事務所情報 | 出版物品 | 2020年 9月
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中国 上海市浦東裁判所が不正競争で
NEW BARLUNに賠償金1千万人民元の支払いを
命じる判決を下す

 

 【出典:上海市浦東新区人民裁判所公式WeChat

中国の上海市浦東裁判所は、2020416日に「新百倫vs紐巴倫」の不正競争紛争事件の一審で、NEW BARLUN」ブランドの商標権を所有する紐巴倫(中国)有限公司(以下、「紐巴倫社」という)に対し、「New Balance」ブランドの所有者である新百倫貿易(中国)有限公司(以下、「新百倫社」という)に対する不正競争行為を停止するとともに、影響を除去するための公開声明をし、経済的損失の1千万人民元及び権利侵害行為を制止するために支出した合理的費用の80万人民元を賠償するよう命じる判決を下した。

【説明】左図は原告の新百倫社の定番デザインの運動靴で、大文字のアルファベット「N」が靴の両側の中央部の靴ひもに近いところに装飾として使用されたこのデザインは、既に当該ブランドの運動靴と密接な関連性を生じており、商品の出所を識別する主要な標識となっている。一方、右図は被告の紐巴倫社が生産する運動靴で、「斜線のあるN」文字が靴の両側に装飾として使用されている。

 争点:いずれの運動靴にも「N」文字の標識がある

本事件の両当事者の「New Balance」と「NEW BARLUN」のブランドは、運動靴の両側に僅かに違う大文字「N」を使用しているだけでなく、称呼も見た目の印象も類似し、消費者に混同誤認を生じさせるため、新百倫社は、紐巴倫社と趙城鵬の不正競争行為を理由として、3千万人民元の損害賠償を求めて裁判所に訴訟を提起した。

原告の新百倫社は訴訟を提起する際、以下のように主張した。

「新平衡体育運動公司(New BalanceNB)は米国の著名なスポーツ用品メーカーである。新平衡体育運動公司が所有する「New Balance」ブランドの運動靴は、中国での知名度及び市場のシェアが極めて高い。しかも新平衡体育運動公司は、中国で「New Balance」、「NB」、「N」などのシリーズ商標を登録している。そして、原告は新平衡体育運動公司から商標の非独占的使用権を取得しているため、中国で上述の商標及び「New Balance」ブランド特有の「N」文字のデザインを運動靴に使用する権利も、権利侵害及び不正競争の関連行為に対して独自に訴訟を提起する権利も持っている。また、被告の紐巴倫社が「斜線のあるN」文字が両側に印刷された運動靴を大量に生産し販売して、新平衡体育運動公司が所有し一定の影響力を備える上記商標及び商品のデザインを侵害し、不正競争行為を続けたことによって、原告の商品の評価が低くなり、信用が毀損されたことで、原告は多大な損害を被った。また、経営する店舗を通じて関連の商品を一般に販売した被告の趙城鵬も、民事責任を負うべきである。」

一方、被告の紐巴倫社の主張は以下のとおりである。

「紐巴倫社は、登録番号第997335号、第4236766号などの「斜線のあるN」文字の商標権を有しており、法律によって登録査定された商品区分において登録商標を使用する権利がある。しかも、上述の商標のいずれも現在合法で有効に存続しているため、法律によって保護を受けられるはずである。したがって、紐巴倫社が登録商標を運動靴に使用した行為は、不正競争行為に当たらない。」

そのほかに、被告は「原告の靴の両側にある「N」文字の標識は、2010年(201086日に初審公告)に第5942394号商標として登録されたが、紐巴倫社所有の「斜線のあるN」も既に商標登録されたため、紐巴倫社は登録査定された商品区分において登録商標を使用する権利がある。原告の所有する「N」文字のデザインが靴類商品において一定の影響力を有することを理由として、《反不正競争法》により、紐巴倫社が登録番号第997335号、第4236766号のシリーズ商標を使用した行為は不正競争行為に当たるとした原告の主張は、請求の基礎に欠けている。」と主張した。

また、被告の趙城鵬は、「自分の店舗にある商品は全て正規の入荷ルートを通じて紐巴倫社から仕入れたもので、原告に対する侵害に当たらず、原告が請求する50万人民元の賠償額も法的根拠がない。しかも店舗は現在閉店し、登記も抹消している」と主張した。

 裁判所の判決:登録商標は他人の先行権利を侵害してはならない

上海浦東裁判所は審理を経て以下のような判断を下した。

1、それぞれの商品デザインの中で最も主要で目立つ部分である、原告、被告が使用する二つの「N」標識は、いずれも大文字のアルファベット「N」という視覚的効果がある。離隔的な対比の場合、特に消費者向け製品である靴類製品に対して消費者は通常一般的な注意を払う。両標識は構成要素、視覚的効果において明確な差異もなく、その些細な差異も消費者の注意を引くのに十分なものでないので、両者は類似を構成する。

2、紐巴倫社は同業の競争相手として、原告の靴の両側にある「N」文字のデザインに一定の影響力があることを明らかに知っていながら、製造した同類製品の同じ処に類似標識を使用した。そのため、紐巴倫社の原告の信用にただ乗りし、市場の混乱を惹起する主観的な過失は明白であり、客観的に消費者に商品の出所について混同・誤認を生じさせるに足り、信義誠実の原則及び公に認められている商業道徳に違反しているため、不正競争行為に当たる。

3、紐巴倫社は不正競争行為を停止し、その影響を除去することに加え、損害賠償責任も負わなければならない。原告が受けた実際の損失、及び紐巴倫社が得た利益の金額は確定できないが、既存の証拠によって、原告が受けた損失は法定賠償額上限の500万人民元を超えることを証明できるため、裁判所は、原告の靴の両側にある「N」文字のデザインの知名度が高いこと、被告が行った不正競争行為の期間が長いこと、範囲が広いこと、それに主観的過失も明白であることなどの要素を総合的に考慮し、情状を斟酌して賠償額を1000万人民元とし並びに権利侵害行為を制止するために支払った合理的な支出80万人民元の全額を認める。

4、このほか、被告の趙城鵬については、販売過程において、他人の権利侵害行為の実施に協力した主観的過失があることを証明できる証拠がなく、しかもその店舗は既に閉店し、登記も抹消している。原告が被告の趙城鵬に相応の民事責任を負うよう求めていることについては、法的根拠も欠けており、現実的にその必要もない。従って、裁判所は、被告の趙城鵬に対する請求を全て棄却する。 

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