.26
|
刑事訴訟
|
特別刑法
|
345
|
263
|
82
|
76.23
|
商標
|
88
|
70
|
18
|
79.55
|
著作権
|
205
|
155
|
50
|
75.61
|
行政訴訟
|
特許
|
203
|
143
|
60
|
70.44
|
商標
|
346
|
254
|
92
|
73.41
|
著作権
|
--
|
--
|
-
|
-
|
(情報源:知的財産裁判所のウェブサイトより)
次に、当事者の国籍から見た場合、知的財産裁判所が受理された訴訟案件の総計によれば、外国人に関する知的財産案件は受理件数の20%に満たず、2009年6月末まで、渉外案件の割合は下記の通り。
訴訟の種類
|
新受件数
|
渉外件数
|
渉外比率(%)
|
民事第一審
|
特許
|
147
|
20
|
13.61
|
商標
|
30
|
6
|
20.00
|
著作権
|
47
|
3
|
6.38
|
民事第二審
|
特許
|
75
|
12
|
16.00
|
商標
|
35
|
11
|
31.43
|
著作権
|
44
|
4
|
9.09
|
行政訴訟
|
特許
|
170
|
21
|
12.35
|
商標
|
289
|
97
|
32.53
|
著作権
|
0
|
0
|
--
|
(情報源:知的財産裁判所のウェブサイトより)
司法院の統計によれば、知的財産裁判所が設立してから本日までに受理された訴訟案件の中、すでに7割以上の案件が終結している。その案件毎の終結日数は平均96日間だけ。アメリカの連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の平均9ヶ月に比べて遥かに速い。このような高い既済率は益々多くなる外国企業の台湾における知財訴訟の意欲を高め、訴訟時間を大幅に短縮すると共に巨大の訴訟費用を節約できる。同時に多数の国に知財訴訟を起こしている多国籍企業にとって言えば、台湾知財裁判所の判決はその他の国の参考になるばかりでなく、もっとすばやく販売戦略を調整するメリットがあることは言うまでもない。
民事損害賠償の訴訟結果から見た場合、原告の勝訴と判決された比率が僅かに2割強ではあるが、一旦裁判所が侵害の事実を認め、権利者に損害を与えたと判定したときに、被告が支払うべき賠償金額は事案の具体的情況により、数億元(NT$)の高きに達する場合もあり、平均して一案件毎に1500万元(NT$)の賠償金額があるために、知的財産権者への権利保護はポジティブで積極的意義がある。
これに対し、司法院はこのように語っている。台湾は知的財産権の特性に従い、特許法、商標法及び著作権法等特別法を制定した目的は特別法によって知的財産権を保障することにある。現行の商標法及び著作権法には商標模倣及び海賊版について刑罰の規定を有するが、しかしそれによって発生した損害に対する賠償は被害者の実際蒙った損害を基準とするため、損害の金額を見積ることはかなり難しい。従って、裁判所が判決した賠償金額は一般に高くない。このため、商標法は特にその損害の計算は押収された商標権侵害にかかる商品の単価の500倍乃至1500倍の金額とすることができると定めている。而して著作権法も特に被害者が実際の損害を証明し難い時に新台湾ドル(NT$)1万元以上100万元以下の間に賠償金額を定めることができ、若し事案が重大な場合には500万元までに高めることもできると定められている。近頃知的財産裁判所の判決はこれら特別法の規定をうまく運用していて、知財犯罪を有効的に喰い止める狙いである。
さらに、知的財産裁判所の民事判決の維持率を見た場合、2009年6月末まで、民事第二審の審理結果は下の表に示している。
訴訟の種類
|
理由なしで上訴棄却
|
原判決取消・破棄
|
和解
|
取り下げ
及びその他
|
民事第二審
|
案件数
|
40
|
13
|
20
|
12
|
比率(%)
|
47.06
|
15.29
|
23.53
|
14.12
|
(情報源:知的財産裁判所)
上記の表から知的財産裁判所民事第二審判決で第一審の原判決を破棄する判決の比率は僅かに15%、知的財産裁判所の民事第一審判決を維持する率は極めて高いことを示している。当事者にとって言えば、第二審への上訴で一審の原判決を覆すチャンスが非常に低いために、2割以上の当事者が和解を選択したわけである。このような結果の原因を分析すると、知的財産裁判官の数が少ないうえ、技術審査官の参考意見の提供で審理を始める前に裁判官はすでに事実についてある程度の心証があった。裁判官が同じ養成システム及び同じ仕事の環境の下に、縦え共同で事実内容を議論しなくても、事案について同じ見解を持つのも免れない。こうすれば当事者の審級利益に損害を及ぼすかは疑われる。
手続き面から言えば、知的財産裁判所の開廷期日は一般の裁判所より短く、短い時間の間に密集して資料を準備し法廷で攻防を繰り返すことは技術背景の複雑な特許案件について特に当事者が外国企業である案件では、訴訟代理人に対しては重い負担である。従って、知的財産裁判所では極めて高い案件審理の効率を有するが、しかし、その代り当事者にとって知的財産裁判所への訴訟を提起するには、事前に充分な証拠及び心理的準備がなければならないのである。
思うに知的財産権に対する保護成果はまさに産業発展の展望に直接的影響を及ぼす。知的財産権の市場価格が時に従って異なるため、より早く権利者の所有する知的財産権が確実に存続していることを確認し、さらに進んで権利者に即時法律の保障する利益を享受させることはまさに産業の革新と研究開発の向上並びにブランドの樹立に寄与し、引いては国全体の知識経済への発展のスピードと成果に影響する。
台湾の知的財産裁判所は同時に民事、刑事及び行政訴訟を受理できる専門的裁判所で、知的財産案件を集中的に専門の裁判官によって審理させる故、紛争を迅速的に解決し、実務経験を累積できる上、なお各裁判所が知的財産案件の審理に関する模索過程を減少することができる。 |